野生馬タヒを復帰させたモンゴルのフスタイ国立公園の森林に及ぼすタヒとアカシカの影響
高槻成紀・大津彩乃
タヒの復帰に成功されたフスタイ国立公園にはカンバ林が残っているが、面積が減少している。それには永久凍土の減少が重要な要因だが、タヒとアカシカの採食も可能性がある。公園内の西の林と東の林で、タヒとアカシカの糞密度、カンバの状態を比較した。アカシカの糞は西の林で多く、タヒの糞は東の林で高かった。カンバの死亡率は西の林で62,9%、東の林で12.6%であった。下枝高は西の林で172.0 cm、東の林で148.3cmであり、バラツキは西の林で小さかった。アカシアは立ち上がって枝の葉を食べるためでディアラインが認められた。カンバの若木はどちらでも80%程度が盆栽状であり、更新は妨げられていた。これらの結果から、フスタイ国立公園のカンバ林は永久凍土減少だけでなく、タヒ・アカシカの強い影響によっても減少していると考えた。

調査地の景観

西の林と東の林でのタヒとアカシカの糞数

西の林と東の林でのカンバの基底面積。黒:生存木、灰色:枯死木

西の林と東の林でのカンバの枝下高
西の林と東の林での樹木の本数
