活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

大宇宙の墓場

2009-04-16 01:01:18 | 活字の海(読了編)




著者:アンドレ・ノートン ハヤカワSF文庫刊(1972年初版)
訳者:小隅 黎


数日前に、「手紙屋」の書評を書いた。

就職活動に悩める大学生が主人公の作品だが、それに触発された訳でも
ないが、ふと、アンドレ・ノートン女史の「大宇宙の墓場」を読みたくなった。

この作品は、デイン・ソーソンという若い宇宙船乗りが主人公のSF
太陽の女王号シリーズの第1作であり、目下累計1700巻を超える
ハヤカワSF文庫の中でも、二ケタ台に出版された(正確にはNo.56。
日本では1972年に刊行)、とても由緒正しいSFである。

松本零士のイラストも、いい味を出している。
既にこの本の挿絵に、コスモゼロも戦士の銃も出ているぢゃないか(笑)。


この物語は、デインが学校を卒業後、初めて社会に出るところで幕を
開ける。

本書の世界では、卒業時の様々な情報(成績や性格、履歴その他)が
詰め込まれたカードを、ある機械に入れることで、自動的に就職する
会社(というか、宇宙船)が決定する。

どんな船に乗り込むことになるのかと、押しつぶされそうな不安と、
それでも若さゆえ首をもたげる期待と、仲間に対する意地やプライド。

揺れる主人公の思いを見事に描写した冒頭のシーンを、「手紙屋」で
やはり就職に悩む若者を読んで、つい思い出してしまったのかもしれない。

書庫に潜り込んで、本を探す。

数年前に一念発起して、全ての(あ、いや、正確には概ねの)本を
きちんと整理し、分類し、並べ替えたおかげで、割とスムーズに発見。

ベッドに腰を下ろして、しばし読み耽り、遥か昔に旅をした宇宙へ、
再び心を飛ばすことが出来た…。


読みながら、ふと思い出したこと。訳者あとがきで語られていたのだが、
このシリーズには続編がある、ということ。

日本では、やはりハヤカワSF文庫に2巻までが収録されているが、
その後の巻の邦訳は出ていないはずだが…。

そもそも、本国では何巻まで出ているのだろう?

そんなことが疑問に思えて、ネットで検索してみると…。

なんと。
2005年に、アンドレ・ノートン女史が他界していたことを発見。

思わず、目を閉じてしまった。


好きな作家の訃報というのは、本当に悲しいものだ。

アンドレ・ノートンは多作家の方だが、不幸にして日本で翻訳され、
出版されているものは10指に満たない。

これから先、僕はまだ読んでいない太陽の女王号シリーズの
運命を、知る機会があるのだろうか?

いやいや、それよりも何よりも、女史のご冥福をお祈りしよう。

数々の作品群を生み出してくれた女史。

日本での翻訳こそ少ないながら、あなたが、遥か40年も前に
書いた作品に、今もこうして心を寄せる読者も極東の片隅に
います。

それこそが、貴方の偉大さの証です。

貴方が産み落とした作品群は、こうして時代を経ても尚、
読んだ人の心の中で、生き続けていくことでしょう。

いつか、勇気と自信とテンションの波がうまく重なりあえば、
アメリカ本国のamazonで、未訳の続巻を手に入れてみたい。

それが、僕の夢です。

そして、デインの上司のヴァン・ライクのような、味のある
人間になりたいと、願っています。

いつか、僕がそちらの世界に行ったときには。
言葉の壁も無くなった世界で、太陽の女王号と彼らにまつわる
お話をさせてください。

それでは、そのときまで、お元気でいてください。





大宇宙の墓場 (ハヤカワ文庫 SF 56 太陽の女王号シリーズ 1)
アンドレ・ノートン
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恐怖の疫病宇宙船 (ハヤカワ文庫 SF 89太陽の女王号シリーズ 2)
アンドレ・ノートン
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2 コメント

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女王号その後 (通りすがり)
2009-04-26 12:54:05
「太陽の女王号」シリーズは全7巻です。
詳細は以下に↓
http://www.geocities.jp/color_kakera12/brown.html
返信する
ありがとうございます (MOLTA)
2009-04-26 22:05:43
ご紹介されたHP、拝見しました。
こういう話の流れだったんですね!
作者の方は、きちんとアメリカamazonへの当該本へのリンクも張ってくれていて、ペイパーバックだと数$で買えることも分かりました。

まだ手に入るうちに買っておこうか、それとも無謀な試みと諦めるべきか…。

しばし、悩んでみます(笑)。

#でも、海外送料ってどうなるのかなぁ?
返信する

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