SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その23 コンソレーション編)

2006年12月25日 00時56分22秒 | ピアノ関連
★ため息 ボレット/リスト名曲集
                  (演奏:ホルヘ・ボレット)
1.二つの演奏会用練習曲 S.145
2.三つの演奏会用練習曲 S.144
3.コンソレーション(全曲) S.172
4.「ドン・ジョバンニ」の回想 S.418
                  (1985年録音)

“コンソレーション”はクリスマスにピッタリの曲ではないかと思います。
実は、クリスマスにアップするべくとっておいたのです!!

が、諸般の事情で「聖夜」に(ほとんど)間に合いませんでした。予定通り25日にアップしたのに!
今日の夜がクリスマスじゃないのね(泣)。。。
今、まだ寝ないで読んでくださってる人にだけは間に合った・・・かな?

さて、リストは後半生下級聖職者の地位を得ていますが、この曲などを聴くと「なるほどね」と思えなくもありません。
リストが聖職者って言うのも、素行からするとあまりピンと来ませんけどねぇ。
漢字の「聖」の字はりっしんべんのアレじゃないかと!
オヤジさんが女グセを心配しながら亡くなったとか聞くし、また主なお相手はダグー伯爵夫人とかヴィトゲンシュタイン公爵夫人とか誰かのかーちゃんばっかりだったりするもんだから。。。
ピアノが上手いのが理由でモテたのかなぁ?

それでも音楽を聴いちゃうとねぇ・・・。
こういった敬虔な側面もあったように信じられちゃうから不思議といえば不思議。
なるほどなるほど・・・。
だから、口説けちゃうのかもしれませんが。

本当に聴けば聴くほど、音楽的な幅は途方もなく広いかたでいらっしゃる。
深いかどうかはいささか疑問の残るところですが。。。
私見では「深い曲は深いけれど、浅い曲は深くない」という見解ですが、みなさんはどう思われるでしょうか?

さて、またもやボレットですが“コンソレーション”全曲を遺してくれているのは本当にありがたい。。。

以前ジルベルシュテインの静謐で途方もない集中力に覆われた演奏をこの特集の“白眉”とご紹介しましたが、それとは対極にある演奏です。

すべてがロマンティックなメルヘンの世界の中でのことのよう。ボレットの人柄そのもののようなぬくもりをベースに、ベヒシュタインのほどよい湿度の光沢のある音色が織りなす綾は、あたたかな部屋の暖炉の前でサンタクロースの物語に耳を傾けているようなイメージを想い浮かべさせてくれます。

この曲集は第3番のみが突出して有名ですが、こうして全曲聴くとシューベルトの“楽興の時”にも引けを取らない曲集だと思うんですけどねぇ。
ぜひ一度聞いてみてください。
ボレット、ジルベルシュテインのほかにチッコリーニを持っていますが、これも心温まるいい演奏です。全種類聞いても損はありません。
ミョーなクリスマスアルバムよりは絶対に役に立ちますよ!
今年は特にクラシックブームらしいし!
私はいつもクラシックブームですけど。。。

この盤には、“森のささやき”“こびとの踊り”“ため息”といった人気曲も、その本来の曲集の姿で収められています。
いうまでもなく外面的な印象は抑えられつつも極めて鮮やかなテクニックで、いつものように親しげに奏でられている佳演であります。

★オマージュ & エクスタシー
                  (演奏:ヴァレリー・アファナシエフ)

1.フローベルガー:トンボー
2.ワーグナー/リスト:エルザの夢(ローエングリンより)
3.ラフマニノフ:前奏曲 ト長調 作品32-5
4.ラフマニノフ:前奏曲 嬰ト短調 作品32-12
5.スクリャービン:前奏曲 イ短調 作品11-2
6.スクリャービン:前奏曲 ホ短調 作品11-4
7.スクリャービン:前奏曲 嬰ハ短調 作品11-10
8.シューマン:クララ・ヴィークの主題による変奏曲
9.グリーグ:ちょうちょう
10.グリーグ:孤独なさすらい人
11.ショパン:マズルカ ヘ短調 (ヤン・エキエル版)
12.ドビュッシー:雪の上の足跡
13.リスト:コンソレーション第3番
14.リスト:コンソレーション第5番
15.チャイコフスキー:舟歌
16.ワーグナー:(主題)変イ長調 WWV93
                  (1996年録音)

アファナシエフが過去の名ピアニストに対して、それぞれ短いオマージュを捧げています。
グールド・ラフマニノフ・ソフロニツキー・ホロヴィッツ・ギレリス・ミケランジェリが献呈先ですが、選曲が非常に凝っていて興味深いですねぇ。
ギレリスにグリーグって、確かにグラモフォンに名盤があって私も感銘を受けましたけれど・・・。
普通なら違うでしょう。。。ベートーヴェンとかじゃないかなぁ?
といいつつも、ともあれ好企画盤だと思います。

私にとって最も素晴らしい奏楽は、フローベルガーです。
グールドのディスク“エリザベス朝のヴァージナル音楽選”の演奏を想起しての選曲だと思いますが、グールドに勝るとも劣らない内容で格好のオマージュになっています。
ちなみにグールドは最も好きな作曲家としてギボンズを挙げていたり、先の盤を自身の最も気に入ったディスコグラフィーであるような発言をしていますので、アファナシエフの選曲は当を得たものだと思います。

因みにバッハコンクールに優勝したころのアファナシエフの演奏は、極めて生気に富んだ「正当派を音で表したらこうなる」といわんばかりのものでした。
昨今は時として“けったいな”演奏解釈なきにしもあらずのアファナシエフとしては、この盤全体にわたって過去を懐かしんでいる(オマージュを捧げてるわけですから)ために正統派にもどったのかもしれません。

コンソレーションからは2曲が抜粋されていますが、いつもはテンポが極端に遅い彼にしては意外なほどスムーズな進行です。
でもいつもながらの美しいタッチで、曲の旋律構造をくまなく明らかにしていきます。
極めて健康で人間的な営みがなされた奏楽で、“ジ・アファナシエフ”を期待した人にとっては、ひょっとしたら“はずれ”かもしれません。
逆に「良質なピアノ演奏を!」と言われたら、むしろいつものアファナシエフよりずっと「推せる!」とも思いました。

ところで、このコンソレーションで描かれている心情は、いささか心中穏やかならぬ様子であり“慰め”というより“慰めて!”といった訴えに聴こえます。
まぁ、それはそれでいいんですけどね。。。

★オールドバラ・リサイタル
                  (演奏:マレイ・ペライア)

1.ベートーヴェン:自作の主題による32の変奏曲ハ短調 WoO.80
2.シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化芝居 作品26
3.リスト:ハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調
4.リスト:コンソレーション 第3番 変ニ長調
5.ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」より4曲
                  (1989年録音)

ペライアの演奏のうちでも、私の最も好きな時代のもののひとつです。
ホロヴィッツとの親交の中で何かをつかんで、繊細な技巧はそのままに“骨太”というか、一種の“凄み”を身に付けた瞬間の記録。

一聴して直ちにペライアの音だと判る音色。リストは2曲ですが、ハンガリー狂詩曲の技巧と音色の素晴らしさ! フリスカでも決して音が荒くならない。
それどころか右手の単音で高速に駆け回る音色などは、これこそがシンギング・トーンなんだと思わされるゼツミョーな指さばきで、恐れ入ったと聞き惚れるしかないです。

コンソレーションが素晴らしいのは言うに及びません。
旋律線を辿る右手、伴奏のアルペジオを奏でる左手ともに絶美の音色で、温かみにあふれどこまでも透明感を失わない・・・。
そして終始穏やかなうちに心地よい充足感をもたらしてくれる、これぞ“慰め”!!
看板に偽りなし!

他の曲も、彼の音を使って極めて雄弁に聴かせてくれます。
本当にパテント付の音色を持っているピアニストは強いですね。硬軟とりまぜた魅力的なプログラムで、聞いた後とても満足できるディスクです。


そういえばコンソレーション第3番には、以前ご紹介したティモン・バルトにも名演がありましたね!

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