「すべては脳から始まる」のか、それとも「すべてはラカンのおかげ」なのか。期待された茂木健一郎と斎藤環の往復書簡が開始された。最悪の事態もありうる対話である。斎藤は仲介者から「茂木さんOKです!」といきなり聞かされて、しょうしょう慌てたという。たしかにfairness(公平、公正)な茂木の決断には違いない。だが、そのあまりにもストレートな「OK」のうちに、いかほどの逡巡や葛藤があったというのだろうか。最近の茂木は何というか、自分を切っちゃってるというか、もう投げちゃってるようなところがある。もしかしたら茂木は斎藤に、自分を終わらせてくれ、楽にしてくれ、と望んでいるのかもしれない。受けて斎藤は、生まれてくる時代を間違った茂木を、モーツァルトやレオナルドの時代に孵してやるべきだろう。あるいはナイト・シャマランの映画『レディ・イン・ザ・ウォーター』のラスト・シーンのように。