2010年10月
「もう潮時だな。俺はクラブのために身を引いた方がいい」
タルナートは携帯電話を取り出した。
クラブハウスの電話が鳴り、秘書の早坂美里が電話を取る。
「ヴァントさん、リュディガー・タルナート選手がお見えです。何やらお話があるようですよ」
美里の発した声の内容でヴァントは察した。タルナートは引退するつもりなのだと。
電話が来てから20分後、ヴァントとタルナートはオーナー室にいた。
「最近思うんですよ。そろそろ潮時かなって。すみませんが、今シーズンで引退しようと思います」
ヴァントは悩んだ。引き留めるべきかどうか。確かにタルナートはドイツ1部の戦いについていけてない。それでも精神的支柱としては欠かせない存在だ。そんな思いとは裏腹にタルナートの枠で新戦力を補いたいという気持ちもあったが、だからと言って、じゃあ、どうぞと言う訳にもいかない。そんなヴァントの心情を察したのか、タルナートは口を開いた。
「オーナー、私に気を遣わなくても大丈夫です。私の枠を新たな戦力のために使ってください」
「・・・そうか、分かった。それなら、来季からスタッフとしてクラブに残ってくれないか?」
タルナートは少し驚いたようでもあったが、すぐに気を取り直した。
「そうですね。今までクラブにはお世話になったし。私でよければ協力しますよ、これからもよろしくお願いします」
ヴァントはタルナートをユース監督かアシスタントコーチにしようと思った。寂しい気持ちではあるが、いつかは訪れることでもある。これは仕方ない。程無くして、またも招かざる客が来た。
「ちょっと失礼するぞ。最近は調子が良いらしいな」
エストデーラが順位批判に来たのだ。何やら長々と話していたようだが、ヴァントは聞いていなかった。勿論、顔では聞いているようには見せていたが。
今度はリーグ奪回に燃えて、かなりの補強をしてきたレバークーゼンとの対戦だ。ブレーメンからオヴォモエラ、ヒルデブラントを獲得し、マンシャフトのフリー移籍獲得の夢を潰したクラブである。違う意味でも負けられない。
レバークーゼンはバウアーをボランチでスタメンに出場させている。
スラマー「ほう、確かに彼ならボランチも超一流クラス。不思議ではない」
スルーパスからフリーになっていたイェレミースがエリア内に切り込んで老練なプレイで流し込みを決める。だが、レバークーゼンも黙ってはいない。攻められはしても、今のマンシャフト守備陣は強固と言ってもいいくらいに固かった。メッツェルダーの存在が大きく、彼のお陰だと言ってもいい。
しかし、前半アディショナルタイムにCKでピンチ。そこからアンドレイ・ヴォロニンにヘッドを決められ、マンシャフトの連続無失点試合は5でストップした。
後半立ち上がりからマンシャフトはCK2本でチャンスも生かせない。そして、バウアーを倒してフライスが2枚目のイエローカードで退場。これはマンシャフトにとっては相当な痛手だ。
スラマー(バウアーの奴、フライスが1枚もらっているのを知ってて、わざと倒れたな。まだ18歳なのに頭も切れる)
それでも、残った選手たちで頑張った。ヤン・バーデが長いスルーパスを出すと、これがユングニッケルに渡る。
「フライスの分も、ここは必ず決める!」
ユングニッケルのグラウンダーが決まり、マンシャフト再び1点リード。その後はレバークーゼンに攻められる場面もあるが、早めのプレスで選手たちがボールをカットできるようになっていた。
ヴァント(やはりスラマー監督は凄い。1人少なくても選手にどのようにサッカーをすれば良いかというのを浸透させている。あのレバークーゼンが戸惑っているぞ)
ドイツ1部リーグ第8節
レバークーゼン 1-2 マンシャフト
(得点) 18分 イェンス・イェレミース(マンシャフト)
45分 アンドレイ・ヴォロニン(レバークーゼン)
65分 ラルス・ユングニッケル(マンシャフト)
(警告) 34分 セバスティアン・フライス(マンシャフト)
56分 セバスティアン・フライス(マンシャフト)→退場
これで3年ぶり2度目のリーグ7連勝。
【基本情報】 来場者数 106722人
【収入】 勝利ボーナス 3000万
【合計】 3000万
【資本金】 70億302万6300円