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配偶者がユダヤ人、両親ともに欧州以外の移民……「もしハリ」で実現するアメリカ史上初 8/2(金) 11:21配信 JBpress

2024-08-02 21:54:51 | 日記
配偶者がユダヤ人、両親ともに欧州以外の移民……「もしハリ」で実現するアメリカ史上初

8/2(金) 11:21配信
JBpress



 (山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)

 「潮目が変わった」と多くの人が感じたに違いない。

【実際の写真】ユダヤ人である夫のエムホフ氏。米国歴史上、大統領の配偶者がユダヤ人であったことはない

 バイデン大統領の大統領選挙撤退と、その後のハリス副大統領への支持の高まりである。正式な民主党大統領候補決定はまだだが、多数の有力政治家や代議員が支持を表明していることから、大統領候補としての決定は確実である。

 民主党関係者以外にも、俳優のジョージ・クルーニーや歌手のジョン・レジェンドなど、著名アーティストが続々と支持を表明している。

 短期間に300億円を超える献金を集めた。そのうち6割余りは初めて政治献金をした人であるという。改めて米国人の政治参画意識の高さを痛感する。

 人口や経済規模に違いがあるとはいえ、日本で自民党の国会議員が総裁選挙に出馬すると表明しても、新たに多額の献金があるとは思われない。これまで献金をしてこなかった一般国民からの新たな献金は、ほぼゼロではないか。

 このように米大統領選挙は「バイデンvsトランプ」という見慣れた高齢男性対決から、「トランプvsハリス」という「高齢男性vs若手女性」対決に変貌した。

 59歳のハリス氏を若手と呼ぶのは戸惑いを感じる人も多いであろう。しかし、これまで約80歳の高齢者対決であっただけに、現在59歳のハリス氏(大統領選挙のある11月には60歳になっているが)の若さは目立つ。

 本コラムでは、大統領候補としてのハリス氏を分析して、米国社会の断面をあぶりだして米国社会のゆくえをみていきたい。

■ インド文化の影響下で育ったプロテスタント

 ハリス氏は、ジャマイカ出身の経済学者である父とインド出身の医学研究者である母との間にカリフォルニア州で生まれた。幼い時に両親は離婚し、母親の元で育てられた。母の影響で、インド文化が比較的色濃い中で育ったことが推測される。

 ハリス氏は自ら踊る姿をTikTokで公開しているが、ヒンドゥー教徒の影響から踊りを尊ぶインド文化に触れて育ったことが大きいと思う。なお、インド出身の母親はヒンドゥー教徒であったが、ハリス氏自身はプロテスタントの一派であるバプティストだ。

 米国では人口の約10人に1人が様々な複数の人種的背景を持つ多人種であると言われ、多人種の人口比重は増加傾向にある。

 黒人の父親と白人の母親の間に生まれたオバマ大統領も多人種の背景があるが、その点が強調されることは少なかった。なぜならオバマ氏が自身を黒人と自認しているために、黒人大統領という点が強調されたからだ。

 また、キリスト教徒の白人の母親に育てられたので、多文化という要素は小さかった。その点、ハリス氏は米国の多文化社会をより象徴する存在と言ってよい。


■ ハリス大統領で実現するいくつもの「史上初」

 ハリス氏の夫、エムホフ氏はユダヤ人である。

 米国歴史上、大統領の配偶者がユダヤ人であったことはない(出所:Vice President-elect Kamala Harris' husband Doug Emhoff set to become 1st second gentleman - ABC News)。ユダヤ系米国人は、人口こそ約750万人と、必ずしも大きくはない。しかし高い社会的地位についている人が多く、資金力などを含めた存在は人口比以上だ。

 ユダヤ人であるエムホフ氏はキリスト教徒ではない。米国はキリスト教のピューリタン(清教徒)が、理想のキリスト教国を作ろうという希望でできた国でもある。ユダヤ人の大統領配偶者が生まれた場合は、米国社会にとって象徴的な出来事になるであろう。

 両親ともに欧州以外からの移民である大統領候補も初めてである。

 両親がジャマイカとインド出身の移民家庭出身といっても、両親ともに研究者である家庭環境の出身である。白人家庭出身でも労働者階級出身である場合は、大学や大学院教育を受けることにハードルがあり、社会的階層としては低いままであることも多い。

 白人労働者階級出身で、家庭が崩壊状態にあったと自著に書いているバンス共和党副大統領候補よりもハリス氏は有利な家庭で育った。

 米国は人種差別が深刻であることは良く言及される。しかし、両親の職業や経済状況、家庭環境によっては白人優位という状況は簡単に逆転するのだ。この点は、単に人種で割り切れない米国社会の重要な一断面である。

■ 「もしハリ」で国内の分断は深刻化する可能性も

 大統領選挙の予測は難しい。神のみぞ知る領域だ。しかし、世論調査によっては、トランプ氏を上回る支持を得ているハリス氏が当選する「もしハリ」を想定することも意味があるであろう。

 ハリス氏が当選した場合の世界と米国社会で起きることを想定したい。

 トランプ氏の主張する極端な米国第一主義がとん挫して、国際協調は維持されるであろう。英国、フランスなどと並んで、自国第一主義的な動きが一旦止まるという影響を世界に与えると思う。

 極端な自国第一主義は、一見有権者の興味関心を掻き立てる政策・スローガンを打ち出すが、あるところで化けの皮がはがれることも多い。特に欧州では、ナチスの記憶もまだまだ生々しい。あるラインを越えた場合、拒絶反応になることが多い。

 脱炭素の政策もとん挫せずに進むであろう。これはビジネスパーソンにとって大きいが、国内の分断解決にはほとんど役に立たない。

 トランプ氏の支持者は、民主党を既得権益の集まりで少数派を過度に擁護しているとみている。社会における被害者意識が強い層からは、ハリス氏が当選しても、思いは不変であろう。新たな暴力事件が起きる可能性もある。

 対中、対露外交は、おおむねバイデン政権の路線が維持されることになるであろう。

 かつてケネディ氏が40代で大統領に就任した際、老練なソ連のフルシチョフ書記長は、若く国際政治での経験の浅いケネディ大統領をなめてかかっていた。そのことが、キューバ危機を引き起こした遠因である。ハリス氏が老練な習近平国家主席やプーチン大統領の手玉に取られないことを祈りたい。

「もしハリ」は、望ましいように感じられる一方で、様々なリスクもはらんでいるのだ。

 山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授

 1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
 2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
 著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。

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