十二支のいわれ いかせ いのち
北原隆義 (石川県七尾市 妙観院 副住職)
十二支がどうしてできたのかを、昔話と本当の理由との二つお話しします。まずは昔話からです。
昔々、ある年の暮れに、神さまが動物たちに「元旦に神殿に早く着いた順に、その年の大将にしてあげるぞ」と言いました。この話を開いた動物たちは、自分こそ一番になろうと仕度を始めました。でもネコちゃんはうっかり神殿に集まる日を忘れてしまい、仲良しのネズミさんのところに聞きに行きました。「ネズミ君、神殿に行く日はいつだっけ?」とネコが尋ねると、ネズミは思わず「元旦から人の家に行くものじゃないよ。二日に決まってるよ」と嘘を言いました。
ネズミはこのとき牛小屋の天井裏に住んでいましたが、大晦日の夜に足の遅いウシがみんなより早く出発したのを見て、ちゃっかりウシの背中に飛び乗りました。ウシは暗い夜道を霜柱を踏みしめながら一晩かかって神殿へと向かい、門の前で夜が明けるのを待ちました。東の空が明るくなり一番鶏が鳴きました。門の扉がギギーつと開きかけたかと思うと、ネズミはぴょんと牛の背中から降りて扉の隙間から神殿に入りました。そしてまんまと一番最初に神さまに新年のご挨拶を申し上げたのです。
続いてウシが二番目となり、次に一晩に千里を駆けるトラが三番目となりました。その後からウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、ニワトリ、イヌ、イノシシの順で神殿に入りました。さて、二日の朝ネコが神殿に行くと、神さまに「顔でも洗って出直してきなさい」と叱られました。それ以来ネコは毎日顔を洗うようになりました。してネズミを見るとその時のことを思い出して追い回すようになったということです。
では、十二支ができた本当の訳を話します。十二支は今から約三千五百年前に中国で考えられました。お月さまが満月から少しずつ欠けて小さくなり、月の光が見えない新月の状態になり、まただんだん太って満月の姿に戻ります。この間の日数が約二十九日で一カ月の単位ができ、それを十二回繰り返すと一年になります。やがてそれぞれの年に名前をつけて十二年で一回りする仕組みもできました。
当時はまだ文字の読める人が少ない時代だったので、多くの人に親しみの深い動物の名前をあてはめたということです。そのときつけられた年号が子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戊・亥の十二文字だったそうです。ちなみに日本、中国、台湾、韓国では十二支の動物は同じですが、ヒョウやネコ、ワニが入っている国もあります。国によって若干の違いはありますが、親しい動物たちがそれぞれ一年を担当して次の動物に引き継いでいくということです。
私はこれを、十二種類の動物が私たちを守ってくれるんだと受け止めています。動物たちへの尊敬の気持ちと親しみや信頼の気持ち、いろんな気持ちが心の中にありますが、彼らに見守られていると思うと「しっかりしなくては」と身が引き締まります。嘘偽りのない心を持ち、嘘偽りのない言葉を語り、嘘偽りのないまことの行いをする。いつもこのようにできれば有り難いですね。
本多碩峯 参与 770001-42288