5月も終盤に差し掛かった頃、ヴァントはスラマー監督とオーナー室にいた。
「スラマー監督も、やはりそうお思いですか?」
「と、言いますとオーナーもですね。そうです、レバークーゼンにいるバウアーという男。必ず将来のドイツサッカーを背負って立つ男となります。そこでお願いです。スカウトを向かわせて、バウアーの移籍金の相場を調べてもらってください。値段次第ですが、多少無理してでも獲りにいきましょう」
スラマー監督はバウアーを気にしているようで、ヴァントにそのことを伝えたが、ヴァントもまたスラマー監督と同じ考えだったようだ。
「私もそのための準備をしてきました。本来ならスタジアムを更に大きい規模にするつもりでしたが、それは彼を獲ってからでも良いと思って資金を貯めていたんです」
「それなら決まりですね。早速、スカウトを向かわせましょう」
「ああ、そうしよう」
ヴァントはスカウトのトーマス・キルステンにバウアーの移籍金調査を依頼した。
ドイツ1部リーグはと言うと、バイエルンが2年ぶりに優勝し、連覇を狙ったレバークーゼンは2位。優勝が目の前まで来ていたブレーメンが3位となった。
そして、レンタル移籍に出されていた選手が帰還する。第3GKでブレストから買い取りたいとまで言われたシュテファン・ヴェヒターはフランス2部に18試合出場。イングランド2部のウォルバーハンプトンに出されたロベルト・バスラーは14試合出場、スペイン2部のヘルクレスに出されたダニエル・ブリンクマンは16試合に出場し、3得点3アシストと活躍。
「それはそうとオーナー。会長との約束を破って最終節勝ってしまいましたが、大丈夫だったんですか?」
ヴァントは美里が喋ったんだなとすぐに分かった。全く、女の子ってすぐ喋るんだな、と思いながらもスラマー監督の方を見た。
「そのことでしたら、もし8位になってインターナショナルクラブカップに出ることになったとしても、御咎めは無かったと思いますよ、と美里君が言ってたよ。彼女が言うには、会長も実はわざと負けるのがお嫌いな人らしい。ただ、補正・・・でしたっけ。それが顕著に見えてくるようになったので、嫌気が差して対抗しようとしてたそうです。インターナショナルクラブカップに出ることになったら、私の言うようにヨーロピアンカップ優勝を目指せばいいとも仰っていたそうです」
「成程、補正ねぇ。まぁ、世界の調和を取るために必要なものなら、時には受け入れることも必要だからね。今のマンシャフトにヨーロピアンリーグは勿論、ヨーロピアンカップに出るに相応しい戦力かと言われれば・・・難しいでしょうね。インターナショナルクラブカップを勝ち抜いたエスパニョール、トゥエンテはグループリーグ敗退。アスレチック・ビルバオは3位で何とかグループリーグは突破したものの1回戦で敗れてますから」
「え?! あのビルバオですら1回戦で・・・」
ヴァントが驚くのも無理はない。ジェステ、ハビ・ゴンザレスなど優秀なスペインの選手が多く、マンシャフトが2戦して2回とも敗れた相手だ。そう考えたら、マンシャフトでヨーロピアンカップを優勝するつもりだと言っていた自分が少し恥ずかしくもある。もっとも、ヴァント自身もそれは分かってはいるのだ。だからと言って、やる前から気持ちで負けたくないのである。試合が終わって負けて、それで初めて負けを認めればいい。今まで、そう思ってきたし、それはこれからも変わらないだろう。もしかして会長も同じ考えなのかもしれないと思うと、少し嬉しくも思うヴァントだった。
【2010年5月収支報告】
【収入】 グッズ 1042万4000円
【支出】 選手人件費 1億6583万3333円
スタッフ人件費 7358万3333円
施設維持費 3130万
ユース維持費 458万5000円
広告費 2000万
【合計】 -2億8487万7666円
【資本金】 57億3544万2833円
【2010年5月収支報告】
【収入】 入場料 1億4016万
(チケット料) 1億4016万
賞金 8億6000万
(勝利ボーナス) 6000万
(順位賞金) 8億
施設関連利益 6067万4000円
(グッズ収入) 1042万4000円
(スタジアム関連収入) 5025万
【支出】 施設関連費 3130万
(施設維持費) 3130万
人件費 2億4400万1666円
(ユース維持費) 458万5000円
(選手月給) 1億6583万3333円
(監督月給) 3066万6666円
(コーチ月給) 2308万3333円
(ユース監督月給) 133万3333円
(スカウト月給) 1850万
宣伝広告費 2000万
その他支出 2425万
(試合運営費) 2425万
【合計】 7億4128万2333円