活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

人類の月面着陸は無かったろう論

2009-06-27 00:01:15 | 活字の海(読了編)
著者:副島隆彦 徳間書店刊 1600円(税別)
初版刊行:2004年6月30日(入手版も同じ)
帯コピー:私たちは35年間もアメリカに騙され続けてきた
     歴史を捏造する途轍もない巨大な権力犯罪を暴く




先般打ち上げられたNASAの月観測衛星「LRO」が、
無事に月周回軌道に到達した
とのニュースが流れてきた。

「LRO」とは、月観測衛星「Lunar Reconnaissance Orbiter」
の略であり、将来の有人基地建設に向けた詳細な地表探査を目的と
して開発された衛星である。

そのため、搭載しているカメラも地表解像度が50cmの高性能な
ものを搭載しており、かつての数次に渡るアポロ計画で月面に残置
された月着陸船の脚部や月面移動車等も識別できるとの触れ込みで
ある。

ちなみに。
先日、その役目を終えて月面に強制墜落してその命を終えた
 日本の「かぐや」に搭載されていたカメラは、地表解像度が
8m程のため、それらの遺物を映像として認知出来るレベル
ではない
、とのことである。

勿論それは、「かぐや」が一方的に低性能という話ではない。
それぞれが異なるミッションを持った探査機であるということに
過ぎない。



こうしたニュースにワクワクとしているそんな春の日に。
いつもの如く、行きつけの古書店で本書を発見し、購入。
(購買価格は500円(税抜き))。

煽情的なタイトルと、世界で最も有名な足跡写真に心を惹かれて
購入した次第である。

なのだが、正直、とても後悔している。
この本は、AMAZONマーケットプレイスに出品されている
古書なら100円で買える。
340円の送料がかかるとしても、440円である。

10円たりとも余分に払いたくは無いなあ、というのが、読後の
素直な感想であるが故である。


著者は、標題の主張を展開する。
その根拠として、4つの疑問を呈する。

1) 写真に疑義あり!
   撮影日も場所も違う筈なのに、背景の山が同じだ。
   これは捏造に違いない。

2) さあ、もう一度月に行って来い
   再現性の無い事象は科学ではない。
   行かないのではなく、行けないのだろう。ばか者ども。

3) 月面の残骸をさっさと写せ
   ハッブル望遠鏡等を用いれば、簡単に撮影出来る筈だ!
   そんなものは残っていないから、写せないだけだろう!

4) 月への軟着陸はまだ出来ない
   大気というブレーキも無い月で、周回軌道を高速で移動
   しているロケットが安全に軟着陸できるような技術を、
   人類が持っている訳が無い。


口汚い物言いを、ご容赦願いたい。
何しろ、元本がほぼ全編に渡ってこのような文体なのだ。
(これでも、結構セーブして書いている!)

なぜそこまで居丈高に、他者を愚弄し罵倒するのか、正直理解に
苦しむ。
著者が、個人的にNASAに恨みがあるとは思えないが(笑)、
強いて言えば、これまで騙され続けた恨みとでも言うのであろう。

それにしても。
こんな口調で張られる論旨の展開を、まともに取り上げて議論する
気にはなれないのが情けない。

しかも、である。
そうした自身の言調が他者を不愉快にすることは、著者も十分に
意識している。
その上で、こう言い放つのである。

「『いや、副島さんの言いたいことは分かるが、その文章の書き方
  がねぇ』などと、何世紀にもわたる属国奴隷の強い遺伝子に 
  支配された従順人間まるだしの卑屈な言い方(人を主張では
  なく、語り方やもの腰で判断する、いやな人間たち特有の態度)
  にも、私は刃向かい、かみつく。
 『ここでは月面着陸が有ったか、無かったか、だけが問題です。
  それ以外のことを言わないで下さい』と。」

人を、その文章で不愉快にさせておいて、そんなことは瑣末な問題だ。
本質で議論しようと著者は言うのである。

なぜ、礼儀を弁えない人と、同じテーブルに付いて議論を強要されねば
ならないのだろうか?

他人に自分の意見を聞いてもらいたければ、まず最低限の礼儀を守る
べきであり、それが出来ない人間のことをこそ、「いやな人間」と
言うのである。

勿論、誰も強制されて著者の本を買った訳ではない。
だからといって、こうした物言いを看過し、許容する必要も、どこ
にも無い。


尚。
著者が呈した疑問については、JAXAがそのホームページの中で、
かなり詳細に解説している
勿論、その解説にも著者は噛み付いているが、もうはっきり
言って堂々巡りに過ぎない。


著者は、LROがアポロの残置物の撮影に成功したとしても、
その写真は捏造だ、合成だと声高に主張するだろう。

例え、月面に連れて行かれたとしても、これは真実ではないと
言い張るだろう。


その昔、「かわいい魔女ジニー」の中で、こんなシーンが有った。
宇宙飛行士である主人公トニーが衛星軌道を上司と周回中に、
トニーを恋しく思うジニーの魔法により自宅に引き戻されてしまう。

上司は移動のショックで失神したが、やがて意識を取り戻す。
慌てたトニーは地球儀を回して、ほーら、まだ順調に飛行中
ですよ~と上司に言うが、上司は「海に太平洋と書いてある!?」
と叫んで、再び失神する。

#あれは、最高に面白かったなぁ。
##って、僕っていくつだ?(笑)


著者は、人間は月に行ったとまだ信じている人たちは、この上司と
同じだ、と言いたいのだろう。

そして、眼を覚ませ!と叫び続ける。

それならそれで、ディベートのルールを守って欲しいと切に願う。

少なくとも。
こうした他者を漫罵する姿勢を続ける限り、そして、耳目に入る
事象のうち、自分に都合のいい部分だけを取捨選択して絶対的な
証跡のように主張する限り。
その論旨に耳を傾けようとする奇特な人が増えることは、そうそう
無いだろう。

逆に、これに首肯し、同調する人が現れるような時をこそ、僕は
恐れる。

文系人間の自分が言うのもなんだが、本書は反面教師となりうる
という意味においてのみ、稀有に面白い書物である。

その意味で、お勧めである。



(この稿、了)


(付記)
アポロ計画に異を唱えるにしても、このブログ位の文体と論旨なら、
まだ読み込もうと言う気にもなるのだけれどね。


さて、ここまで読んで、この本を買われますか?(笑)
人類の月面着陸は無かったろう論
副島隆彦
徳間書店

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この本に対して、と学会がとうとう立ち上がった!
ということで、この本。
未読だが、早く入手したい。
人類の月面着陸はあったんだ論―と学会レポート
山本 弘,江藤 巌,皆神 龍太郎,植木 不等式,志水 一夫
楽工社

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これもまあ、同種。
アポロは月に行ったのか?―Dark Moon 月の告発者たち
メアリー ベネット,デヴィッド・S. パーシー
雷韻出版

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4 コメント

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Unknown (シャドー81)
2009-06-27 00:36:08
人類月面到達は、偽物。あれは、ハリウッドが作った、映画だ!って話は、当初からありましたね。今時、またそんな本が出ているのにびっくりです。

それに、もう一つびっくり。副島隆彦さんは、金融関係だけではないのですね。そっちの方面の人だと思ってました。

地球は、平面と思っている人たちの学会もあるらしく・・・いろいろだなぁ。

PS
今回は、かなり怒気ある文章ですね。
返信する
Unknown (MOLTA)
2009-06-27 09:50:17
映画は「カプリコン1」ですね。
#本書の中でも触れられています。

ネットで検索すると、アポロ疑惑は都市伝説の中でも相当メジャーな部類でした。
中にはしっかりした考察から疑義を訴えているものもあるのですが、この本はなぁ…。です。

こういう文章だけは書きたくないというお手本のような本です。
その意味では、一読の価値あるかも。
返信する
Unknown (シャドー81)
2009-06-27 10:08:14
いやいや、「カプリコン1」以前から、アポロ11号の映像は、ハリウッドで作成したって疑惑(笑)がありましたよ。

でも、よく最後まで読み切ったなぁ・・・私なら途中でやめてしまいそう
返信する
トライしますか? (MOLTA)
2009-06-28 21:31:41
宜しければ、今度お貸ししますよ。

「日本の碩学たるこの副島に、言論で喧嘩を売ったことを後悔するがよい!」
今手元に本が無いのでうろ覚えですが、こんなフレーズが頻出する表現は、なかなかにカルチャーショックですよ(笑)。
返信する

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