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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

さわさわと女神の濯ぎ青葉騒 岩佐光雄

2021-07-09 | 今日の季語


さわさわと女神の濯ぎ青葉騒 岩佐光雄

中七<女神の濯ぎ>が秀逸で全てを言い尽くしている
ざわざわと 青葉騒は捕捉に過ぎる
(小林たけし)


【青葉】 あおば(アヲバ)
◇「青葉若葉」 ◇「青葉山」 ◇「青葉風」
若葉が茂っているさま。青々として生気に満ち溢れた様子である。「青葉若葉」は樹木により濃淡の異なる緑の葉が混じった様子をいう。

例句 作者

青葉光わけても桂林かな 名和未知
あおによし故国ことごとく青葉 鈴木砂紅
ひるがえる葉裏で僕の手錠はずそう 上月章
丁寧な黙*祷の刻青葉鳴り 御崎敏江
世界中トースト飛び出す青葉風 佐怒賀正美
何の木といわず青葉の匂う闇 對木鴻子
写経して弟の平癒や青葉祭り 川島チヨ子
呼吸さびし柱と青葉の樹がつつ立ち 阿部完市
土に還る土偶を照らす青葉かな 堀之内長一
土曜日のちょっといい酒青葉雨 朝日彩湖

出水拡がる鉄格子にすがる女越し 金子兜太

2021-07-08 | 今日の季語


出水拡がる鉄格子にすがる女越し 金子兜太

鉄格子にすがる女
この女越しに出水がひろがる
まさか実景ではあるまいとは思うが
作者の戦争体験にてらせばありえないことは何もない
(小林たけし)


【出水】 でみず(・・ミヅ)
◇「夏出水」 ◇「梅雨出水」 ◇「出水川」
梅雨時の長雨や梅雨末期に多い大雨や集中豪雨で水量が増し河川が氾濫すること。溢れ出た水は濁流となって野や田畑や人家を襲う。時には都会を流れる川も氾濫することがある。台風による出水は「秋出水」という。

例句 作者

出水川橋洗ふ音夜もひびく 鈴木勇之助
水ひくや葉に擁かれて青胡桃 内田保人
白日に出水の泥の亀裂かな 沢木欣一
梅雨出水流るゝものに蛇からみ 松浦真青
出水して森の奥なる月明り 中川宋淵
天に星地に闇幹に出水跡 宇多喜代子



七夕や別れに永久とかりそめと 鷹羽狩行

2021-07-07 | 今日の季語


七夕や別れに永久とかりそめと 鷹羽狩行

さまざまな別れのあった来し方をふりかえる
そうか今日は七夕だった
絶妙な取り合わせといえよう
句意は平易で鑑賞も不要だろう
(小林たけし)

七夕】 たなばた
◇「七夕祭」 ◇「星祭」 ◇「牽牛星」(けんぎゅうせい) ◇「彦星」 ◇「織女星」(しょくじょせい) ◇「機織姫」(はたおりひめ) ◇「織姫」 ◇「星合」(ほしあい) ◇「星迎」(ほしむかえ) ◇「星今宵」 ◇「七夕竹」 ◇「七夕流し」 ◇「鵲の橋」(かささぎのはし) ◇「乞巧奠」(きこうでん) ◇「願の糸」(ねがいのいと) ◇「梶の葉」(かじのは)

例句 作者

七夕や広げて見入る青写真 岡野順子
七夕や牛馬流れてゆきしかな 横須賀洋子
七夕や王様クレヨン散らかりて 国武十六夜
七夕や男忘れて病み居たり 河野南畦
七夕や短冊百枚あなたと書く 横須賀洋子
七夕や輪ゴムが一つ落ちてゐる 阿部青鞋
七夕や遠くに妣の衿白し 大西静城
七夕や遺髪といへるかろきもの 角川照子

半身を空へのりだし袋掛け 片山由美子

2021-07-05 | 今日の季語


半身を空へのりだし袋掛け 片山由美子

おそらくは実景をみての即吟だろう
まざまざと絵画のようにその景が浮かぶ
活躍している作者の初学の作品とうかがえる
(小林たけし)



袋掛】 ふくろかけ
【子季語】
果物の袋掛
【解説】
夏に実った果実を、害虫や鳥から守る為に、紙で作った袋をかぶせること。枇杷、桃、梨、林檎、葡萄などに行う。

例句 作者

手の範囲脚立の範囲袋掛 山下美典
袋掛来世はどこで袋掛 星野明世
袋掛山腹かけてすゝみをり 清崎敏郎
裏富士を仰ぎて桃の袋掛け 大橋和子
黒潮の沖が雲呼ぶ袋掛 岩崎洋子
梨畑の女ばかりの袋掛 長谷川浪々子
波音のけふのびやかに袋掛 赤尾冨美子
海光に遠近のあり袋掛 岩本多賀史
父も見し樹上の山河袋掛 竹鼻瑠璃男


わが泳ぎいつか水平線上に 石田よし宏

2021-07-04 | 今日の季語


わが泳ぎいつか水平線上に 石田よし宏

自分の泳ぐ姿をみることは叶わないのだが
きっと水平線上にあるのだと作者は確信している
句意は平易だが言えそうで言えない措辞だ
(小林たけし)


【泳ぎ】 およぎ
◇「水泳」 ◇「競泳」 ◇「遠泳」 ◇「クロール」 ◇「バタフライ」 ◇「背泳ぎ」 ◇「平泳ぎ」 ◇「犬掻き」 ◇「海水浴」 ◇「汐浴び」(しおあび) ◇「川浴」
夏のスポーツとして最も爽快なもので、激しい夏日の下、きらめく海に色とりどりの水着や日傘が映え、躍動感に溢れた夏の風景が展開される。古くは「水練」といったが、武術の1つとして色々の型や流派が存在する。

例句 作者

およぎつゝうしろに迫る櫓音あり 及川 貞
愛されずして沖遠く泳ぐなり 藤田湘子
泳ぎ終へしわが脂浮く中の姉 大屋達治
寂しさに背泳ぎの空独りじめ 岸田雨童
遠泳の終りは海を曳き歩む 柴田佐知子
飛込台しなひて止る時空かな 藤原照子
墓地抜けて潮浴びにゆくゴム草履 森重 昭
泳ぎ子に紺鳥山のよこたはる 加藤三七子
泳ぎ来て青年の声透きとほる 河野南畦
暗闇の眼玉濡らさず泳ぐなり 鈴木六林男

腹力糞りて脱けゆく半夏なり 豊山千蔭

2021-07-02 | 今日の季語


腹力糞りて脱けゆく半夏なり 豊山千蔭


半夏という季語が句意の俗っぽさを消している
季語によって句意を浄化するお手本のような句だ
脱げゆくもなかなか言えない
(小林たけし)


【半夏生草】 はんげしょうぐさ(・・シヤウ・・)
◇「片白草」(かたしろぐさ) ◇「三白草」(みつしろそう)
ドクダミ科の多年草で「カラスビシャク」の漢名。「半夏生草」の名前は半夏生(七十二候の1つ:夏)の頃に葉が白くなるからとも、葉の半分が白く化粧をしたように見えるからとも言われる。

例句 作者

半夏生草のはみ出す縁の下 若井新一
諸草に伸び立つ花穂の半夏生 石川風女
恙とも怠けとも見え半夏雨 的井健朗
明るさを水に重ねて半夏生 白石みずき
海へ向く細脛ばかり半夏生 渡辺誠一郎
老いるとはかくもけだるき半夏生 林壮俊
耿々と半夏雨降る神田かな 本多豊明
鯉の口朝から強し半夏生 藤田湘子


白ハンカチ青春は畳みこんで置く 蔦 悦子

2021-07-01 | 今日の季語


白ハンカチ青春は畳みこんで置く 蔦 悦子

このハンカチは白でなければならに
青春のほとばしる汗
悲喜交々の涙
このハンカチが知っている
青春の全てが畳み込まれて明日へと向かう
(小林たけし)


【ハンカチ】
◇「ハンケチ」 ◇「ハンカチーフ」 ◇「汗拭き」 ◇「汗手拭」 ◇「汗拭」
汗を拭くための手巾。年中使用され夏季に限ったものではないが、夏に最も重宝することから夏の季語とされる。

例句 作者


よれよれのハンカチとなり夜となる 不破 博
ハンケチ振つて別れも愉し少女らは 富安風生
領巾振山にハンケチ振りて雲湧かす 成瀬櫻桃子
たはむれにハンカチ振つて別れけり 星野立子
ハンカチをいちまい干して静かな空 成田千空
ハンカチ一枚干す神の舌のように 寺田京子
人に振るハンカチいつか我に振る 中村正幸



茅の輪にはたしかに空気膜ありぬ 石田よし宏

2021-06-30 | 今日の季語


茅の輪にはたしかに空気膜ありぬ 石田よし宏

茅の輪に空気膜があるとの措辞
作者ならではの発見だ
茅の輪をくぐる瞬間に感じる異空間は
だれもが経験するが
空気膜とは誰も言ったことことはない
(小林たけし)

【名越の祓】 なごしのはらえ(・・ハラヘ)
◇「夏越の祓」(なごしのはらえ) ◇「夏越」 ◇「大祓」(おおはらえ) ◇「御祓」(みそぎ) ◇「形代」(かたしろ) ◇「夏祓」(なつはらえ) ◇「川祓」 ◇「夕祓」 ◇「祓川」(はらえがわ) ◇「川社」(かわやしろ) ◇「禊川」(みそぎがわ) ◇「茅の輪」(ちのわ) ◇「茅の輪潜り」(ちのわくぐり)
毎年6月晦日に行われる祓の神事(夏越の祓)で、参詣人に茅の輪をくぐらせ厄を祓い浄める。邪神を和(なご)めるために行うことから名付けられた。「形代」は紙でできた人形(ひとがた)で、これに身体の災いを移し、川に流して禊や祓を行うもの。「茅の輪」は主として近畿地方の神社で、陰暦6月晦日の夏越祓の神事に用いられる茅(ち)の輪の事。茅を紙で包み束ねて輪の形に作り、神社の内に置いて参詣人にくぐらせ厄を祓うという信仰からきている。


例句 作者

あきらかに茅の輪くぐりし前と後 齊藤美規
まつすぐに汐風とほる茅の輪かな 名取里美
ミルク飲人形茅の輪くぐりけり 寺村悦江
潜りたる茅の輪に水の匂ひせり 伊藤政美
胎の子に手を添え茅の輪潜りけり 伊勢鏡一郎
茅の輪くぐる爆裂髪の少年も 島田星花


父と子の水着あゆめり逗子銀座 草間時彦

2021-06-29 | 今日の季語


父と子の水着あゆめり逗子銀座 草間時彦

逗子の街並みの賑わいがうかがえる
水着で歩いているのはこの父子だけではない
華やかな水着が行きかっている光景が容易に浮かんでくる
逗子という地名が大きく効いている
(小林たけし)


【海水着】 かいすいぎ
◇「水着」 ◇「海水帽」
海水浴・水泳のときに着る衣服。水着。

例句 作者

胸まではしづかに濡らす水着かな 三垣 博
恐るおそる水着の妻を一瞥す 田辺博充
海水着濡らし切るまで手をつなぎ 行方克己
水着きつつどこかの海の記憶過ぐ 神田ひろみ
水着きてコクトー好みの人になる 杉浦圭祐
水着より雫となりし海零れ 小豆澤裕子
海よりも淋しき水着みておりぬ 渡辺誠一郎


玄海の潮に切り込む飛魚の翅 尾崎青磁

2021-06-28 | 今日の季語


玄海の潮に切り込む飛魚の翅 尾崎青磁

玄界灘の激しい波頭に
頭からつっこんでいく飛魚を観て
作者はその姿を切り込んでいくように感じたのだ
確かにあの輝くしろがねは刀剣のようだ
(小林たけし)

【飛魚】 とびうお(・・ウヲ)
◇「とびら」 ◇「つばめ魚」 ◇「あご」
トビウオ科の魚で種類が多い。体長30cm位の紡錘形で、背部は群青色、腹は銀白色。強大な胸鰭(むなびれ)を使い海面を滑空する。300mを一飛びすることもあるという。初夏に産卵する。九州では飛魚をアゴと呼ぶ。

例句 作者

飛び魚しきりに飛びて壱岐遠し 森田 峠
飛魚の飛ぶしろがねや熊野灘 宇多喜代子
飛魚が飛ぶ円盤の海の上 島村 正
眼帯をして飛魚を喰つてゐる 大石雄鬼
飛魚は孤の混みあう映像繰り返し 岩佐光雄
飛魚を焼き草原を失なえり 津沢マサ子

くすくすと螢袋に乳房ある 清水伶

2021-06-27 | 今日の季語


くすくすと螢袋に乳房ある 清水伶

蛍袋から乳房への発想の飛躍が見事
くすくすとは何? 
これは笑いをかみ殺しているようすだろうか

難解句は読み手の自由な解が許されると筆者は決めている
(小林たけし)


【螢袋】 ほたるぶくろ
◇「釣鐘草」 ◇「提燈花」 ◇「風鈴草」
キキョウ科の多年草で山野や路傍に自生し、高さは60cm程。6~7月頃、釣鐘状の白や淡い紫色で、内面に紫斑のある花が、下向きに開く。形は鈴蘭に似た花だが、はるかに大型である。この名の由来は、子供がこの花の中に蛍を入れて遊んだことから付いた。また提灯を下げた様に咲くところから「提灯花」とも呼ばれる。

例句 作者

ずる休み蛍袋に隠れましょう 川崎千鶴子
たましいのために俯くほたるぶくろ 和知喜八
たましいをそっと眠らす蛍袋 田草川初絵
どどどどと蛍袋に蟻騒ぐぞ 金子兜太
ねむるほど蛍袋の中あかるし 林和琴
ほたるぶくろは湿原の彼方あり 和知喜八

六月の富士よく見えてこころに師 火野保子

2021-06-26 | 今日の季語


六月の富士よく見えてこころに師 火野保子

梅雨月 六月
なんとも物憂い季節でもあるのだが
ふと懐旧の蘇る月でもある
作者は富士山の眺望の良い六月のこの日
ふと師を思ったという
六月 富士 師 取り合わせが遠いようで響いている
(小林たけし)


【六月】 ろくがつ(・・グワ・・)
6月は俳句の上では仲夏になる。緑も深まり、夏らしさが目について来ると同時に梅雨入りの時期でもある。


例句 作者

六月が来てだらだらと物を食う 田中朋子
六月とは遠くの牛の傾きなり 塩野谷仁
六月のしあわせ集む孫の婚 松本夜誌夫
六月のピアノを置いて嫁ぎゆく 松岡耕作
六月のメタセコイアの雀たち 崎元風骨
六月の女すわれる荒筵 石田波郷
六月の母の真珠の重かりき 小川葉子
六月の沼に浮かびし杭の先 福島知子

海中(わだなか)に都ありとぞ鯖火もゆ 松本たかし

2021-06-24 | 今日の季語


海中(わだなか)に都ありとぞ鯖火もゆ 松本たかし

<わだなか>この表意が詩にしてしまう
語彙力の技を感じる
作者の孤独がそろそろ都会の喧騒を欲しはじめたようすが伺える
(小林たけし)


【鯖】 さば
◇「鯖釣」 ◇「鯖火」 ◇「鯖船」
サバ科の代表魚。体長は40cmくらい。日本各地の沿岸で捕れる。真鯖(本鯖)・胡麻鯖(丸鯖)などがある。ホンサバの産卵期は初夏。マルサバは盛夏。産卵を終えた鯖は秋には脂が乗り美味である。(「秋鯖」季:秋)

例句 作者

鯖寄るや日ねもす見ゆる七ツ岩 前田普羅
鯖火焚くひとの子とゐて故郷なり 榎本冬一郎
水揚げの鯖が走れり鯖の上 石田勝彦
会うたびに無口になる父鯖を裂く 坪内稔典
塩鯖がかつと目をあけ雑木山 坪内稔典
鯖街道血のしたたりを塩にして 福井ちゑ子


たくさんの足音の消え沖縄忌 和田浩一

2021-06-23 | 今日の季語


たくさんの足音の消え沖縄忌 和田浩一

あの終戦間際の沖縄の惨劇は・・・・
たくさんの足音が消え
作者はこれ以上の言葉を発しえないのだ
(小林たけし)


沖縄忌 おきなわき/おきなはき 仲夏 慰霊の日

六月二十三日。太平洋戦争の終わりの頃、沖縄は日米の最後の決戦地になり、多くの民間人が犠牲になった。沖縄の日本軍が壊滅した昭和二十年六月二十三日のこの日を、沖縄県慰霊の日とした。

例句 作者

ノートの余白ただ見てをりぬ沖縄忌 前田典子
地下鉄に熱風が来る沖縄忌 安西篤
戦争がまだ墜ちてくる沖縄忌 松下けん
沖縄忌たった一度の死がずらり 宮里晄
沖縄忌どこへ逃げても海ばかり 國定義明
沖縄忌まだあとずさりする蟹も 宮里晄
沖縄忌参加のための足二本 鈴木築峰


ドストエフスキーな人とゐて薄暑 村瀬誠道

2021-06-22 | 今日の季語


ドストエフスキーな人とゐて薄暑 村瀬誠道

『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などで知られる
ロシア19世紀後半の小説家、思想家のこの人に似た人と作者は居るという
風貌からしても安らぎをあたえてくれそうにもない難し気な人物だ
同居だとしたらなんとも息苦しいかもしれない
薄暑でおさえているのがせいいいっぱお
(小林たけし)


【薄暑】 はくしょ
◇「薄暑光」
初夏の頃の少し暑さを感じるくらいの気候をいう。東京辺りでは5月末ともなると気温は25℃を超え、やや汗ばむ陽気となる。

例句 作者

ねこと犬ならんで眠り薄暑かな 河村芳子
ジーンズに腰骨入るる薄暑かな 恩田侑布子
三枚におろされている薄暑かな 橋閒石
二人来て一人去りゆく薄暑かな 山口木浦木
介護セミナー母の肩抱くかに薄暑 倉本岬
入口は即ち出口駅薄暑 近藤阿佐
包より匂う果物夕薄暑 山本美紗
単線の時刻表繰る夕薄暑 久行保徳
夕薄暑これから壺がやさしくなる 中村武男