MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ミッドナイトスワン』

2020-10-01 00:17:45 | goo映画レビュー

原題:『ミッドナイトスワン』
監督:内田英治
脚本:内田英治
撮影:伊藤麻樹
出演:草彅剛/服部樹咲/田中俊介/吉村界人/上野鈴華/水川あさみ/田口トモロヲ/真飛聖
2020年/日本

「家族の呪縛」からの命がけの逃走について

 新宿のニューハーフショークラブで働く武田健二、通称凪沙は故郷の広島にいる母親の頼みで親戚の中学3年生の桜田一果をしばらく預かることになるのだが、もちろん両親や親戚に自身がトランスジェンダーであることは隠しており、新宿駅で凪沙と初めて出会った一果も驚きを隠せない。
 一果は両親から虐待を受けていたようで、無口で、ストレスで自分の腕をかじる自傷行為をしてしまうのだが、それは一果に限らず、家が大層裕福で学校で同じクラスで一果がバレエを学ぶことを助けてくれた桑田りんにしても対照的とはいえ両親の無理解に苦しみ、足のケガでバレエが踊れなくなった後、親族の結婚式が行われていたビルの屋上から飛び降り自殺してしまうのである。
 一果もいつ死んでもおかしくはない状況で、このような家族の呪縛から逃れさせてくれたのはバレエ教室の先生の片平実花なのであるが、やはり生徒と先生を繋いでくれる人が家族の中にいなければならず、それを引き受けたのが一果の才能を理解できる凪沙で凪沙の命がけの尽力で、一果は奨学金を得てロンドンのバレエ学校に入学できるのである。
 『真夜中のカーボーイ(Midnight Cowboy)』(ジョン・シュレシンジャ―監督 1969年)で2人の主人公たちが味わった挫折を『ベニスに死す』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督 1971年)を挟むことで辛うじて逃れたといったところだろうか。


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