竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

乳房四房がいかにも不思議乳牛諸姉  兜太

2018-07-03 | 金子兜太鑑賞
 
乳房四房がいかにも不思議乳牛諸姉  兜太




昭和61年、「皆之」より。

これは搾乳の様子を見て作られたのであろう。
兜太さんの山小屋のある近くにはたしか牧場があったと思う。
一頭の乳牛にいくらぐらい乳が摂れるのであろうか?
本当に勢いよく乳が搾られているのを見たことがある。
その搾乳を「いかにも不思議」とは、まったくその通りで、
ここには詩的操作が施されていない。
「乳房四房がいかにも不思議」というフレーズからは、
乳牛に対するそこはかとした哀切感がある。
下五に、「乳牛諸姉」という、
私はここに惹かれた。
作者は乳牛に諸姉といかにも親しく人間の尊称で、
呼びかけているのである。
そこには乳牛に対する作者の温かい眼差しがある。
その温かさは「いかにも不思議」という
生な言葉からも醸し出されてくる。
この句には季語が無い。
しかし、一句から私は、早春のつんと立ち上がってくる感じ、
乳房感があるように思う。
産土の乳牛の豊かな温みと早春の感傷を感じさせてくれる。



参照  http://www.shuu.org/newpage24.htm
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