竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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踊るなり風にそよげる稲のごと 谷口智行

2018-07-28 | 今日の季語
踊るなり風にそよげる稲のごと 谷口智行





 同賞候補作五十句「薬喰」より。
夜の祭で繰り広げられる盆踊りの風景は、
先入観を捨て客観的に眺めると、とても奇怪な光景である。
数十人の人間、それも多くは初老かそれ以上の女性たちが、
一棟の櫓を中心に輪になり、
手を上げては下げ、歩を進めては戻しながら、
決められた動作で前の人の後ろをついて歩く。
それが、どこの角度から見てもみな一様の動作を、
一様の速度で繰り返しているのである。
同じ祭りでも、
西洋のカーニバルのような華やかな印象とは全くの対照で、
日本の「踊り」の印象は暗い。
作者はそのどことなく感じる踊りの恐ろしさを、巧みな表現で比喩にした。
一様に穂を垂れてうなだれる、
一面の稲田。風が吹けば一斉に穂を揺らし、
風が止めば再び一斉に静止する。
稲田に一人立った時の、あの異様な孤独感は何だろう。
何か稲田全体が何者かに洗脳されたように、
風の思いのままに操られている。
その中に、自分一人だけが正気でいるようだ。
しかしそれは、翻せば周り全体が正気で、
自分一人が狂気だという図式でもある。
日本の踊りを見た時の、得も言われぬ陰鬱な感覚が、
この句を見ることで妙に納得できた。


参照  https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272
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