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1113 うるしの日

2012-11-13 00:09:23 | 雑記

うるしの日

香川県漆器工業協同組合と高松商工会議所が、地場産業のひとつ、日本の伝統工芸である「漆(うる

し)」の美しさを知ってもらおうと、1985年に制定した日。日付は京都嵐山法輪寺で生地師の祖とも

される惟喬(これたか)親王が漆や漆器の製法を祈願して成就したと伝えられる11月13日に因む。

 

漆(うるし)とは、ウルシ科のウルシノキ(漆の木)やブラックツリーから採取した樹液を加工した、ウル

オールを主成分とした天然樹脂塗料である。塗料として漆工芸に利用されるほか、接着剤として

も利用される。

漆の語源

「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれている。

「あたりまで あかるき漆 紅葉かな」と俳句に歌われているように漆の紅葉は「もみじ」に並んで美し

いものである。そしその漆塗りの深みのある色調・光沢は見る人を魅了する。

1.漆の起源と種類

漆の木の分布から見て、日本及び中国において漆塗りが発生進化したと考えられる。北海道の南茅

(かや)部町の垣の島B遺跡で約9千年前の縄文時代前期の漆器が発掘され、また漆の木のDNA

分析の結果、日本のウルシノキは日本固有種であることが確認され、このことから現在では漆器の起

源は日本であるという考えが一般的である。

現在中国最古の物は、長江河口にある河ボ渡遺跡から発掘された約7千年前の漆椀である。

陶器はchinaと言い、漆器を「japan」と言う国際用語までになり、漆器は現在日本を代表する文化の

ひとつであるが、漆器やウルシノキが、現在日本において何故少なくなったのであろうか。

それはプラスチックや合成樹脂塗料のような石油二次製品の急速な普及により、量産化時代の中で

置き換えられてきたり、安価なイミテーション漆器製品が大量に出回り始めたことなどによって、本来

の漆器の存在が厳しくなってきたとも考えられる。また輸入漆の増加により、漆液の価格が低下し、漆

掻き作業が大変なことから、産業として厳しくなってきたことも理由のひとつと考えられる。

しかし、漆の良さはイミテーション商品のおかげで、現在特にダイオキシン、環境ホルモンなどの危険

性が叫ばれる中で再び注目され、見直されている。

漆膜の耐久性は4千年とも5千年とも言われるが、それは室内、地中など紫外線に当らない場所に保

存された場合で、太陽光などの紫外線により強靭な漆の塗膜は破壊され、風化してまた自然に還る。

漆の種類

 漆の採れるのはウルシ属植物で、それは8種あり、日本ではヤマウルシ、ツタウルシ、ハゼノキ、ヌル

デが自生しているが、その全てから漆が採れるわけではない。ヤマウルシとウルシノキから採れる。

ヤマウルシは品質も悪く少量のため実用には適さず、そのほとんどがウルシノキから採られている。

ウルシノキは北海道を除く全域に分布しているが、採取されている地域は限られ、その生産量は1.4

トンほどしかなく、それはほとんど栽培木からである。

東南アジア、中国、朝鮮半島、日本などがよく知られた漆器の産地であるが、漆と言っても種類が多く

、性質も成分も異なりその土地に合った植物として存在し、一般に、南に行くにしたがってゴム質が多

く弾力のある皮膜になる。日本のなかでさえも産地で性質が違うと言われる。

2.漆の採取

漆の採取は入梅の直後6月中旬から採り、11月下旬に終わる。幹の掻ける場所を20~30cm間隔

に水平に掻き傷を約10ヶ所に付け、4日に1回5mm間隔で掻き傷を入れて採取する。掻子(傷を付

け樹液を採る人)一人標準400本の木を受け持ち、それを4等分して100本を1日で回り4日で一巡

する。毎日同じ木に傷を入れても漆液は思うように出ないので3日位休ませる。雨の降る日は水が混

じるので作業は出来ないので、1シーズン180日間で25回転位回り、1本の木から約200g漆が採

れる。1シーズン採取し終わると最後には木を切って絞り採る。この日本での採取法は「殺し掻き」と

言われるが、翌年には「ひこばえ」という新芽が出て約10年経つと一人前の漆が採れる木にまで成

長する。しかし、このように10年をかけて一本の木から約200gの漆を採るのであるから高価な訳で

ある。

 ※日本産漆の産地(H17年、単位kg)

1.岩手(800) 2.茨城(298) 3.栃木(104) 4.新潟(90) 5.福島(44)

 漆器

漆器(しっき)は、木や紙などに漆を塗り重ねて作る工芸品である。

現在では、国産の漆の生産量はごく僅かで、大半を中国から輸入している。

※日本の漆輸入量の推移(単位トン)

1991年(250以上) 2001年(約115) 2008年(71) 2009年(41) 2010年(54)

漆器に用いられる技法

蒔絵(まきえ)

漆器の表面に蒔絵筆によって漆で絵や文様、文字などを描き、その漆が乾かないうちに金や銀など

の金属粉を「蒔く」ことで器面に定着させる技法である。研ぎ出しや磨きなどを行うことで模様を作り

上げる。平蒔絵、研ぎ出し蒔絵、高蒔絵などの技法がある。

蒔絵はその初例を正倉院宝物の「金銀鈿荘唐太刀(きんぎんでんかざりのからたち)」、「通称末金鏤

太刀(まっきんるのたち)」とされており、海外に類例を見ない日本独自の漆芸技法とされている。

研出蒔絵(とぎだしまきえ)

金粉や銀粉を蒔いた後に、器面全体に漆を塗りかぶせ、乾燥後に木炭で漆を研磨して下の蒔き絵層

を出す技法。研磨した後には、器の表面は平滑になる。「末金鏤」と言う技法も研ぎ出し蒔絵の一種

である。

平蒔絵(ひらまきえ)

漆で模様を描き金銀粉蒔いた後に、模様の部分だけに摺(す)り漆をして研磨したもの。器面全体を

漆で塗り込めない点が研出蒔絵と異なる。この技法は平安時代後期から現われた。

高蒔絵(たかまきえ)

模様部分の漆を盛り上げて浮き彫り状に表現したもの。

肉合蒔絵(ししあいまきえ)

高蒔絵と研出蒔絵を合わせた技法。研出蒔絵とは異なり、研磨後、器の表面は平滑にはならない。

卵殻蒔絵(らんかくまきえ)

白色の蒔絵の表現に使う。卵の殻を割り、螺鈿(らでん)のように漆面に貼り、金銀粉と共に蒔絵に

使う。卵には、薄く繊細な表現に向いているため、ウズラの卵の殻をよく使用する。

スクリーン蒔絵

大量生産が行われるようになり、従来の手書き蒔絵にかわる近代技法として登場した。シルクスクリ

ーン技法をを用いることにより、同じ柄を短時間で大量に描くことが可能となったが、金属粉を「蒔く」

工程は今でも職人の手作業で行われる。漆の代わりにウレタン塗料などが用いられることも多く、使

用する金属粉も伝統蒔絵で使用されるものとは異なる場合がある。

沈金(ちんきん)

沈金刀で漆の表面を線刻し、その彫り跡に金箔や銀箔をすり込んで模様を作る。かつては中国、タイ

、インドでも行われていたが、現代では日本で最も盛んに行われており、特に輪島塗りによく使われる

技法である。

螺鈿(らでん)

貝殻の内側、虹色の光沢を持った真珠層の部分を切り出した薄く研磨した板状の素材を、漆地や木

地の彫刻された表面にはめ込む手法。貝殻の真珠質が見る角度によって青や白など、様々な輝きを

見せる。螺は貝、鈿は散りばめることを意味する。使用される貝はヤコウガイ(夜光貝)、シロチョウガ

イ(白蝶貝)、クロチョウガイ(黒蝶貝)、カワシンジュガイ(青貝)、アワビ、アコヤガイなどが使われる。

中国起源の技法である。

拭き漆(ふきうるし)

顔料を加えていない漆を木地に塗っては拭き取る作業を何度も繰り返し、木目を鮮やかに見せる手

法。

彫漆(ちょうしつ)

漆を何層も厚く塗り重ね、その漆の層を彫り出して文様を描く技法。

堆朱(ついしゅ)

油を混ぜた朱色の漆を何十回ないし100回以上も塗り重ねてから模様を彫る技法。通常の漆は硬く

て彫刻が困難だが、油を混ぜることで軟らかくなり彫刻が可能になった。中国起源の技法である。

蒟醤(きんま)

沈金と似ているが、金ではなく色漆を充填(じゅうてん)したもの。タイから伝わった。

タイ、ミャンマーの漆器は、多く竹を編んで作った籃胎(らんたい)で、黒漆塗りの表面に文様を毛彫り

し、朱漆などの色漆を充填し、研ぎ出したもの。日本には近世に伝わり、茶道具として珍重された。

象谷塗(ぞうこくぬり)

江戸末期の漆工玉楮象谷(たまかじぞうこく)がタイの蒟醤(きんま)と中国の存星(ぞんせい)などの

漆器を独自に消化して創始した塗り物。中塗りの上に草花などを彫刻し、青・黄・紅などの色漆を詰

めて研ぎ出し、仕上げ塗りをしたもの。高松市の名産

平文(ひょうもん)

金銀の薄い延べ板を模様に切り、これを漆面に貼り、更に漆で塗り埋めたのちに平らに研ぎ出したも

の。奈良時代に唐より伝来、平安時代に盛んに行われた。ひらもん。中国名は平脱(ヘイダツ)。

存星(ぞんせい)

漆地に彩漆(いろうるし)を象嵌(ぞうがん)したもの。存清とも書く。中国では填漆(テンシツ)と呼んだ

。やや肉厚に塗った漆地を彫って各種の彩漆を充填し、平らに研ぎ出して文様をあらわし、輪郭や細

部は鎗金(そうきん)(沈金)の線でくくる。