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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

植生状態と鳥類群集

2023-07-27 14:08:36 | 研究
玉川上水は東京を30kmの長さで連なる水路ですが、その植生管理は一様ではありません。羽村から小平までは水が豊富で生活用水に使うため両岸の管理がよく行われ、サクラを主体として樹林が続きますが、その幅は広くない場所が多いです。小平管理所で取水し、それ以下は再生水が流れますが、水量は少なく、玉川上水の水路は深くなります。小平では樹林はばが30メートルほどもあり、武蔵野の雑木林の片鱗が見られます。小金井では桜並木のために強度の伐採が行われ、サクラが間隔を置いて植えられています。それより下流(東側)では樹林幅は狭くなり、杉並では両側を放射5号線という大きい道路が開通しました。西から小平、小金井、三鷹、杉並で7回の鳥類調査をし、比較したところ、玉川上水と三鷹が鳥類が豊富で、杉並では大きく減りましたが、小金井はそれよりもさらに少ないことがわかりました。しかもその内容は小平と三鷹では樹林に住む鳥が多く、杉並と小金井では都市のオープンな場所に住むスズメ、カラス、ハトなどが多いことがわかりました。このように鳥類群集は生息地の樹林の状態に強く影響されること、したがってその管理には生物多様性の考え方が重要であることを指摘しました。

高槻成紀・鈴木浩克・大塚惠子・大出水幹男・大石征夫. 2023. 玉川上水の植生状態と鳥類群集. 山階鳥類学雑誌 (J. Yamashina Inst. Ornithol.),55: 1-24. こちら
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