踊るなり風にそよげる稲のごと 谷口智行
同賞候補作五十句「薬喰」より。
夜の祭で繰り広げられる盆踊りの風景は、
先入観を捨て客観的に眺めると、とても奇怪な光景である。
数十人の人間、それも多くは初老かそれ以上の女性たちが、
一棟の櫓を中心に輪になり、
手を上げては下げ、歩を進めては戻しながら、
決められた動作で前の人の後ろをついて歩く。
それが、どこの角度から見てもみな一様の動作を、
一様の速度で繰り返しているのである。
同じ祭りでも、
西洋のカーニバルのような華やかな印象とは全くの対照で、
日本の「踊り」の印象は暗い。
作者はそのどことなく感じる踊りの恐ろしさを、巧みな表現で比喩にした。
一様に穂を垂れてうなだれる、
一面の稲田。風が吹けば一斉に穂を揺らし、
風が止めば再び一斉に静止する。
稲田に一人立った時の、あの異様な孤独感は何だろう。
何か稲田全体が何者かに洗脳されたように、
風の思いのままに操られている。
その中に、自分一人だけが正気でいるようだ。
しかしそれは、翻せば周り全体が正気で、
自分一人が狂気だという図式でもある。
日本の踊りを見た時の、得も言われぬ陰鬱な感覚が、
この句を見ることで妙に納得できた。
同賞候補作五十句「薬喰」より。
夜の祭で繰り広げられる盆踊りの風景は、
先入観を捨て客観的に眺めると、とても奇怪な光景である。
数十人の人間、それも多くは初老かそれ以上の女性たちが、
一棟の櫓を中心に輪になり、
手を上げては下げ、歩を進めては戻しながら、
決められた動作で前の人の後ろをついて歩く。
それが、どこの角度から見てもみな一様の動作を、
一様の速度で繰り返しているのである。
同じ祭りでも、
西洋のカーニバルのような華やかな印象とは全くの対照で、
日本の「踊り」の印象は暗い。
作者はそのどことなく感じる踊りの恐ろしさを、巧みな表現で比喩にした。
一様に穂を垂れてうなだれる、
一面の稲田。風が吹けば一斉に穂を揺らし、
風が止めば再び一斉に静止する。
稲田に一人立った時の、あの異様な孤独感は何だろう。
何か稲田全体が何者かに洗脳されたように、
風の思いのままに操られている。
その中に、自分一人だけが正気でいるようだ。
しかしそれは、翻せば周り全体が正気で、
自分一人が狂気だという図式でもある。
日本の踊りを見た時の、得も言われぬ陰鬱な感覚が、
この句を見ることで妙に納得できた。
参照 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272