SUPER FLAT 2

非ファルス的にもっこりするものを肯定せよ!(神の性的不器用あるいはその性的悪戯に由来するもの達について)

幸せな犬と人間

2008年09月14日 | Weblog
「静かな苦悩にひたされているという感覚」や「沈鬱で悲劇的なムード」について考えていたところ、WiredVisionに『「人間を善人にする薬物」:道徳心は薬で強化できるか』という記事が掲載された。この記事では最後に「人を思いやる気持ちを高める薬物があれば、みなさんは服用するだろうか?」と尋ねているが、現代社会に生きる私たちは、そんなこといまさら言われるまでもなく「記号的なレベル」では、そうした非倫理的な薬物をすでに大量に服用しているのである。「環境管理型権力はかなりの程度まで規律訓練型権力として働いている」ということを指摘する東浩紀氏は、また「萌え要素」の動きについて「じつはプロザックや向精神薬とあまり変わらない」と書いている(『動物化するポストモダン』139ページ)。ところでプロザックは人間だけでなく動物にも効くらしい。

>このごろの家庭は、夫も妻も外へ働きに出るのがふつうになって、一日中、家に「ひとり」で残される犬は、退屈で退屈で、ストレスがたまりにたまる。その結果、あたりかまわずなめまわす、自分の尻尾を千切れるくらいに噛みつづけたり執拗に追っかけまわしたりする、夜も昼もうなることをやめない、などの強迫性の症状が目立って多くなった。そこで、緑と白のカプセルのプロザックを、一日一錠与えたところ、人間の場合と同じように、3週間ぐらいしたらすっかりおとなしくなって、幸せな犬になるのだという。(「抗鬱薬をめぐる躁と鬱」より抜粋)

 なにしろ愛犬に処方されたプロザックを飼い主が横取りして服用しているというのだから事態は深刻だが、なにもここで「人間と動物は同じだ」などと言いたいわけではない。鬱から精神をプロテクト(守る)するプロザックは、製薬会社のプロダクト(製品)であり、プロテーズ(人工的な補足)された脆い媒体として、いつか何らかの理由により「供給停止」になるかもしれないのである。人間はそのことを暗に知っているが、「幸せな犬」には知る由も無いことである。

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