しらぎくの夕影ふくみそめしかな 久保田万太郎
庭に咲く白菊か
菊花展の大輪か
それとも供養にもとめた手にする白菊か
家路へと歩む作者が眼に浮かぶ
あれほどの艶やかな花色が
秋の日暮れの速さに影を落としてみえる
作者は歩を早めるのである
(小林たけし)
【菊】 きく
◇「菊の花」 ◇「白菊」 ◇「黄菊」 ◇「大菊」 ◇「小菊」 ◇「厚物咲」(あつものざき) ◇「懸崖菊」(けんがいぎく) ◇「菊の宿」 ◇「乱菊」
キク科の多年草。江戸時代中期以降、園芸用の華麗な品種が作られるようになった。現在も広く栽培され大輪から野趣豊かな小輪まで、種類が非常に多い。
例句 作者
かけがえのなき人といて菊日和 岡地好恵
くらがりに供養の菊を売りにけり 高野素十
この菊の白さは人をあやめるほど 後藤昌治
ていねいに菊をいたわる老夫婦 堀保子
とりどりの小菊むかし駄菓子屋で 川西ハルエ
どさと菊活けて湯殿や二人暮し 柳澤和子
ひとり寄れば一人来る膝菊日和 大島時子
わがいのち菊にむかひてしづかなる 水原秋櫻子
わたしの顔が覗かれており白菊黄菊 篠原信久
一叢の黄菊に山気ひそみをり 鈴木詮子