高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

東京大学時代

2015-03-01 01:01:11 | 最終講義
 1994年に東京大学大学院農学生命科学研究科で研究することになった。教授の樋口広芳先生と助教の宮下直さんの3人でスタートした。樋口先生はすでに日本の鳥類学を代表する研究者で、精力的に論文を発表された。とくにその後研究された渡り鳥の移動経路解明は世界が注目した研究である。学生に対しておだやかではあるがきびしく質の高い研究を求められ、研究室の運営という点でも見事であった。宮下さんはクモが専門ということだったが、すぐにそれ以外の動物にも取り組んで、すぐれて生態学的な研究を精力的に進め、あっという間に日本を代表する生態学者となった。二人のすぐれた研究者に出会い、研究のきびしさとそれによって得られたすばらしい成果を見たことは私にとって大きな学びとなった。


宮下さん、深見さん(手前), 高槻, 樋口先生(1998年)


 その後、移った総合研究博物館では院生の指導と博物館活動をしたが、博物館には人類学、考古学などまったく知らない分野の一流の研究者がおられ、刺激に満ちた体験をすることができた。収蔵されている資料は文字通り日本の文化遺産の山であった。明治初期に作られた動物標本を運ぶときは、手が震えるほど緊張した。シーボルトが作った植物標本がオランダから里帰りしたとき、その標本が百数十年の時間を超えて戻って来たことに感動した。


哺乳類の骨格の展示(2003年, 東京大学総合研究博物館)


つづく


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