こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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死ぬまで親は親です。

2012-11-17 23:40:27 | 訪問看護、緩和ケア
いくつになっても、「死ぬまで親は親なんだなぁー」と思います。

言葉には出さなくても、ずっと関わっているとなんとなくそうなんだろうなー・・と思うことがあります。

憶測でものを言わない。
勝手に思い込まない。

っていうのは、重々承知の上で言いますが、やっぱり自分も親だから、そうなんじゃないかなーと思ってしまうのです。

回りくどくなってしまいました。

数年前に、娘さんの家に同居することになったAさん。

脳梗塞で半身麻痺はありましたが、それでも家の中は伝って歩いていましたし、不自由ながら言葉も話すことができていました。

お母さんを自分のもとに連れて来ることができて、娘さんは本当に喜んで、一生懸命介護をされてました。
娘さんのご主人も、とてもとてもお義母さんを大切にしてくれました。

でも、ひと月もしないうちに、お母さんの様子は一転して、脱水や発熱を繰り返し、肺炎も併発して入院を余儀なくされました。
娘さんは、お母さんを手元から病院に託すことが辛くて、毎日朝から時間ぎりぎりまで付き添いました。

そんな入院を2度ほど繰り返すたびに弱っていくお母さんを、娘さんはもう入院はさせずに、最後まで家で看る事にしました。

何度も話し合いをして、娘さんの意思に沿ってくれる主治医に変え、献身的な介護生活が再開しました。

その姿は、ストイックと言えるもので、具合が悪いときはずっと添い寝で過ごすほどでした。
周りから見ていて、さぞや大変だろうなぁ・・というかんじでしたが、その実娘さんは、介護を辛いとは思わないといいました。

学生さんが「介護で一番大変なことはなんですか?」と聞いたら「??言っている意味が分かりません。介護を辛いと思ったことは一度もないですよ、母を介護することは、私の喜びなんです。」そう言って学生さんをびっくりさせました。

身体の清拭や更衣は、絶対に娘さんがご自分でされましたし、口腔ケアもお部屋の環境調整も完ぺきでした。

でもやはり、お母さんは時々病状が悪化して、死の淵をさまようことが何度もありました。
その都度、娘さんはパニックになり、お母さんの名前を呼び、頬ずりをし、在宅でできることのすべてを望み、不眠不休でフラフラになっても、お母さんのそばを離れませんでした。

そしてしばしの穏やかな時間には、本当に幸せそうに過ごされていたのです。

そんな風に、決してお母さんとの別れを認めたくない受け入れたくない娘さんの心境が、最近少しずつ変わってきたのです。

お母さんが、今までどれほど頑張ってきたのか、もうこれ以上頑張らせることが、本当は酷なんじゃないかという風に考えるようになったのです。

何度も何度も危篤状態になっても、娘を思えばきっと逝くことが出来なかったのだと思うのです。
もう、頑張るのはしんどいけれど、今はまだこの子を置いて逝くのは、後が心配・・・
そんな風に思ったのでしょうか。

何度も、娘さんの呼び戻す声に答えて戻ってきてくれました。

最近の衰弱は今までになく、もうぎりぎりのところなのだと思います。

いま、自分のために頑張ってきたお母さんを、やっと静かに見送る気持ちになってきた娘さん。

いくつになっても、親は親です。

今、やっと冷静に母の老いや死を受け入れられるようになった娘さんを見て、きっとほっとしているのではないでしょうか。

金曜日の月例カンファでも、みんな思うところは同じでした。

長い時間がかかりましたが、これからは静かに、残された命の炎を見届けることができるのでしょうね。

いくつになっても、親は親です。
なんだか、お母さんの親心を感じずにはいられませんでした。