壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

矢車菊

2008年05月14日 21時38分29秒 | Weblog
 「お変わりありませんか。矢車草と思っていたら、矢車菊が正しかったです」というメッセージを添えて、優雅な矢車菊の絵手紙が届いた。
 日本画家の菅田先生からだ。藍・紫・淡紅の花、三輪と固い蕾それに開きかけた蕾と、いたれりつくせりだ。
 変人は、花の絵を買う場合、蕾がないと絶対に買わない。先生は、それを知っていたのだろうか。いずれにしろ、非常にうれしい。感謝!

 五月の、端午の節句の鯉のぼりには、黄金色に光る矢車がカラカラと廻っていた。ちょうどその頃、公園の花壇には、青・藍・紫・赤・淡紅と、色々な矢車菊が咲き乱れる。
 眼もあやな華やかさ、触れなば落ちん悩ましさ、あるいは、神々しいまでの気高さといった魅力を、この花に期待することはできない。
 けれども、矢車菊の控えめな懐かしさ、堅実ないじらしさというものは、また、格別だ。

 矢車菊は、ヨーロッパ東南部の原産で、日本には、江戸末期か明治の初めごろに入ってきた。花が、鯉のぼりの矢車に似ていたので、その名がついたという。
 矢車菊が、ドイツの国花になっていたとは、ナルホドと感じさせることである。
 ちなみに、矢車菊の花言葉には、次のような意味があるそうだ。
  「幸運・幸福・教育・信頼・デリカシー・優雅・繊細・独身生活・感謝」

 菅田先生も書かれていたように、われわれは、ふつう、この花を矢車草と呼んでいるが、矢車草というのは、深山に自生するユキノシタ科の植物で、矢車菊とは全く別種の、目立った花も咲かない野草である。
 矢車菊は、キク科の一年草で、古代エジプトのツタンカーメン王の墓からも発見された、由緒ある?花なのである。
 古代エジプトでは、青い花が魔除けとされ、王のミイラの胸のところに飾られたのだ。
 ドライフラワーにしてもきれいに発色するので、飾ってみてはいかが。青はまた、「冷静な判断力アップ」につながるともいわれているので。

 ところで、矢車菊の学名「ケンタウレア・キアーヌス」というのは、ギリシャ神話に出てくる「半人半馬」の怪物「ケンタウルス」からきたものという。
 これは、ケンタウルス族のケイロンが、足の傷をこの花で治したという伝説からきていると思われる。
 矢車菊の花の浸出液には、傷口や粘膜の血管組織を引きしめる効果があり、マウスウオッシュとして口内炎の改善をはかったり、軽い切り傷につけたりする。

 「教育・信頼・感謝・独身生活」の変人には、矢車菊がよく似合う。


      独り身に矢車菊の青まぶし     季 己