新潮文庫 1985年刊 480円
さて、アニエスである。
先に取り上げたマルグリットは、あくまでマリーのミラーとして作者に彫琢された
存在だったが、アニエスは革命と言うものをどのように捉えるべきか、という
作者の思いを盛り込むために彫琢された存在である(と僕は思っている)。
アニエスも本書の初期から登場し、始めは修道女として、次に女工として、
最後に殺人者としてこの物語の縦糸を織り成していく。 . . . 本文を読む
新潮文庫 1985年刊 480円
下巻を、先日漸く読了。
途中、大分と違う本に手を出してしまっていたため、すっかりと遅くなって
しまった。
上巻のレビュー時にも書いたが、本書では、作者の織り成す虚実の糸をその
語り口に織り込むことで、作者の主張をより明確に浮き彫りにする、という
オーソドックスな方法を採用している。
#もっとも、事実だけであれば、それはルポルタージュになってしまうが。
その代 . . . 本文を読む
清水馨八郎著 祥伝社 平成12年7月21日初版刊行 1600円(税別)
この本は、もうかなり前に復活書房で入手(300円)したものの、そのまま
積読になっていたもの。
今回、チベット問題をきっかけに、過去に読んだ本のレビューコラムを書く
ついでに、本書を手にとってみた。
あまり本腰を入れて読めていない(=斜め読み)だが、おおむね著者の主張は
理解した、と思う。
考え方としては、特に目新しい . . . 本文を読む
杉本信行著 PHP研究所 2006年 1700円(税別)
チベット騒乱をきっかけにして、中国とチベット、あるいは中国自身の拡張政策を
見据えた書物を、書庫から引っ張り出して何冊か紹介してきた。
今日は、少し視点を変えて、現代中国国家がどのように形成されていき、なぜ
このようなベクトルを有するようになったのか、という疑問について、一つの
解を提示してくれる書物を紹介したい。
本書の著者は、昭 . . . 本文を読む
平松茂雄著 講談社インターナショナル 2006年 1600円(税別)
昨日のコラムを書いている中で、春暁ガス田について気になったことがあり、
別立てで論じたい。
春暁ガス田は東シナ海にあり、日中両国による大陸棚の権益を巡る争いの
正に真っ只中に存在する。
少し南下すると、尖閣諸島があり、こちらは日本・中国・台湾の三国が
領有権を主張している(今のところは日本が実効支配しているが、中国の
活動 . . . 本文を読む
平松茂雄著 講談社インターナショナル 2006年 1600円(税別)
チベット情勢は、一見膠着状態に陥ったかに見える。
しかし、この状態が、カオスの上に薄皮を一枚張っただけであることは
自明であろう。
いまだ、ラサその他の地区で何が起こっているのかを正確に知る術は、
少なくとも諸外国には無い。
情報発信源が、中国国営放送である新華社と、チベットのインド亡命政府
からのほぼ二元のみに集約されて . . . 本文を読む
早坂隆著 中公新書ラクレ 2006年 760円(税別)
以前、本書が発売されたときに、羽田空港にある書店の店頭に平積みされて
いたのを覚えている。
手に取り、ぱらぱらと眺めて面白いな、とは思ったが、ネットでも同種の奴は
あるのでは、と思い、そのときは購入しなかった。
なお、帰宅後に検索すると、案の定ネットでのジョーク集も存在しており、
これがなかなかに面白かった。
で、本書は敢えて買うまで . . . 本文を読む
相馬勝著 小学館 2002年 1400円(税別)
チベットを巡る動きが、更に混迷を深めている。
既に諸国が事態に対する憂慮の念を(控えめながらも)プレスしている中、
中国当局による<寛大かつ法に基づいた>公平な措置を取るからデモ参加者は
出頭しろ、との18日午前0時(日本時間同午前1時)の期限が迫るにつれ、
張り詰めた糸が今にも切れんばかりの様相を呈している。
今晩から明日にかけて、どのよう . . . 本文を読む
フィリップ・ブルサール/ダニエル・ラン共著 今枝由郎訳 トランスビュー 2002年 2000円(税別)
カバーには、表題の「囚われのチベットの少女」が、白舟極太隷書体(?)による
大き目のポイントで、三段組で書かれている。
その間にひっそりと、一人の少女の立ち写真がデザインされている。
いつ、どこで撮影されたものなのかを示す情報は、全く無い。
が、少女が11歳で投獄され、25歳まで囚われの . . . 本文を読む
マイケル・ダナム著 山際素男訳 講談社インターナショナル 2006年 1800円(税別)
正に今、リアルタイムでチベットで起こっている騒乱。
日本のメディアでこれだけ大きく取り上げられる位なので、相当に大規模な
ものになっているのだろう。
ネットでも、新華社の死者10人という発表に対し、そんなもので済んでいる
筈が無いという趣旨の発言が多く出ていたが、果たして今日の毎日新聞 夕刊では
死者80 . . . 本文を読む