MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』

2020-10-06 00:59:48 | goo映画レビュー

原題:『Joao, o Maestro』
監督:マウロ・リマ
脚本:マウロ・リマ
撮影:パウロ・ヴァイナー
出演:アレクサンドロ・ネロ/ダヴィ・カンポロンゴ/アリーン・モラエス/フェルナンダ・ノーブル
2017年/ブラジル

ロックの魂を持つクラシックのピアニストについて

 ブラジルのクラシック・ピアニストのジョアン・カルロス・マルティンス(João Carlos Martins)の半生が描かれているが、意外と彼のそばにはロック・ミュージックがあるという演出が興味深い。例えば、マルティンスが20歳でニューヨークのカーネギーホールでデビューした頃は1960年で、壁にはボブ・ディランやヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのコンサートのポスターが貼ってあり、コンサートでは共演していたエマーソン・レイク・アンド・パーマーのシンセサイザー奏者のキース・エマーソンに尊敬していると話しかけられており、キャンセルになったコンサートのポスターの隣には2009年にマドンナがリリースしたアルバム『セレブレイション~マドンナ・オールタイム・ベスト』のポスターが飾られている。つまりそれは幼少期に喉の病気を患って、プロ奏者になってからサッカーをしている時に躓いて右指を3本も骨折し、しばらく実業家に転身した後に左手だけで弾き始め、さらには自らオーケストラを創設して指揮者になるなど、魂の「ロックさ」を暗示しているように思われるのである。
 ところでマルティンスが父親に与えられて読んでいた本はいわゆる「自己啓発本」で、気にいっていた作家が自殺したことを知った時には父親に文句を言っていたのだが、結果的には役立っていたように見えなくはない。


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