FRB議長が6月利上げ休止の明確なシグナル-「分析する余裕」
Craig Torres、Steve Matthews
2023年5月20日 0:48 JST 更新日時 2023年5月20日 14:03 JST Bloomberg
銀行ストレスによる信用引き締まりの度合い巡り不透明性に直面
議長発言後、市場が織り込む6月FOMCでの利上げ確率は低下
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は19日、6月の利上げ休止に傾いているとの明確なシグナルを送った。米金融当局者の一部は利上げ継続が望ましいとの考えを示唆しているが、パウエル氏は政策議論を自ら主導する姿勢を示した。
パウエル氏は「政策引き締めを長く続けてきた。いまや政策姿勢は景気抑制的で、これまでの引き締めによる遅延効果や、最近の銀行業界のストレスによる信用引き締まりの度合いを巡る不透明性に直面している」と指摘。「ここまで政策を進めてきたので、データや変わりつつある見通しを注視して慎重に分析する余裕がわれわれにはある」と述べた。
2020年に55歳で死去した元FRBエコノミスト、トーマス・ローバック氏の功績をたたえるためにワシントンのFRB本部で開かれた会議で発言した。
同議長の発言後、金融市場が織り込む6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は13%前後に低下した。発言前は33%だった。
今週はニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やジェファーソンFRB理事も同様の発言をした。ジェファーソン氏は最近、バイデン大統領によってFRB副議長に指名された。上院の承認を経て昇格することになる。
「パウエル氏の発言は、入手データを評価するため6月に利上げを休止するというのが同氏の基本的な見解であることを示唆している」とネーションワイド・ライフ・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボスジャンシク氏は指摘。ただ、次回会合前に消費者物価指数(CPI)などの米経済指標が予想を上回った場合、議長が利上げを主導する可能性もあるとも分析した。
今月のFOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジが0.25ポイント引き上げられて5-5.25%となり、利上げ停止の可能性が示唆された。次回のFOMCは6月13-14日に開かれる。
ボウマン理事やクリーブランド連銀のメスター総裁などは、利上げを継続すべきだとの見解を示している。物価上昇圧力の鈍化が十分なペースで進んでいるとの説得力のある兆しがないことを理由に挙げている。
しかしパウエル議長は、そうした慎重派に自身が属さないことを示唆。最近の米地銀4行の破綻に伴う経済への逆風を挙げた。
パウエル氏は「金融安定の政策ツールは銀行セクターの状況緩和に寄与したが、一方でこの展開は信用状況の引き締まりを促している。経済成長や雇用、インフレを圧迫する公算が大きい」と分析。「結果として、われわれの政策金利はそうでなかった場合ほど大きく引き上げる必要はないかもしれない。当然、その度合いは極めて不確かだ」と語った。
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原題:Powell Steers Policy Debate With Clear Signal on June Rate Pause(抜粋)
(市場の動きやエコノミストの発言を追加して更新します)
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