原題:『Tulip Fever』
監督:ジャスティン・チャドウィック
脚本:デボラ・モガー/トム・ストッパード
撮影:アイジル・ブリルド
出演:アリシア・ヴィキャンデル/デイン・デハーン/クリストフ・ヴァルツ/ジュディ・デンチ
2017年/アメリカ・イギリス
そして絵画だけが残る
1631年のアムステルダム。孤児院で暮していたソフィアは富豪で妻と子供を亡くしていたコルネリスに嫁いだのであるが、3年経った1634年になっても子供ができる気配がない。そんな時コルネリスが夫婦の肖像画を依頼した若い画家のヤン・ファン・ルースとソフィアはすぐに恋仲になってしまう。
そこで女中として働いていたマリアは魚屋のウィレムと付き合っており、ウィレムはチューリップの投資で大金を得たのだが、マリアのマントを着てヤンに会い行っていたソフィアをマリアと誤解したウィレムはマリアに何も言わずに海軍に徴集され、アフリカに向かう。
ところがマリアは既にウィレムの子供を妊娠していた。打開策としてソフィアは自分が妊娠している風を装い、ソルフ医師を巻き込んで出産後に自分が亡くなる計画を立て、マリアの子供はコルネリスの子供とし、自分はヤンとの逃避行を試みる。
逃避行の金策のためにヤンはチューリップの投資に手を出すのであるが、最後になって修道院まで球根を取りに行かせたゲリットに高価なチューリップの球根を「タマネギ」と間違えられて食べられてしまい金策に失敗し、そのことを知らずに心変わりしたソフィアが逃げる途中で川に投げた青いマントを見たヤンはソフィアが自殺したと思い込む。
ここまで見て分かるのは、「投資」や「恋」に浮かれている間は、球根やマントや赤ん坊などがあたかも「本物」のように感じるのであるが、「フィーバー」が冷めた後の虚しさを「ヴァニタス(vanitas)」と呼ぶのであるならば、本作は「虚無」を理解する上で格好の教材になると思う。しかし本作も何故か批評家からは評判が悪い。