ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

らしく

2021-03-03 15:50:32 | 
男は男らしく強くあれ
女は女らしく可愛らしく
大人は大人らしく冷静に
子供は子供らしく無邪気であれ
年寄りはニコニコ日向ぼっこ
若者は若者らしく元気出せ
らしく らしく らしく

息が詰まるんだよね
らしく、らしく、らしくって

わがままを言わせてもらえるのなら
あなたらしくいてください
そのままでいいから
何も変わる必要なんてないんだ
つまずくことを知らない呑気な空は
白々しいほど青かった
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流行

2021-03-03 13:06:06 | 
立体の雲を浮かべ、空は夏を主張する
それでも夜には秋虫の声
季節は止まらない

時間の流れに乗って
数えきれない言葉が流行り
数えきれないものが廃れ

病気や障害も一つの個性と
弁舌滑らかに話す者すら現れ
自らが当事者になれば5分と持たず
心身の健康を抱きしめる

雲も次第に痩せていき
風を冷たく感じる日も来るのだろう
その頃にも何かが流行り、何かが廃れる
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48のオールドたち

2021-03-03 10:06:51 | 
地球に捨てられた48のオールドたち
他者からの評価はともかく
ここまでよく生きてきたね
何せ地球に捨てられた日から
30ものオールドたちが加わったのだから

キッチンの上に置かれた水差しの薔薇
盛りを過ぎて花びらが下を向き、抜け落ちてゆく
床に落ち、赤を広げる最後の表現
高層ビルから飛び降りる人のように

オールドたちが加わるたびに
大切なものがひらひらと舞って死ぬ
人生への憎しみも抜け落ちて枯れ木になればいい
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勇気たち

2021-03-02 14:50:13 | 
数限りなく振り絞ってきた勇気たち
それらは凶器となって僕に襲い掛かった
怖いものを知るたびに、人は老いてゆく

それらは世界中に散らばっている
狂人の前に立ちふさがる勇気
小さな命を預かる勇気
立ち向かう勇気
受け入れる勇気
自死する勇気
呼吸を続ける勇気

それらは美しく残酷で
必要であり、不必要な厄介なもの
人はそれらを時に抱え、時に捨てた

勇者には明日がある
勇者でなくとも明日は来る
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破れかぶれの雨粒

2021-03-02 12:18:27 | 

天に見放された雨たちが
破れかぶれに地べたに飛び込んでいく
若葉は大きな口をあけて飲み込み、微笑んでいる

人はそこそこの年齢になれば、他人のために生きるようになる
例えば結婚すれば、その人のために生き
例えば子供が出来たら、その子のために生きる
それが幸福のレールではなかろうか?
まっとうな道ではなかろうか?

レールから外れた僕は
未だに自分のために生きようとしている
果実を手に入れようとしている
それが何かも分からずに、しがみつく

僕はとうの昔に天に見放され
破れかぶれの雨粒になったのだ
それなのに未だに自分のために
おそらく死ぬまで自分のために
誰かのためでなく
破れかぶれの雨粒のままで

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優しさの行方

2021-03-02 10:24:40 | 
私の優しさはどこにある?
確か階段を上って、突き当たりの部屋にあるタンスの上の箱の中だ
埃まみれの優しさが、まだ息をしているはず

あなたの優しさはどこにある?
見つからないからって諦めないでほしい
まだ身の回りにあるはずだから
よく探してごらん
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まだ見ぬ日

2021-03-01 18:38:20 | 

それにしても安物の腕時計はすぐに電池が切れる
可愛がったペットは気を使い、今年のうちに死んだ
僕の電池はあとどれぐらいだろう
今日が明ければ、明日が今日になり
今日は去年という枠に収まることになる

時は無表情に正確な歩幅で進み
どんな人や生き物、いや、ありとあらゆる物が
2020の枠組みに組み込まれる
死者だけがこの年に留まることになるのだ
電池が切れた物だけが

人々はまだ見ぬ日の恐怖を消すために
慌ただしい年末を過ごし
年明けのめでたさを無理にでも強調するのだろう

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真っ赤な白

2021-03-01 16:17:57 | 
どうしても割ってはならないものを割ってしまった
「何があってもそれだけは絶対に」というものを
 
鮮血のような赤に染められた真っ白が「私は真っ白です」と声を震わす
永遠の瞬きを終えた人々が怪訝な顔で見つめ、力なく笑って立ち去っていく
せめて過去形にすべきだった
「私はかつて真っ白だった」と
    
屈強を持ち上げ、階段を上る子供たち
たった一人のメガネを除いては  
声を合図に屈強から手を離す
まもなく大地が揺れた
「まだ割れないや」
一人の子がつぶやく
 
子供たちはさらに高いところから屈強を落とす
ついにヒビが入った
誰かが「もう少し、もう少し」と興奮して叫ぶ
そしてさらに高いところに上り、渾身の力を合わせた
ついに屈強は割れた
喜びの瞬間、子供たちは永遠の瞬きに入った
 
真っ赤に埋め尽くされた白はまだ訴えていた
「私は白です。あなた方に変えられたんですよ」と
あざ笑ったり、無視する人々
白は力尽きてうなだれた
 
その落っこちた肩に誰かの手が乗った
振り返ると奇妙なメガネをかけた男
「君は真っ白だね」
そう言いながら男はメガネを外した
「やっぱり真っ白だ」
男は確認するように頷いた 
白は美しい笑顔を男にだけ見せた
 
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モノクロームクリスマス

2021-03-01 14:02:53 | 

 

街はクリスマス一色だというのに
行き遅れた枯葉たちが慌てて風に吹かれている
そんなに急がなくてもいい
ゆっくりしてなよ

その夜がやってきて、街は浮かれている
雪がちらちらと降り出せばなおさらだ
人々の足がせっかちに弾む

色をなくした鮮烈な街
枯葉を巻き込みながら、僕は悲しみをエネルギーにして走り出す
モノクロームクリスマス
ざわめきだけが耳を貫いた
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水際の希望

2021-03-01 11:39:16 | 
水際の平家は死の淵で希望を描いたのだろうか

水際の人々よ、砂の上に希望を描け
たとえ、押し寄せる波にかき消されようとも
明日、水際に来る人々のために灯を残すのだ

描いてはかき消され、描いてはかき消され
何万日先かもしれない
何億日先かもしれない
涙をこぼしながら描いてきた希望の蓄積が
ある日、大波が押し寄せても消えることのない確かなものとなった時
ようやく海底で眠る人々は心から笑うことができる

そのために人は存在するのだ
そのために人は生まれてくるのだ
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