竹とんぼ

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ふるさとや 臍の緒に泣く 年の暮 芭蕉

2016-12-05 | 芭蕉鑑賞
ふるさとや 臍の緒に泣く 年の暮





貞享四年(一六八七)芭蕉四十四歳の作。季語「年の暮」で冬。
『笈の小文』の旅で故郷伊賀上野に帰郷した折の歳暮吟。
『千鳥掛』(知足編)に歳暮と題し、
「代々の賢き人々も、古郷は忘れがたきものにおもほへ侍るよし。
・・・」と芭蕉のその折りの感慨が収められている。
臍の緒は子供の生誕の日付などを記し、大切に保存しておく風習がある。
母親が死去したとき棺に納め葬るが、
このとき兄松尾半左衛門から大切に保存されていた自らの臍の緒を見せられ、
芭蕉の胸中には今は亡き父母を偲び慈愛の情が込みあげてきたのだろう。
「古里や」に、今故郷の地を踏みしめている感慨が表れ、
「臍のをに泣く」の語に、切実な親子の情を言い得ている感がする。
なお、「臍」の読みは芭蕉真蹟懐紙のかな書き「へそ」に従う。
句意は、「年の暮に年老いた兄妹のいる故郷の生家に帰り、
自分のへその緒をふと手に取ってみた。
今は亡き父母の面影が偲ばれ、懐旧の情に堪えかね涙にくれるばかりである。」

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