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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

フクロウの食物の識別の試みとその教材利用の可能性

2024-06-18 13:33:50 | 最近の論文など
フクロウの食物の識別の試みとその教材利用の可能性
高槻成紀
日本野鳥の会神奈川支部研究年報 BINOS 第 30 集 (2023) : 23-28

フクロウのペリットあるいは分析が困難と思い敬遠 されがちである。そこで検出される骨の識別法を試み た。特に重要なのはアカネズミ類とハタネズミ類の識別で、これは下顎骨により確実に可能である。またこ の材料は骨の学習にも適している。代表的な骨の特徴を以下に示した。



図 1 アカネズミ(A)とハタネズミ(B)の下顎骨と臼歯


図 2 アカネズミの骨格と主要な骨


図 3 モグラの骨格と主要な骨


図 4 ドバトの骨格と主要な骨


図 5a 主要な骨の一覧図


図 5b 主要な骨の一覧写真


図 6 アカネズミの切歯(上)下顎骨(下)


図 7 モグラの鎌状骨


図 8 モグラの下顎骨

そしてフクロウの食物を調べることの教 材としての可能性を、
1)フクロウのネズミ捕食の特 徴を学ぶ、
2)食物連鎖と頂点捕食者の意義を学ぶ、
3) 齧歯類、食虫類、鳥類の骨を学ぶ、
4)リンゴ園の被 害対策におけるフクロウの活用成功例を通じて保全生 態学を学ぶ、
などの利点があることを指摘した。
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宮城県東松島の復興の森のフクロウの食物

2024-06-18 13:21:38 | 最近の論文など
宮城県東松島の復興の森のフクロウの食物

高槻成紀・福地健太郎

<摘要>宮城県東松島市にある「復興の森」にかけたフクロウの巣箱に残された残存物を分析したところ、アカネズミ属の下顎骨6例、ハタネズミ属の下顎骨12例のほか、アズマモグラの上腕骨1例、ヒミズの上腕骨4例が検出された。鳥類の骨と羽毛も検出されたが、個体数推定は困難であった。森林性のアカネズミ属と草原性のハタネズミの双方が検出され、「ハタネズミ率」が66.7%であったのは他の場所と比較して多い方であった。このことは、調査地が丘陵地の落葉広葉樹林であり、周辺に丘陵の間にある谷津田と接していることを反映していると考えられた。


図 1 復興の森とフクロウの巣箱の位置.ツリーハウスは 木に木製の小屋を作ったもの,サウンドシェルターは 林の中で音を聞くための構造物


図 2 フクロウの巣箱と巣箱から顔を見せるヒナ.背後に いるのは親鳥 . 2021 年 5 月 23 日 , センサーカメラに よる

表 1 検出物の数

図3. 検出物

なお、巣箱に残った骨の中で大きめの鳥の足があり、足輪がついていました。山階鳥類研究所に問い合わせたらレース鳩であることがわかりました。

図 4 検出されたやや大きい鳥の足と骨 . A. 足 , B. 上腕骨 , C. 手根中手骨

図 5 検出された足輪。レース鳩のものであることが判明した

表 2 既往研究の「ハタネズミ率」の比較.「ハタネズミ」はハタネズミ属(Microtus),ビロードネズミ属(Eothenomys), ヤチネズミ属(Craseomys)など含む vole を指す.Suzuki et al. (2013) は複数の巣箱を比較しており,率に幅がある.

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甲州市菅田天神社のフクロウのペリット内容 – 市街地での1例

2024-06-18 07:15:23 | 最近の論文など
甲州市菅田天神社のフクロウのペリット内容 – 市街地での1例
高槻成紀・植原彰
Strix,40: 129-135. 2024

 日本のフクロウは森林に住むアカネズミ類を食べるというのが定説でしたが、わたしたちが八ヶ岳で調べたら牧場に近いところではハタネズミの割合が高いことがわかりました。その後、町中では鳥がよく食べられているという報告がチラホラではじめました。山梨の乙女高原で一緒に植物や訪花昆虫をしらべている植原さんと話していたら、以前に甲州市の神社の木立でペリットを集めていたということで、分析させてもらいました。そうしたら確かに鳥が多く検出されました。タヌキでもそうですが、融通のきく食性を持つ動物の場合、とにかく具体的な事例の蓄積が不可欠で、私はそういう事実の記録に役立ちたいと思っています。

<摘要>2001年5月に山梨県甲州市の神田天神社の森で採集したフクロウのペレット37個を分析した。げっ歯類、鳥類、食虫動物の出現頻度は、それぞれ26、24、4であった。この研究における鳥の出現頻度(64.9%)を以前の研究と比較したところ、森林や里山(約10 %)よりも高く、都市地(約70 %)と同様だった。本調査の結果は、都市域に生息するフクロウが獲物として鳥に依存する可能性を裏付けるものであった。


調査地

検出物

検出物内容

既往研究におけるフクロウの食性に占める鳥類の生息地別出現率(%)。森林1:白石・北原(2007)、森林2:松岡(1977)、里山1:米田ほか(1979)、里山2:今泉(1968)、市街地1:本研究、市街地2:森井・塩入(1996)、市街地3:内山ほか(2014)
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フクロウの食性

2024-06-18 07:09:35 | 研究
宮城県「復興の森」のフクロウの食性 こちら
アファンの森のフクロウの食性 準備中
山梨県甲州市菅田天神社のフクロウのペリット内容 – 市街地での1例 こちら

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フクロウの食物の識別の試みとその教材利用の可能性 こちら
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