SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その24 コンソレーション編補遺)

2006年12月26日 00時00分01秒 | 器楽・室内楽関連
★浪漫派 ~ロマン派のオルガン曲~
                  (演奏:松居 直美)
1.メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ第4番 変ロ長調 作品65
2.ブラームス:一輪のばらは咲きて (コラール前奏曲 作品122-8)
3.ブラームス:我が心の切なる願い (コラール前奏曲 作品122-10)
4.レーガー:幻想曲とフーガ ニ短調 作品135b
5.リスト:アダージョ 変ニ長調
6.リスト:コラール「アド・ノス、アド サルタレム ウンダム」による幻想曲とフーガ
                  (1990年録音)

コンソレーションの続きとして、このディスクとこれまで紹介が漏れた2枚をご紹介します。

このオルガン作品集の第5曲のアダージョの原曲こそ、“6つのコンソレーション”の第4番にほかなりません。ライナーによれば、この編曲はリスト自身によるものということ。

さすがにこういった曲調のものなら、オルガンにするとまた静謐で敬虔な味わいがしますねぇ。
旅行案内なんかで教会を紹介するならこの曲をBGMにっていう感じがしないでもありませんが・・・。
まぁ楽器にせよ曲にせよなじみのないうちは、とにかく雰囲気に慣れることですよね!

次のコラールによる幻想曲とフーガは30分余の大作で、リストの器楽曲で「ロ短調ソナタ以外にもこんなのがあったんだ」と思わされた曲です。
リストにとって画期的な曲らしいのですが、やはりなじみがないので30分鍵盤を縦横に指が駆け巡って、高音でピロピロしてるところがあるなぁとおもったら重低音が“がー”と鳴ってみたりという事実しか掴めず、そのよさがわかるまでには時間がかかりそうです。
といって、15年以上前に手に入れたディスクなんですが・・・。
今回ホントに久しぶりに聴きました。こんな特集でも組まなきゃ、次いつ聴いたんでしょうねぇ?
ブラームス、レーガーはそれなりに興味深く聴けたので、そういう意味では音楽的感受性というか許容性が大きくなっっているかもしれません。
コレを聴いてそれを確認できたのは、有意義なことでした。
カオを洗って出直します、って感じです。

これはそもそも録音を聴くために買ったもので、ダイナミックレンジの広いオルガンを世界で始めて“20ビット録音”したという触れ込みで発売されたものでした。
今じゃねぇ。。。
フォーマットもそれ以上のものができちゃってるし、これからもっと録音よりも演奏のほうが魅力的に思えるようになっていくんでしょうね。
ちゃんとつきあえばの話ですが・・・。

★孤高のピアニスト アワダジン・プラット デビュー!
                  (演奏:アワダジン・プラット)

1.リスト:葬送曲 (「詩的で宗教的な調べ」より 第7曲)
2.フランク:プレリュード、コラールとフーガ
3.ブラームス:バラード集 作品10
4.J.S.バッハ/ブゾーニ編:シャコンヌ (BMW.1004より)
                  (1993年録音)

CDを初めて聴いたときにどう思ったかは結構はっきり覚えているものでして、この特集を通じて好印象をもったにせよ、いまいちと思ったにせよちゃんと印象が形成されていることに驚いています。
そして、コレを聞いてからもう10年以上経っていることになお驚いています。
時の流れの速さにもですが、最近認知症ではないかと思えるぐらいモノが覚わらなかったり、わすれちゃったりということが続いているのにこの記憶の粘り強さときたら!
“博士の愛した数式”で博士の記憶が80分しかもたないという設定でしたが、今の私ときたら、ついホンの今コレをしようと思ったことをコロッと忘れちゃったりする・・・。
「ボクの記憶は80秒しかもたない!」いや8秒かもしれません。。。

また要らないことを書きました。
「中年さらに老いやすく、学ますます成り難し」と思っただけです。
最近“楽”は鳴ってるのでまぁ良しとしなくては。

このCDは輸入盤の評を見て気にしていたのですが、探す前に国内盤がリリースされたので手に入れたものです。なにしろ当時はインターネットが我が家になかったもので・・・。
この私が、こんなブログに縷々ブラインドタッチの練習をすることになろうとは・・・とまた話がそれました。

肝心の演奏ですが、若々しく思い切った音遣いと、しっとり潤っていながらも清潔な叙情の表現など聴くべきところは多いディスクです。
リストの葬送曲にしても、冒頭の重厚かつ荘重な鐘の音がフラッシュバックのように詰まって収斂していくところなどスリリングにつんのめった感じなのですが、その後のメロディーではひじょうにゆとりのある表現をしていて、その対比がとても自然。大したモンです。

他もロマン派の1軍の実力ある補欠みたいな曲が並んでいて、いかにも「通のかたもどうぞ」というプロモーションかと思いましたが、それはいらぬ詮索。
一聴してピアニストの最も好きな曲たちだろうということは想像つきました。

なんにしろプラットの特徴はメロディーの運びがしなやかで、ばねのように強靭であること。
殊に弱音でレガートに弾くときの音色には他の誰にもない魅力があります。
例えばブラームスの1曲目、2曲目なんて思わず引きずり込まれちゃいそうになりますねぇ。こりゃ他のピアニストが使う“レガートに弾く”というテクニックと少し違うテクニックじゃないかと思えるぐらい・・・。
そして“ばねのように”ですから、粘り強くても音離れはよくべとつかない。この音にはまいりました。したがってディスク全曲を聞き終えた後には、静かで爽やかな充足感に浸ることが出来ます。なかなかの佳演盤でした。

謳い文句に“90年代のグレン・グールド”とありますが、演奏に触れると事実そんな感じがします。
グールドの方が音色が多彩でさっぱりしてますが・・・。
もちろん、多彩だからいいってモンじゃありません。
実際にはプラットがグールドと同じようにイスを極端に低くして弾くことと、容姿がジャケット写真のように一般のクラシック音楽家とは一線を画していることによるものであると思います。もちろん先に書いたフレージングの妙もひとつの要素だと思うのですが。

元のタイトルも“LONG WAY FROM NORMAL”ですから、プロモーションはあくまでも独特な奇異性をウリにしたものだし、演奏家本人もどのような理由があるにせよそれを了解して世に問うたと思うのですが・・・。
はっきり言えば失敗ですね!

この音楽は確かに他にないものということでは独特ですが、その音楽性が健やかで豊かなこと、ましてそれが演奏家のフィーリングとぴったり幸福にマッチしているという点ではきわめて正統的なものであると思います。
容姿はどうであれ、典型的なクラシックの作法に則ってプロモーションした方があとあと変な色物扱いされずにすむからいいんじゃないかと思うのですが。
事実そんなイメージでこのディスクの本質を聞きもらしていたのではないかと思ってる人が、“ここ”にいます。もったいない!

この後、ベートーヴェンの後期のピアノソナタのディスク(未聴)などを出してからどうしておられることやら・・・。
久しぶりに引っ張り出して、虚心坦懐に聴いたうえでの感想でした。
最初から虚心坦懐に聴かせてもらえていたら・・って、そういう風に聴かなかったのは私のせいなんですけどね。
アーティストにとってもプロモーターにとっても、私にとってもこの10年余りは不幸だったかなと。
私にとっては大した話じゃないけれど。
むしろ10年越しに、また一枚のディスクを“お気に入り盤”に追加することが出来てよかったかもしれない。

こういう記憶にかぎって8秒以上もつのはなぜだろう?

★リスト:超絶技巧練習曲 S.139
                  (演奏:ホルヘ・ボレット)

1.超絶技巧練習曲 (全曲)
                  (1985年録音)

この特集の最初のころ、「横山幸雄さんの超絶技巧練習曲集以外は、全曲通して楽しく聴けない」的な発言をしましたが、撤回します。(^^)/

演奏は音色もマナーもまさにボレット、いつもどおり、期待通りなので説明を割愛します。

このほか、クラウディオ・アラウによる全曲もあります。
ボレットと比較すると使用しているピアノの性格のせいもありはるかに濃厚・重厚ですが、これにも有無を言わせぬ魅力があることを発見しました。

曲個々にはやはり練習曲という以上の価値を見出しにくいものもあるので、説明を省略します。
ただ、夕べの調べ(第11曲)はやはり名曲です。

こうやってまとめて聴くことでいろんなことを気づくことができたことは、非常に有意義であったと個人的には思っています。
が、みなさんとって何かのお役立ちにはなりましたでしょうか? 
なってなくても許してネ。 (^^)v

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2 コメント

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凄いテクニック (eyes_1975)
2006-12-26 21:11:29
超絶技巧練習曲(全曲)はボレットの演奏版を持っています。12曲とも聴き応えがあります。その中の第4曲「マゼッパ」についてまとめたトラックバックを送ります。オーケストラ版もあり、迫力あります。リストはピアノだけでなく、オーケストラの魔術師でもありますね。今、「ハンガリー狂詩曲」を残りの3曲をまとめ、「第2番」をボスコフスキーのミューラー=ベルクハウス編曲とカラヤンのドップラー編曲をじっくり聴いています。年が明けたら、私が感じたことを記事にできると思いますので、そちらの方も楽しみにして下さい。
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楽しみにしています★ (クラウディオ アラウ)
2006-12-26 21:52:21
トラバありがとうございました。
拝見させていただき、コメントも残させていただきましたです。

“マゼッパ”のオケ版はインマゼール盤を持っています。時代楽器です。
以前ご紹介したマズア盤ハンガリー狂詩曲のように手堅く美しく纏めたという感じでなく、時として素っ頓狂な音響も混じってきて現代の大オーケストラとは違った意味で迫力があります。

実は今まで、インマゼール/アニマ・エテルナのリストのディスクを持っていることをコロッと忘れていました。
しかるに120週年内にご紹介することはほぼ不可能な状況になっています・・・。
どう誤魔化そうか思案中です、と内情をバラして公然とお断りしておきましょう。(^^)v

ハンガリー狂詩曲の聴き比べ、楽しみにしていますね。
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