壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

夏衣

2010年05月28日 22時30分07秒 | Weblog
          卯月の末、庵に旅の疲れをはらすほどに
        夏衣いまだ虱を取り尽くさず     芭 蕉

 大きな旅を終えて、芭蕉庵に身を休めた安らぎの気分が出ている。
 『野ざらし紀行』の最初の句、「野ざらしを心に風の沁む身かな」に相対して、ホッとした思いが、芭蕉の心をひたしていることが感じられる。決意によって立ち向かった旅を、今やなしおえて、次に向かっていまだ動かざる姿である。
 貞享二年(1685)旅を終えて深川の庵(いおり)に帰ったときの作。

 「卯月(うづき)」は陰暦四月。十二支の卯の月、また、苗植え月(なえうえづき)の転ともいわれる。「卯の花月」ともいう。
 「はらす」は、「払いのける」・「心をせいせいさせる」の意だが、ここでは、(疲れが)「まだとれない」の意。
 「夏衣」は、夏に着る単衣(ひとえもの)のこと。
 「虱を取り尽くさず」は、旅衣のままで、旅中負った虱も、まだとりきっていない、というのである。旅の疲れのまま、日を送っている気持を述べたものである。
 「夏衣」というあらたまった言い方に、古来中国で、隠逸(いんいつ=世俗を逃れ、隠れ棲んでいる人)につきものとなっている虱を出すことで、俳諧味を効かせたものと思う。
 「夏衣」が季語。

    「旅を終えてわが庵に帰って来たが、旅疲れのままに、旅中着ていた夏衣もそのまま、
     虱もまだ取り尽くすまでに至らず、もの憂い日を過ごしている」


 抗ガン剤投与のため駒込病院へ行き、血液・尿検査を受けた。その結果、白血球の“NYU数”が、これまでの最低値750で、本日の抗ガン剤投与は中止となった。この数値が1500以下の場合、投与は中止となる。ちなみに、前回は2470であった。
 前回から受け始めた「ゼリリ+ベバシズマブ療法」は、白血球数を減らすとは聞いていたが、こんなに急激に減るとは思わなかった。
 副作用も、以前10回受けた療法とはかなり違う。
 例えば、脱毛。ただでさえ少ない髪の毛が、ごっそり抜け落ちるのだ。髪の毛をちょっと引いただけで、ねこそぎ抜けてしまう。まるで田植えの際の苗束のように。
 また、指先の指紋部分が、常にビリビリの軽いしびれ状態。
 その他、しゃっくりが出ると4~5日続いたり、膨満感で食欲が落ちたり、下痢気味になったりと……。
 癌をやっつけるためには仕方がないのだろうが、身体の健全な部分が、蝕(むしば)まれてゆくような気がしてならない。
 投与と投与の間の期間をもう少しあけてもらうなど、自分の身体の調子を考え、自分でコントロールすることが大事だと思う。

      息抜きの画廊に逢ひし夏衣     季 己