壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

厳美の桜

2010年05月09日 22時55分38秒 | Weblog
 毎日、当ブログを注意深くお読みいただいている方はおわかりと思いますが、ゴールデンウイーク中の3日と4日の二日間、岩手県・一関に桜狩りに行って参りました。
 「画廊宮坂」さんを通じて意気投合した、一関の阿部さんから、
 「今年の桜は、20年に一度というくらい見事なので、よかったらお花見にきませんか」
 と、お誘いを受けたからです。
 ブログのupを休まないために、5月2日に2本のブログを書き、後の1本を日付の変わった3日に投稿してから床についたという次第。

 上野駅発8:22の東北新幹線「はやて5号」に乗車、一ノ関駅に10:55に到着。改札口には、阿部さんの笑顔のお迎え。阿部さん運転の車で、ご自宅のある厳美渓へ。
 途中、一関市博物館で、一関のあゆみ・玄沢と蘭学・文彦と言海・一関と和算・舞草刀と刀剣を見、ついで、史跡・骨寺村(ほねでらむら)荘園遺跡と一関本寺(ほんでら)の農村景観を案内していただきました。

 阿部さん宅でおいしい紅茶をいただきながら、応接室の大きな窓から見る、厳美渓の桜のボリュームと美しさは、筆舌には尽くせません。なるほど「20年に一度の見事な桜」と感嘆しました。
 大きな窓は額縁となり、一幅の生きた桜の名画を生み出す。N・C画伯の描く桜など問題にならないほどの美しさ。末期の桜と思い、じっくりと堪能させていただきました。
      窓越しの厳美のさくら末期とも     季 己
 このあと阿部さんのコレクションを拝見し、旦那様を交えて、しばしの芸術談義。
 夕食にごちそうになった、一関名物・ふじせいもち膳のおいしかったこと。まさに感動ものです。

 ベリーノホテル一関で目を覚ました翌4日は、朝食のバイキングいただき、地元紙を読んでいたところに、阿部さんが車で迎えに来てくださいました。
 知り合いの方がいらっしゃるという達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)へ。ここは、俳人の加藤楸邨が、少年時代に好んでよく来たところだそうです。
 毘沙門堂・岩面大佛・弁天堂・不動堂・金堂と案内していただく。ここの案内書には、それぞれのお堂ご本尊の御真言が書き添えられているのが親切で、ご住職の熱意がひしひしと感じられました。
      萱葺きの萱音しだれざくらかな     季 己

 中尊寺の桜は満開でしたが、この日の暖かさとほどよい風に、着いて間もなく散り始めました。中尊寺境内の桜はどこもかしこも見事でしたが、高館跡の桜がもっとも印象的でした。
 西行法師が、
        聞きもせず 束稲山の 桜花
          吉野のほかに かかるべしとは
 と歌に詠んだ束稲山(たばしねやま)は、霞の中に横たわり、夢のような景観。
      西行のおもひ たばしね霞みをり     季 己
 花吹雪の中、野外能楽堂でしばらく能(「祝詞」・「若女」・「老女」)を拝観。毛越寺へ。

 毛越寺は、「モウツウジ」と読みます。ふつう、「越」という字を「ツウ」とは読みません。「越」は慣用音で「オツ」と読みます。したがって「モウオツジ」が「モウツジ」になり、更に「モウツウジ」に変化したものだそうです。
 毛越寺といえば、浄土庭園がなんといっても有名です。この浄土庭園は、四囲の借景と相まって、八百年を経た今日、変わらぬ美しさを見せ、平安時代の作庭様式を残す日本最古の庭園として知られています。
 毛越寺はまた、浄土の世界を現世に表現した、花の寺でもあります。梅・ツツジ・あやめ・蓮・おみなえし・萩・かえで・桔梗など、四季折々の風情が楽しめるそうです。
 そう言えば、一関・平泉は、このゴールデンウイークに、梅・水仙・桃・桜・チューリップ・芝桜・山吹などが、いっせいに花開いたそうです。こんなことは本当に珍しいそうです。

 厳美渓から車で一時間ほどの宮城県・花山にある、某蕎麦処でいただいた蕎麦のフルコースのおいしかったこと。生涯忘れられないほどの‘うまさ’でした。また、花山ダム湖の周囲の、桜の豪華さに圧倒されました。
 阿部さんご夫婦のお心づくし、どんなに感謝しても感謝しきれません。ありがとうございました。
 一関発20:22発の「やまびこ68号」に乗車、帰宅したのは23時30分過ぎ。即、パソコンに向かい、4日のブログをUP、滑り込みセーフとなった次第です。


      生涯の桜狩かな厳美渓     季 己