高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

2012年の記録 1-5月

2011-04-03 10:17:13 | アーカイブ
5月20,23日 続けてアファンの森に行きました。いまが新緑が一番美しい季節です。このところ幾たびにみかけるかわいい男の子がいて、この前「何してるの?」といったら、それには答えないで手をつきだして「きょーりゅーのたまご」といいました。「赤ちゃんがでてくるの」とも。しばらくしてまた会ったときに「恐竜のたまご、赤ちゃん出て来た?」といったらお母さんが「まだだよね」。今回も会ったので「お名前は?」と聞いたら「2さい」だと。実に有望な男子です。学生といっしょにパチリ。
 白い楚々とした花が目立ちました。


新緑のアファンの森


近所の男の子と


ニリンソウ群落


サワハコベ


タニギキョウ


エゾノタチツボスミレ

5月19日 山梨県の乙女高原でシカの影響を排除する小さい柵を作りました。草原に3個、森林に2個設置しました。標高1700mあるので、まだ早春の風情で、フデリンドウなどが咲いていました。







5月12-13日 山梨県の早川というところに研究室で親睦旅行に行きました。新しい3年生が15人も入ってきたのでにぎやかになりました。早川は地形が険しいところで、すばらしい自然がありますが、何処も同じで、過疎化が問題のようです。好天にめぐまれてたいへん楽しい旅行になりました。





早川には古くから金華山でいっしょにシカの研究をしてきた大西さんがおられ、ちょっと久しぶりに会いました。林道を歩いていたらカモシカがおり、解説をしてもらいました。カモシカの心理にまで立ち入るとてもよい解説で納得しました。


大西さん(中央背中)と解説を聞く学生たち

5月1日 最近出た論文
Kubo, M. O., K. Kaji, T. Ohba, E. Hosoi, T. Koizumi, and S. Takatsuki. 2011. Compensatory response of molar eruption for environment-mediated tooth wear in sika deer. Journal of Mammalogy, 92:1407-1417.

Kojo, N., N. Higuchi, M. Minami, N. Ohnishi, A. Okada, S. Takatsuki and H. B. Tamate. 2012. Correlation between genetic diversity and neonatal weight of sika deer (Cervus nippon) fawns. Mammal Study, 37: 11-19.

4月28-30日 アファンの森に行って来ました。まだ早春で日陰には雪が残っていましたが、急に暑くなり25°もあったようです。アズマイチゲ、キクザキイチリンソウ、ショウジョウバカマ、リュウキンカなどがきれいでした。新3年生の笹尾さんと萩原さんは初めての調査でしたが、楽しく調査をしていました。とくにオニグルミが貯食して隠していたものをたくさん調査できました。
 
キクザキイチリンソウ群落の前で高槻、笹尾、萩原

アズマイチゲ

ニリンソウ

リュウキンカ

アオイスミレ

ミヤマスミレ

マメザクラ

ヤマザクラ

ハシリドコロ

エンレイソウ


4月13日 新学期が始まり、「演習」で動物のスケッチをしました。麻布大学にはたくさんの家畜が飼われているので、こういうことをするには恵まれています。


4月8日 山梨県の乙女高原で今シーズンの調査の下見をしてきました。

1900mですからまだ雪が残っていました。


流れにはおもしろい形に氷ができていました。


高槻、加古さん(3年生)、高橋君(4年生)、植原先生(地元の小学校の先生で、乙女高原で自然教育をしておられる)

4月6日 最近公表された論文。
Tsuji, Y. and S. Takatsuki. 2012. Interannual variation in nut abundance is related to agonistic interactions of foraging female Japanese macaques (Macaca fuscata). International Journal of Primatology, 31,DOI 10.1007/s10764-012-9589-0
これは辻大和さんの学位論文の骨子になる内容で大論文になりました。サルの食物には果実の豊凶が大きな影響を与えますが、それがメスの繁殖に影響することは知られていました。辻さんは個体識別されて順位がわかっているサルを対象にこの情報を食物利用にとりこんだ解析をしました。重要なことは凶作年でも高順位のサルは妊娠率を維持していて、マイナス影響を受けるのは下位のサルだけだという発見です。食物の栄養分析などもきちっとしたよい論文になりました。

Kobayashi, K. and S. Takatsuki. A comparison of food habits of two sympatric ruminants of Mt. Yatsugatake, central Japan: sika deer and Japanese serow Acta Theriologica, DOI 10.1007/s13364-012-0077-x
これは小林謙斗君の卒論で、八ヶ岳のシカとカモシカの食性比較です。この前の論文で岩手のシカと山形のカモシカという同じ東北地方の落葉広葉樹林帯のカモシカの食性比較をしました。シカがササをよく食べるのに対してカモシカはイヌツゲ、ヒメアオキなどの常緑低木の葉をよく食べていましたが、場所が違うのでこの違いが動物の違いなのか場所の違いなのか直接比較できないでいました。八ヶ岳には両種がもじどおり同所的にいるので、この懸案にとりくむことができました。結果は同じ場所でも前の論文と同じく、シカがササに依存的、カモシカはササも食べるが双子葉植物の葉もよく食べていました。「卒論でもちゃんとやれば国際誌にのる」という持論が証明できてうれしかったです。

3月22日から28日、金華山で恒例のシカ調査をしてきました。鮎川は少し復興の兆しを見せていましたが、魚から放射能汚染が出たので、漁業は先が明るくはないという話でした。今回は黄金山神社にお世話になりましたが、神社の職員も人数が少なくたいへんなようでした。去年の15号台風による土砂崩れが想像以上に大きく驚きました。シカの調査は順調にできました。


雪の中を歩く


尾根で記念撮影


山でであったオスジカ


生け捕り作業


土砂崩れ

3月20日 アファンの森で今年度の調査報告会があり、研究室からは3年生の池田さんと佐野さん、院生の嶋本さんと高槻が報告しました。ほかに植物、鳥、トンボ、クモの報告があり、とてもよい勉強になりました。

 池田さん 佐野さん  
嶋本さんとニコルさん。花暦を作ってプレゼントしました。  
高槻とニコルさん。報告後の楽しい談話。池田さんの糞虫と死体分解虫の話で盛り上がりました。

3月15日 卒業式でした。皆さんおめでとう。4年生6月のほか獣医6年生2人、修士1人が卒業してゆきます。獣医の2人は翌日発表された獣医国家試験にも合格しました。


卒業した9人と高槻

3月2日 今年度の卒業論文発表会を終えました。充実した発表内容でした。


多くの方が聞きに来てくださいました。


4年生と教員

2月20-27日 マレーシアに行って来ました。かつて指導したアヒムサ君がノッチンガム大学マレーシア校で准教授になり、熱帯林の野生動物の研究をしているので、会いに行きました。たいへん精力的に活動しており、とくにゾウの種子散布と保全研究を協力に進めています。たまたまゾウが捕獲され、GPS首輪をつけるという現場に立ち会いました。この麻酔薬は立ったまま動かなくなるので、処理がしやすいそうです。トラックに積み、引きずり出し、立たせたまま首輪をつけるという作業で慣れたエキスパートができわよく作業をしていました。アヒムサは立派なリーダーとして働いていました。現在すでに7頭にGPS首輪をつけ、50頭をめざしているそうです。なんといってもアジアゾウの保全ですから世界各国からグラントを得て進めていました。
 マレーシアは大変豊かな国で、道路は間違いなく日本よりよく、私が訪問したのは動物園や繁殖センターなどに限られますが、これらも日本よりはるかに質の高いものでした。英語教育もすばらしくおこなわれています。自分の無知を恥じました。


自動車の牽引機もつかってゾウをトラックから引きずり出す


首輪をつけるアヒムサ


首輪をつけたところ


覚睡剤を撃ったゾウをトラックから見る。このあとあとずさりして林に入った。
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