ホームレスは全てを失った人達だ。しかし、ひとつだけ失っていないものがある。それは記憶であり、その記憶のうちにかろうじて繋ぎ止められている人間の尊厳である。もちろんホームレスが駅や公園や図書館に集まるのも他に行く場所がないからだろうが、それだけではない。駅は彼らの故郷に繋がった場所であり、公園や図書館は希望や目的を持っていた頃の自分に繋がった場所である。現実にはその繋がりはすでに断たれているにせよ、記憶のうちでは繋がっているのである。この記憶への配慮なくしては、どんなホームレス対策も「人間の尊厳」を無視したものになるだろう。