活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

1/4の奇跡―もう一つの、本当のこと

2009-08-31 00:53:46 | 活字の海(読了編)
著者:入江 富美子 三五館刊 定価1500円(税別)
2007年12月12日 初版刊行(入手版も同じ)

帯コピー:「宇宙に”感謝”の量を増やす映画をつくるんや!」
      大阪のミラクルお母ちゃんたちのつくった映画が、
      日本中で大人たちを泣かせている!


先日、ふとしたきっかけで観た映画。
「1/4の奇跡~本当のことだから~」

本書は、その監督である入江氏の書き下ろした、映画の製作秘話である。
映画の感想は、こちらから。

氏が。
そもそも、どのようなトラウマを抱えていたのか。
そして、それをどのように克服し、あるいは付き合い方を覚えていき。
その末に、どのような思いを秘めてこの映画を作ろうと思ったのか。
その製作過程では、どんなドラマがあったのか。

そうした顛末が、氏の一人称で語られる。

#映画の共同制作者である岩崎靖子氏も、いくつかの章を執筆している。


この映画を作ろうと氏が思いついたとき。
氏は、映画監督は元より、映画製作の経験も無く、必要な資材も無く、
知識すら無くと、無い無い尽くしの状態だった。

そんな中で、どうして氏が映画を作ろうと思い至ったのかについては、
正直人智を超えた発想、としか言いようが無い。

厳しい言い方をすれば、無知故の怖いもの知らず以外の何ものでも無い。


それでも。
この映画は、未来にもう完成している。それを取って来るだけ。
そう親しい友人に言い切ることの出来た氏を、素直に凄い!と思う。


人は、なにかを為すときに、普通はその実現に向けたプロセスを検討
するだろう。

まして。
それが、一人で出来るような小説の執筆とかではなく、映画なのだ。

どれくらいの資金が必要なのか。
脚本はどうするのか。
撮影に必要なカメラ、編集機器を始めとする資材は?
誰に登場し、何を語ってもらうのか。
そも。
自分は、その作品を通じて何を語りたいのか…。


映画を作りたいという天啓(これ以外に、表現できる言葉が見当たら
ない!)が氏に下りてきたときに。

上記の中で、氏にあったのは、最後の語りたいこと、だけであった。


普通なら、そのプロセスを考えたとき。
その障壁の多さにゲンナリし、夢は所詮夢として、静かにお蔵入り
させるだろう。

前向きなモチベーションでい続けたとしても。
地に足を着けた実現解を求めるために、普通の感覚なら資金調達に
走るか、あるいはシナリオの執筆に入るか。といった作業に入る
ことが、まあ妥当なところではないか。


ところが。
氏は、とにかく撮りたい。いい映画を作りたい。
その一心で、行動を開始する。

その行動の最初にあったのが、コーチング業を行いながら、自主映画を
製作している岩崎靖子氏への決意表明にも似たメールだったことは、
なんと幸運だったことだろう。


その岩崎氏にしても。
自主制作グループであるE・Eプロジェクトの主催者ではあるが、
そのプロジェクトではまだ作品を1本撮っただけ。

もう一人のメンバーである小野敬広氏を入れて、三人で映画製作の
打ち合わせを行った際にも、「お金が無いから、一人毎月1万ずつ貯金
していこう」なんて会話が交わされていたという。


それでも。
氏の凄いところは、その状態で山元氏と連絡を取り、是非映画を撮影
させてほしいという話しを始めてしまうところだ。

別に、氏は世間知らずという訳でもない。

社会人として、あるいは経営者としての経験を積み重ね、更には
3児の母として子育ても実践してきた女性である。

その氏をして、ここまで後先考えずに(失礼!)行動に駆り立てた
ものは、一体なんだったのか。

正直、それは今もって判らない。

氏自身も本書で明らかにしているとおり。
氏と山元氏との接点は、その時点では決して濃密とは言い難いレベルに
過ぎなかった訳だから。
#山元氏の著書すら読んでいなかったと、氏自身が述懐している。


だが。
氏自身が幼少の頃から抱えてきた心の傷。
早逝した父親の死因への贖罪意識。
母親に対する愛情の飢餓感。
更には、母親となってからは、子供のアトピーに対する胸を掻き毟られる
ような思い。
(この辺りの記述は、やはり子供の親として読んでいて胸が痛かった)

そうした様々な思いが重層を織り成す氏の心の中で。
山元氏の発した、人はありのままでいい。そんなメッセージが静かに
共鳴していった結果、この映画への一見説明のつかないモチベーションの
原動力が生まれたのではないか。

そう、思われる。


でも、まあ。
そんな理由付けは、どうでもいい。

監督にとって、大切なことは作品で語るべき。
作品をこそみて、評価をして欲しい。

氏だって。そう思っているはず。


なので。
機会があれば、是非。

この映画を、様々な人に観て欲しい。そう願う。

この映画の主張を受け入れ、共感するにせよ。反発するにせよ。
まず、自分の目で見ないことには、始まらないと思うから。


そして、もし気に入ってもらえたなら。
この本にも、目を通して欲しい。

そして、家庭用のホームビデオでの撮影から始まったこの映画が、
どのような奇跡を経て、世に生み出されたのかを追体験してほしい。


正に、「もう一つ」の奇跡が、そこにはある。


(この稿、了)



1/4の奇跡―もう一つの、本当のこと
入江 富美子
三五館

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この本の中で紹介されている、笹田雪絵さんの詩の数々。
その透徹した意思の美しさが、僕の心にゆっくりと染み込んでくる。
なぜ、少女がこれほどまでの境地に達することが出来たのか。
そう、思わずにはいられない。
本当のことだから―“いつかのいい日のため”の宇宙の秘密
山元 加津子
三五館

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