甲斐の山中に立ち寄りて
行く駒の麦に慰むやどりかな 芭 蕉
どこかへ行く途中の馬を眺めている、ととるより、甲斐の山家に立ち寄って、自分がつないだ馬を見ているさま、ととった方がずっと面白い。
旅中属目(しょくもく)の句で、人を描かず馬を描いて、しかもおのずから人の旅情を表し得ている。馬が麦畑のあたりで、疲れた身を憩わせつつ麦を食いちぎるさまに、芭蕉の心も、おのずと和んできたのであろう。
「行く駒」は、旅行く駒の意。
「麦に慰む」は、飼葉(かいば)として麦を与えられたのだ、とも考えられるが、上記のように解した方が俳諧らしいと思う。
前書からすると、「やどり」の主人のもてなしに対する挨拶の意をこめた句と思われる。おそらく木曾を経て甲州路に入ったのであろう。
貞享二年四月、『野ざらし紀行』の旅の帰途の作。
季語は「麦」で夏。
「甲斐の山家に身を休めていると、自分の乗ってきた馬も、麦畑のあたりにつながれて、
麦の穂を食いちぎっては、しばし慰んでいることよ」
昨日に引き続き、今日も午前中、町会費を集めに廻る。
あるお宅での出来事。息子の嫁さんが出てきて、五千円札を差し出した。町会費は年間3600円なので、釣り銭1400円の中、先ず千円札を一枚手渡し、残りの400円のため、百円玉を数え始めた。すると彼女、素早く千円札を財布にしまった。先に手渡した千円札は、そのまま手にしているのがふつうなので、イヤな感じがした。
案の定、400円を渡したところ、「あと千円……」という。
「はじめに千円札をお渡ししたでしょ」
「いや、もらっていません。千円ください」
「さっき、財布に入れましたよ」
「入れていません。早く千円ください」
こういう人と押し問答をしても、らちがあかないので、また千円札を一枚渡す、「ああ、やられてしまった」と思いながら。
集金後、やはり千円不足していた。自分の責任なので、ポケットマネーから千円穴埋めしたのは、もちろんである。
近所にこういう人がいるとは、と思うと気が滅入ってしまう。
昼食後、厄払い?のため、三社祭へでかける。
三社祭は、浅草神社(三社権現)の祭で、昔から、江戸三大祭の一つとして親しまれている。有名な〈一寸八分〉の浅草観音さまを、漁の網にかけたという檜前(ひのくま)浜成・竹成兄弟と、土師真中知(はじのまつち)という三人を祀る。
キレイどころの手古舞・木遣り・びんざさら舞を名物とする、派手な江戸っ子好みのお祭りである。今は、五月の第三日曜日が‘宮入’であるが、昔は、真夏に行なった。
三社祭 女人の肌のむんむんと 季 己
行く駒の麦に慰むやどりかな 芭 蕉
どこかへ行く途中の馬を眺めている、ととるより、甲斐の山家に立ち寄って、自分がつないだ馬を見ているさま、ととった方がずっと面白い。
旅中属目(しょくもく)の句で、人を描かず馬を描いて、しかもおのずから人の旅情を表し得ている。馬が麦畑のあたりで、疲れた身を憩わせつつ麦を食いちぎるさまに、芭蕉の心も、おのずと和んできたのであろう。
「行く駒」は、旅行く駒の意。
「麦に慰む」は、飼葉(かいば)として麦を与えられたのだ、とも考えられるが、上記のように解した方が俳諧らしいと思う。
前書からすると、「やどり」の主人のもてなしに対する挨拶の意をこめた句と思われる。おそらく木曾を経て甲州路に入ったのであろう。
貞享二年四月、『野ざらし紀行』の旅の帰途の作。
季語は「麦」で夏。
「甲斐の山家に身を休めていると、自分の乗ってきた馬も、麦畑のあたりにつながれて、
麦の穂を食いちぎっては、しばし慰んでいることよ」
昨日に引き続き、今日も午前中、町会費を集めに廻る。
あるお宅での出来事。息子の嫁さんが出てきて、五千円札を差し出した。町会費は年間3600円なので、釣り銭1400円の中、先ず千円札を一枚手渡し、残りの400円のため、百円玉を数え始めた。すると彼女、素早く千円札を財布にしまった。先に手渡した千円札は、そのまま手にしているのがふつうなので、イヤな感じがした。
案の定、400円を渡したところ、「あと千円……」という。
「はじめに千円札をお渡ししたでしょ」
「いや、もらっていません。千円ください」
「さっき、財布に入れましたよ」
「入れていません。早く千円ください」
こういう人と押し問答をしても、らちがあかないので、また千円札を一枚渡す、「ああ、やられてしまった」と思いながら。
集金後、やはり千円不足していた。自分の責任なので、ポケットマネーから千円穴埋めしたのは、もちろんである。
近所にこういう人がいるとは、と思うと気が滅入ってしまう。
昼食後、厄払い?のため、三社祭へでかける。
三社祭は、浅草神社(三社権現)の祭で、昔から、江戸三大祭の一つとして親しまれている。有名な〈一寸八分〉の浅草観音さまを、漁の網にかけたという檜前(ひのくま)浜成・竹成兄弟と、土師真中知(はじのまつち)という三人を祀る。
キレイどころの手古舞・木遣り・びんざさら舞を名物とする、派手な江戸っ子好みのお祭りである。今は、五月の第三日曜日が‘宮入’であるが、昔は、真夏に行なった。
三社祭 女人の肌のむんむんと 季 己