SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

フーガの技法3種

2008年04月26日 13時19分31秒 | ピアノ関連
★J.S.バッハ:フーガの技法
                  (演奏:ピエール=ロラン・エマール)
1.フーガの技法 BMW.1080
                  (2007年録音)

いわずと知れたJ.S.バッハの絶筆となった名曲であるこの曲集。
これをピアノで演奏したディスクは、かねてよりソコロフ盤、ニコラーエワ盤を持っていたのだが、先般発売されたエマール盤を加えて3種になった。

いずれも名演奏だと思う。ホントにそれぞれに凄い・・・。
いつもながらピアニストの研鑽、信念に基づいた仕事ぶりは尊崇に値すると感じないわけにはいかない。
そして興味深いことに、同じ曲であるにもかかわらず受ける印象がことごとく相違する・・・これもいつもながらおもしろいところである。

詳細に言い出したらきりがないので、どのように楽しんだかだけ簡単に記しておきたい。

まずは、ピエール=ロラン・エマール。
私は最初はリゲティの練習曲集でこのピアニストを聴き、聞きしに勝る演奏振りに舌を巻いた覚えがある。
ブーレース主催のアンサンブル・アンテルコンタンポランのピアニストに登用され、現代音楽のスペシャリストと目されていた人であると記憶する。

とはいえその後、ベートーヴェンやシューマンなんかも録音している(未聴)ので、決して現代音楽ばかりじゃないのだろうけど・・・ただ、彼のラヴェル“夜のガスパール”などでは、音響のみを恃んだ音作りに聴こえてしまい、少なからぬ違和感を覚えたことはある。
良くも悪くも現代音楽のピアニストだと・・・。

まぁこれも日をおいて聴いたなら、こっちのコンディションも違うからまた受ける印象もかわるんだろうけれど・・・。(^^;)

さて、肝心のバッハなのだがやっぱり強靭な音響だと思った。
いいかたはヘンだが、ばねのあるしなやかさ・粘り強さを持つ響きをウルトラマンのスペシウム光線のように放射してもらったら、周りにいる人の肩こりが治るんじゃないかと思えるような・・・。
響きには艶も潤いも充分・・・そして、曲も演奏も構成が堅固であるからこりゃ効くよぉ~って感じ。

ただしこちらに立ち向かうとまではいかなくても、その音響を浴びに行こうとする気力があるときに聴かないと、ちとツライかもしれない・・・そんな気もする。

もちろん音楽的には文句のつけようはないし、解釈の是非を云々する力量も私にはないから鮮やかで素晴らしい演奏である・・・というほかない。(^^;)


★J.S.バッハ:フーガの技法・パルティータ第2番
                  (演奏:グリゴリー・ソコロフ)

1.フーガの技法 BMW.1080
2.パルティータ第2番 BMW.826
                  (1982年録音)

長崎にいるときにその一連のディスクに邂逅し、近所のピアノの先生に紹介して盛り上がっていたのでソコロフとの付き合いも長くなったものだ。
Opus111レーベル・・・ルートで知ったのだが、その後日本でも直輸入盤が日本語装丁のうえ発売されて広く知られることとなり、宝物のありかをばらされたような気がしていた。

とはいえチャイコン優勝者だから、知る人ぞ知る・・・という存在ではありえないんだろうけれど。。。
フェルツマンといい、こういう人材って案外いるんだなぁ~と妙に感慨深くなってしまう。
「でも、見てる人はちゃぁ~んと見てるからね・・・」と、唯我独尊の道を精進することの重要性を再認識するおじさんの私がいる。(^^;)

そんなソコロフをこのバックステージで紹介するのってもしかして初めて(!?)と思うと、これも不思議。
記事にしようと準備したことは何度もあったんだけれど・・・採り上げていなかったような気がするな。。。

このソコロフ、高橋多佳子さんのフェイバリット・ピアニストの一人でもある。

そしてこのバッハだが、とにかく哲人か音楽の権化か・・・というべき存在の何かが、そこでバッハと同化してややロマンティックに(平均律のリヒテルほどではないけど)とにかく美しい音でひとつになっているのを聴く思いがする。

いずれにせよ、エマールもソコロフも素晴らしい音楽を聴かせてくれる。
とりわけソコロフはそこに精神性というものも色濃く伴っているのである。


★J.S.バッハ:フーガの技法
                  (演奏:タチアナ・ニコラーエワ)

1.3声のリチェルカーレ 音楽の捧げ物 BMW.1079より
2.6声のリチェルカーレ 音楽の捧げ物 BMW.1079より
3.4つのデュエット BMW.802~805
4.フーガの技法 BMW.1080
                  (1992年録音)

ニコラーエワ女史もバッハの一大権威であった。
彼女が演奏旅行途上、サンフランシスコで客死した報を聞いたときには本当に残念に思っていた。
私がCDを聴き始めたころ、女史がビクターに残していたバッハの小品集、そして平均律の演奏などいずれもとても素晴らしいものであったから。

でも近年になってハイペリオンにこれとゴルドベルク変奏曲の録音が遺されていることを知り、それを耳にして本当によかったと思ったものである。

とにかく女史のバッハは深い敬愛の念にあふれている・・・それよりも、彼女のかもし出す音響は幻術のように私をバッハの世界に連れ去ってくれるのである。

前の2人の演奏のように崇高なあるいは親密なバッハの世界を見せてくれるのではなく、いざなってくれる・・・その意味で唯一無二の演奏といえる。
だから、これを聴き終えた後は癒された気がするし、疲れていてもスッと心の隙間に入り込んで心の中いっぱいに広がってくれる。。。

演奏技術とか言い出せば、前の2人の方ガ客観的に見て高いといえるのかもしれない。
でも、普段の私はきっと女史の演奏に心を委ねるだろう。

音楽の捧げ物の2曲も本当に静謐な美しさをたたえており、バッハの音楽の楽しみの極みを聞かせてくれる。
文字通り「遺産」といえる録音だが、人類にとって、音楽文化にとっての「至宝」であると信じられる。

彼女のベートーヴェンには当りハズレがあるけれど・・・・バッハ・ショスタコーヴィチは掛け値なしに凄い。(^^;)

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