NY株ハイライト 米金利上昇一服に鈍い反発力 9000億ドル超の信用買いが重荷
米国・欧州株概況2021年9月30日 7:03 (2021年9月30日 7:18更新)
【NQNニューヨーク=張間正義】29日は米株式相場の上値の重さが目立った。米長期金利の上昇一服を好感し、急落していた主力ハイテク株を中心に買いが先行した。だが、9000億ドルを超えて買い残高が過去最大に膨らんだ信用取引を手掛ける投資家による「やれやれの売り」が相場の重荷となっているようだ。
29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比90ドル(0.3%)高の3万4390ドルで終えた。上げ幅は一時280ドルに達したが、取引終了にかけて伸び悩んだ。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は4日続落するなどアップルやアマゾン・ドット・コムといった主力ハイテク株の失速が相場の上値を抑えている。
米長期金利は28日に一時1.56%をつけ、8月末から約1カ月で0.25%水準を切り上げていた。今年の最高水準をつけた3月30日(1.77%)までは1カ月間で0.36%急上昇しており、最近の動きは半年前と比べて上昇ペースが鈍く、水準も低い。それでも、ゴールドマン・サックスのライアン・ハモンド氏は「足元の経済状態での長期金利の上昇は半年前と異なり株価にマイナスだ」とみる。
半年前は新型コロナウイルスのワクチン普及や巨額の財政政策に伴い、景気回復ペースが加速するなかで長期金利も上昇していた。そのため、2月後半から3月中旬にかけてリスク資産の価格に影響しやすい10年物の実質金利がマイナス幅を約0.5%縮小するなかでも株式相場の下押し圧力は限られた。
だが、足元では世界景気の回復ペースが鈍化するとの見方が強まっている。ゴールドマンも今週に入り、中国の経済成長率見通しを引き下げた。米景気にも先行き不透明感が強まるなかで長期金利は上昇が続いており、この1カ月で10年の実質金利のマイナス幅は0.25%程度しか縮まっていないが、株価への悪影響は今回の方が大きいとみる。
米金融取引業規制機構(FINRA)によると、マージンデット(証拠金債務)と呼ばれる信用買い残は8月末時点で9115億ドルと過去最高だった。2020年3月以降で初めて減少した7月から信用買いは再び大きく増えており、投資家が上昇相場に乗って借金での買いを膨らませてきた様子がわかる。
米株式相場がコロナ禍での安値をつけた昨年3月からほぼ倍となり、国内総生産(GDP)比でも4.4%と過去最高水準に高まっている。しかし、とりわけ信用買いが多いとされるアルファベットやアップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの「GAFAM」株は足元で株価のトレンドを示す主要な移動平均を下回ってきており「相場全体の下げにつながる」(米国株トレーダー)との声もある。
今年に入り14%上昇してきた主要ハイテク株で構成するナスダック100指数をみても変化の芽が出ている。ビデオ会議システムのズーム・ビデオ・コミュニケーションズやバイオ製薬のバイオジェンなど構成銘柄の約2割は既に過去1年(52週)の高値から20%あまり下落し、弱気相場入りしている。相場が一段と下がれば損失覚悟の売りが出やすく、反発しても戻り待ちの売りが上値を抑える可能性は高い。
9月は多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数が月間で8カ月ぶりに下落する公算が大きく、上昇の勢いは息切れしつつある。そんななかで相場がある水準を下回れば、信用買いを手掛ける投資家が雪崩式に逃げ出す可能性もある。
S&P500種は終値ベースでは過去220営業日以上にわたって直近の高値から5%の下落が発生していない。足元では2日の過去最高値(4536.95)から5%安の水準は4310.10にあたる。この水準を下回れば相場の下げが加速するとみる投資家もおり、米株式市場は正念場を迎えている。