滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

ドイツの電力マイナス価格についての記事を読んで

2010-01-21 17:29:14 | 再生可能エネルギー

すっかりご無沙汰しています。

先週まで、連日のマイナス気温と霧、雪にもめげずに木質バイオマスと省エネ建築の視察に日本から来られた方々を、案内していました。そんな季節だからこそ、パッシブハウスやミネルギー・P建築の快適性やエネルギー性能を説得力をもって感じることができました。

  

それで久々に家に戻り、久々にスイスの環境NPO「スイスエネルギー基金」のHP(http://www.energiestiftung.ch/)を見ますと、昨年末にドイツで電力が供給過剰により、マイナス価格になった「事件」の記事リンクを見つけました。ドイツのジャーナリスト村上敦さんのブログにはもうずっと前にその事件について的を射た解説をされています。

http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/

  

とはいえ、スイスに住む一般人として、とても気になったので、かなり遅ればせながら私の読んだ記事を紹介します。新聞「Zeit Online」の1230日付けの記事(http://www.zeit.de/2010/01/Kommentar-Stromで、タイトルは「調整の利かない過剰生産により電力市場の価格をゼロ以下に押し下げる」で、内容は要約すると下記の通り:

 

 

「祝日122526日にかけての嵐により、ドイツでは夜212時にかけて、風力発電により100GWh(1億kWh)が発電、送電された。これは20基の原発をフル稼働する発電量に相当する。これによりライプツィガーエネルギー市場における電力価格がkWhあたりマイナス20セントへ。26日の日中になっても価格はマイナスが続いた。」

優先送電される風力が低需要時に大量に発電ししているのに、石炭や原子力の大型発電所がそれに応じて出力を調整できないことが問題です。

このことについてZeit誌は大手電力コンツェルンの間違った投資方針の責任を問います。要約すると、「大手電力会社はこれまであまりにも長い間、風力の快進を無視し続けてきた。風力の発電量の上下に合わせて調整できる賢い送電網(スマートグリッド)や蓄電体の充実への投資に力を入れず、調整の利かぬ原発の寿命延長や大型発電所の計画に現を抜かし続けてきた」、というもの。(賢い送電網の推進は企業の責任というより、国家的課題だと思いますが・・)

 

先進的な固定価格買取制度によって分散型の再生可能電力の供給が順調に増えているドイツ。このようなスイスから見ると羨ましい(?)事件は滅多に起こることではないとはいえ、風力や太陽光電力の増産と同じくらいのペースでのスマートグリッドによる多種電源の連携制御や、それに必用な蓄電設備や臨機応変に出力を変更できる分散型電源を充実させることの重要性を改めて実感しました。またその際に、スイスなどの揚水水力が蓄電装置としてどのような役割を中央ヨーロッパで担っていくのか興味のあるところです。

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