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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

西鶴忌帯を低めによろけ縞 八木ひろ子

2021-08-10 | 今日の季語


西鶴忌帯を低めによろけ縞 八木ひろ子

浮世草子の作者、好色ももが有名で
西鶴といえば男女の色恋が浮かぶ
掲句もそれのたぐい
低めによろけ 次の仕草は読み手に委ねる
(小林たけし)


【西鶴忌】 さいかくき
陰暦8月10日、元禄期の大小説家、井原西鶴(1642-1693)の忌日。「好色一代男」「好色五人女」などの浮世草子の作者。元禄6年没。

例句 作者

おとろえを見せぬ暑さや西鶴忌 波切虹洋
西鶴忌女の哀れ今もなほ 大場美夜子
色街に住んで堅気や西鶴忌 安村章三
上六で道聞かれゐる西鶴忌 角 光雄
西鶴忌うき世の月のひかりかな 久保田万太郎
朝顔に格子みがかれ西鶴忌 加藤かけい
くぐり戸を開けて味噌買ふ西鶴忌 伊東類
今の世も男と女西鶴忌 三宅清三郎

柵を脱ぎすててきたなめくじり たけし

2021-08-09 | 今日の季語


柵を脱ぎすててきたなめくじり たけし

2021.08.7 朝日新聞
栃木俳壇 石倉夏生先生の選をいただきました

原句 「しがらみ」 を「柵」と添削していただきました
投句の前に悩んだ個所でしたので納得できました
こうしたところで迷わず漢字を当てられないのが未熟ということなのだろう

句意は平明だが
なめくじりの進化は
人間の加齢化になぞらえたつもりだ

炎天に煌と城壁草田男忌 見市六冬

2021-08-05 | 今日の季語


炎天に煌と城壁草田男忌 見市六冬

生命の賛歌の多い草田男に相応しい
炎天をも許容する自然人草田男を彷彿させる
(小林たけし)


【草田男忌】 くさたおき(・・ヲ・・)
8月5日、俳人中村草田男(本名清一郎)の忌日。東大俳句会に参加し、『ホトトギス』で虚子の指導を受ける。石田波郷や加藤楸邨らと共に人間探求派と呼ばれた。生命賛歌の句も多く、代表句に「万緑の中や吾子の歯生え初むる」。この句により「万緑」が季語として定着した。昭和21年に『万緑』を創刊・主宰。句集『長子』『万緑』『火の島』など。昭和58年、82歳で死去。

例句 作者

夏帽のつばの弱りや草田男忌 藤田あけ烏
大輪の花火の音や草田男忌 今井誠人
炎天こそすなはち永遠の草田男忌 鍵和田?子(ゆうこ)
森に入りひとりの緑酒草田男忌 宮脇白夜
炎天こそすなはち永遠(とは)の草田男忌 鍵和田秞子
草田男忌の鍋をはみ出す鶏の骨 大類準一

四次元へ手足あそばす水眼鏡 鈴木良戈

2021-08-03 | 今日の季語


strong>四次元へ手足あそばす水眼鏡 鈴木良戈

四次元とは 次元が四つあること。ふつう、空間の三次元に時間の一次元を合わせていうのだそうだ
水中という異次元であそぶには手足が自由に遊ぶのだと作者が断定したようだ
四次元はどらえもんの世界だろう
(小林たけし)


水中眼鏡】 すいちゅうめがね
◇「箱眼鏡」 ◇「硝子箱」
水中でも物が見えるようにつける眼鏡。水泳時にも漁にも用いる。「箱眼鏡」は四角い箱の底をガラス張りにし、水面に浮かべて水中を覗き、魚や貝を獲る道具で海女などが使う。「硝子箱」ともいう。

例句 作者

落潮の匂ひこもれる水眼鏡 大木あまり
箱眼鏡なまこの眠る国のぞく 米田一穂
この世よりおもしろきかな箱眼鏡 藤本安騎生
箱眼鏡みどりの中を鮎流れ 宇佐美魚目
箱眼鏡山下淳の笑い顔 永田タヱ子


ハンモック少年のように撓うかな 董振華

2021-07-30 | 今日の季語


ハンモック少年のように撓うかな 董振華

ハンモックが少年のように撓う
句はこれだけを表意しているのだが
その言葉には大きな仕掛けがかくされている
その仕掛けに読者はそれぞれの来し方を重ねることになる
少年 心憎い
(小林たけし)


【ハンモック】
◇「吊床」 ◇「寝網」
太い緒で荒く編まれた網で、柱と柱との間や樹陰に吊ってこれに乗り、昼寝や読書などをする。

例句 作者

甲斐駒岳を斜めに仰ぐハンモック 宮武章之
仏跡を巡り疲れてハンモック 広田祝世
ゴッホ眠りゴーギャン揺するハンモック 堀之内長一
ハンモック海の機嫌のいいうちに 日置正次
山彦のゐてさびしさやハンモツク 水原秋櫻子
網の目に肉むら詰まりハンモック 北村妍二


老人の紫煙涼しき東巴文字 森田かずや

2021-07-28 | 今日の季語


老人の紫煙涼しき東巴文字 森田かずや

嫌煙の風潮は国中に広まって煙草を好む人は肩身が狭い
私は禁煙してそろそろ20年になる
掲句はなんとも懐かしく採りあげさせていただいた
巴文字 の作者の工夫に感心させられた
現在ではこの景を<涼し>とは誰も言うまい
(小林たけし)


【涼し】 すずし
◇「涼気」 ◇「朝涼」(あさすず) ◇「夕涼」(ゆうすず) ◇「晩涼」(ばんりょう) ◇「夜涼」(やりょう)
夏の暑さの中にあって一服の涼気はことのほか心地よいものである。涼を最も求めるのは夏であることから夏の季語とされる。

例句 作者

晩涼やうぶ毛はえたる長瓢 杉田久女
花の実の中垣涼し梨子の窓 鬼貫
髪つめて涼しき妻の車椅子 鈴木喜八郎
さざめきのなかへ柝の入る涼しさよ 矢島久栄
思ひきり旅荷小さくして涼し 今成志津
汽笛涼し川も列車も急カーブ 松室美千代
イヤリング一つを外す一つ涼 小高沙羅
君羨し晩涼の両手は天へ 宇多喜代子
師の墓のうしろの石に涼みけり 深見けん二
引き際の波へ及べる夜涼の灯 花谷和子
目細めて涼むにあらぬ呼吸難 目迫秩父
裸涼みキャベツ畑は「青海波」 香西照雄

抱かれるごと高階に虹を見る 寺井谷子

2021-07-27 | 今日の季語

抱かれるごと高階に虹を見る 寺井谷子

何か期待の予感
高階は高層マンションあるいはホテルのような非日常の空間は
そうしたところで見る虹はいつもよりずっと近い錯覚に陥ってみえる
足が地に着いていない分だけ心身が浮いている
作者はそれを抱かれるごとくと表意した
(小林たけし)


【虹】 にじ
◇「朝虹」 ◇「夕虹」 ◇「二重虹」(ふたえにじ)
夏、夕立の後などに特に多く見られることから夏の季語とする。大気中に浮遊している水滴によって太陽光が分散されて生じるもので常に太陽の反対側に見られる。まれにその外側に色の配列が逆の副虹が見えることがある。俗に朝虹は雨、夕虹は晴れと言われる。

例句 作者

新しき家はや虻の八つ当り 鷹羽狩行
朝の虹ひとり仰げる新樹かな 石田波郷
残りいる夕べの虹のレクイエム 安田詩夏湖
水使ひ虹樂します老園丁 伊達天
潰(く)えし半身虹もて補完せり吶喊 竹岡一郎
濁り世のゆふべに薄き虹かかる 関洋子
片虹や首の根ふかくしめりをり 佐怒賀正美

巡礼のように蟻ゆく爆心地 和田浩一

2021-07-26 | 今日の季語


巡礼のように蟻ゆく爆心地 和田浩一

作者は戦争を悼む作品を多く発表している
掲句もその例だが
蟻の列の中にふと作者がゐる幻がみえてくる
(小林たけし)


例句 作者

一兵の道あけておる蟻の道 後藤岑生
一匹の蟻ゐて蟻がどこにも居る 三橋鷹女
人と蟻居ても立つても居られない 吉川葭夫
働き蟻兵隊蟻日はかんかんと 江中真弓
僕に似た蟻穴を出て脱走す 前田霧人
先頭の蟻を知らない蟻の列 栗林浩
兵士蟻地面を踏まず急ぎけり 菊地乙猪子
刺草(いらくさ)に蟻走り入り走り出る 津根元潮
力行の範たる蟻をつぶしけり 相生垣瓜人
勤勉が身の破滅にて蟻の列 水谷郁夫
埋めきれぬ時間大きな黒い蟻が来て 福富健男
夜の卓に逃亡兵の蟻が来る 守谷茂泰
夜の蟻迷へるものは弧を描く 中村草田男


少年に滑走路あり大夏野 三木基史

2021-07-23 | 今日の季語


少年に滑走路あり大夏野 三木基史

だれにでも記憶にある少年時代の滑走路
両手を広げ声を張り上げて野をかけた
いつしか心は空をも飛んでいた
(小林たけし)


【夏野】 なつの
◇「卯月野」(うづきの) ◇「五月野」(さつきの) ◇「青野」(あおの)
夏草の生い茂る野原。緑濃く、強い日差しを受けた草の茂みからは草いきれが立つ。「卯月野」は陰暦4月の新緑の頃の野、「五月野」は陰暦5月、梅雨の頃の野である。

例句 作者

子を盗ろ子とろ青野の果ての曲馬団 山田征司

少年の夏野にビラが降っている 秋尾敏
少年の眉目まっすぐ夏野かな 松本弘子
年三百日射爆の大地いま青野 大岩水太郎
怒らぬから青野でしめる友の首 島津亮
憲法へ水の流れる夏野かな 松下カロ
棒一本立てて夏野を去りし父 池田守一
母病む日青野を白く背に残し 安西篤
沈黙の青野ひろげる村なりき 髙尾日出夫


水打って失いし日が匂いだす 永井潮

2021-07-22 | 今日の季語


水打って失いし日が匂いだす 永井潮

失いし日
水を打ってこれを取り戻す
今日はきっとあてが外れたような不本意な日だったのであろう
気を取り直したような感じが良く解る
(小林たけし)



【打水】 うちみず(・・ミヅ)
◇「水打つ」 ◇「水撒く」(みずまく)


例句 作者

水を打つ思いこみしを払うべく 河野胆石
水を撒く尾張平野のまんまん中 金子ひさし
水打ちし庭へ骨箱向けやりぬ 豊田まつり
水打ちておのれの影を消してゆく 横坂けんじ
水打ちて夕星ひとつともしけり 豊田都峰
水打ちて緑化何でも相談所 池田冨美
水打って影に重さの生れけり 高橋和彌
水打って末広がりに世を生きる 鈴木和代
水打つて戸の開いてゐる安寧かな 長澤奏子
水打つや休憩中の脳細胞 富田花舟
水打つや昨日の蜂も来ておりぬ 平田幸子



長身のさびしきことも日の盛り 中井洋子

2021-07-20 | 今日の季語


長身のさびしきことも日の盛り 中井洋子

いつもは毅然として活気あふれる長身の友
何故か今日はさびしげに見える
夏の日盛り、だれもが元気を失う
作者はそこを切り取った
(小林たけし)


【日盛】 ひざかり
◇「日の盛り」
夏の日中の最も熱い盛り。正午過ぎからことに2時、3時頃を指していう。「炎昼」と共に太陽熱の激しさを強調する季語。《炎昼:夏(時候)》

例句 作者

日盛りの紺とたたかふ鳥飼へり 石田よし宏
日盛りを来てくっきりと押す拇印 鈴木砂紅
正装の鴉が歩く日の盛 名久井清流
滾るものあり日盛りの*祷りの木 橋爪鶴麿
羽根広ぐ孔雀のダンス日の盛り 石田敏子
腰太き南部日盛農婦かな 成田千空
象は皺に覆はれてゐる日の盛り 岩淵喜代子

月見草黒部の水をやさしくす 宇咲冬男

2021-07-16 | 今日の季語


月見草黒部の水をやさしくす 宇咲冬男

月見草の咲きようは
だれをも優しくしてくれる
作者はひとたび荒れれば凄まじい黒部の川までも
月見草がやさしくしているのだという
だれしも頷く断定だ
(小林たけし)


【月見草】 つきみそう(・・サウ)
◇「待宵草」(まつよいぐさ) ◇「大待宵草」 ◇「宵待草」(よいまちぐさ)
南アメリカ原産のアカバナ科の多年草で、夏の夕方、白い四弁の花を付け翌日、しぼむと紅変する。観賞用として栽培されてきたが、最近ははあまりみかけなくなった。現在この名で呼ばれているのは、南米原産の待宵草、あるいは大待宵草で、海辺や川原に広く帰化している。こちらの方は鮮やかな黄色の花である。

例句 作者

紀の海に一筋の潮月見草 大嶽青児
眼鏡購いぬ海が続いて月見草 和知喜八
砂丘はなるる月のはやさよ月見草 大須賀乙字
英学の夢聴くミルン月見草 船矢深雪
躬のどこか滅びの色に月見草 河野多希女
軍港の眠り足りない月見草 川辺幸一
逢へなくば眼つむる癖や月見草 髙橋あや子
B型の月見草なり残生も 佐藤琳子

夕立なか野鯉のやうな下校生 大竹照子

2021-07-15 | 今日の季語


夕立なか野鯉のやうな下校生 大竹照子

下校の子等が夕立の中を走っている
その様子を野鯉のようだと言い切っている
句意に他意はない
景を見事に切り取って見事
(小林たけし)







夕立】 ゆうだち(ユフ・・)
◇「夕立」(ゆだち) ◇「夜立」(よだち) ◇「白雨」(はくう) ◇「夕立晴」 ◇「夕立風」 ◇「夕立雲」
午後や夕方、急に曇って来て短時間に激しく降るにわか雨。夏に多い。発達した積乱雲によって起こり、雷を伴うことが多い。通常1時間位でからりと晴れる。「夕立つ」と動詞にも用いる。 「白雨」ともいう。

例句 作者

漆黒や鯉の跳ねたる夕立雲 秋篠光広
夕立来て暴れ神輿のなほ猛る 杉本光祥
夕立をにぎやかに来る飛騨乙女 鈴木五鈴
夕立の来さうな烏骨鶏の小屋 山尾玉藻
一滴の天王山の夕立かな 大屋達治
一滴の大きく夕立来りけり 柴田佐知子
夕立をかはす男のシャツの中 黛まどか
桑海や大夕立あとなほけぶる 高浜年尾
夕立来る暗さがワイングラスまで 山田弘子
言訳に一夕立の通りけり 一茶


木曽川の音の中なり籐の椅子 長谷川 櫂

2021-07-13 | 今日の季語


木曽川の音の中なり籐の椅子 長谷川 櫂

作者のまどろんだ姿が浮かぶ
いつか寝椅子もろとも木曽川の音の中
(小林たけし)


【籐椅子】 とういす
◇「籐寝椅子」(とうねいす)
籐の茎などで編まれた椅子で、専ら夏に用いられる。仰臥出来るように大型に作られたものを籐寝椅子という。

例句 作者

週末は虹を門とす藤寝椅子 中島斌雄
竹籟を聴くまどろみや藤寝椅子 渡部抱朴子
籘椅子や一日かならず夕べあり 井沢正江
籐椅子のヌードモデルのガウンかな 浅井陽子
籐椅子に夜を大事にしてをりし 嶋田一歩
モーツアルトの音域に置く籐寝椅子 横坂けんじ

またもとのおのれにもどり夕焼中 飯田龍太

2021-07-11 | 今日の季語


またもとのおのれにもどり夕焼中 飯田龍太

夕焼はおそらくとてつもなく見事なものだったのだろう
現世の塵芥に汚れた自分
夕焼を全身に浴びて昔のほんとうの自分を取り、脅したようだ
(小林たけし)


夕焼】 ゆうやけ(ユフ・・)
◇「ゆやけ」 ◇「夕焼雲」
日没の頃、西の空が赤く染まる現象で、朝焼けとともに薄明現象の1つである。夏の夕焼の景の壮快さから、夏の季語としている。

例句 作者

ゆうやけこやけだれもかからぬ草の罠 穴井太
ゆうやけのこれそれあれどれどれみれど 高橋京子
イヤホンを外す夕焼跨ぐとき 三木基史
リハビリの妻活き活きと夕燒す 川北昭二
一行ずつ夕焼け喰べる生家です 森田高司
中州まで靴が流れて夕焼くる 花房八重子
人生に悔あり夕焼一人見て 羽渕順子
伴大納言絵巻の中も夕焼けぬ 神田ひろみ