原題:『Tenet』
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ
2020年/アメリカ
「記憶」よりも「記録」が重要な作品について
本作は2度観ることを勧める。2度目の方が絶対に面白いはずで、それは作品後半で次々と回収される伏線を確認することで、作品前半のどの場面が重要なのかが分かり、そこを改めて観なおしてみることで登場人物たちの行動の是非が分かるからであり、あくまでも時系列をチェックすることではない。本作に時系列の正確さを求めても仕方がない。例えば、作品冒頭で主人公の男がウクライナのキエフのオペラハウスで「アルゴリズム」がどのようなものなのか見たはずなのだが、再び相棒のニールと共に大型車を駆使して挟みこんだ敵の車から取り戻した「アルゴリズム」を見て、その奇妙な形をしたものが本物かどうか疑っていたり、あるいはキャサリン・“キャット”・バートンが夫のアンドレイ・セイターが所有するクルーザーから海に飛び込んだ女性が自分自身であることをいつ知ったのかなど「記憶」があやふやなシーンが多々あるからである。
上映時間が150分あるにもかかわらず、例えば、作品冒頭のコンサートホールを埋め尽くす観客の「多勢さ」と主人公の男の「孤独さ」の間を縦横無尽に行き来させ、全く長尺さを感じさせない画面作りが素晴らしい。