壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

風薫る

2010年05月06日 00時17分26秒 | Weblog
          小倉ノ山院
        松杉をほめてや風の薫る音     芭 蕉

 浮わついたところがなく、あっさりとした感興であるが、擬人法による発想が、句を浅いものにした点は否定できない。

 「松杉」については、古くから藤原定家の、
        「頼むかな その名も知らぬ 深山木に
           知る人得たる 松と杉とを」(拾遺愚草)
 を引く。
 「ほめてや」は、風を擬人化した表現。「や」は疑問。
 「小倉ノ山院」は、京都・嵯峨野、小倉山の常寂光寺。藤原定家の小倉山荘の跡だと伝えられ、庭に定家の詠じたという老松もある。

 季語は「風薫る」(薫風)で夏。実際、松や杉の匂い出るような使い方であるが、擬人法が句を弱めている。

    「常寂光寺の定家卿ゆかりの松や杉の蒼々(あおあお)とした色をほめてであろうか、
     薫風が松杉にあたって涼しげな音を立てているよ」


      住職にひそみたる稚気 風薫る     季 己