SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

ホロヴィッツの音?

2007年09月18日 07時57分51秒 | ピアノ関連
★巨匠たちの伝説 ~江口 玲 plays at Carnegie hall
                  (演奏:江口 玲(あきら))
1.愛の喜び (クライスラー/ラフマニノフ編曲)
2.愛の悲しみ (クライスラー/ラフマニノフ編曲)
3.メロディ (パデレフスキー)
4.悲愴前奏曲 (チェルカスキー)
5.J.シュトラウスの「こうもり」による演奏会用パラフレーズ (ゴドフスキー)
6.ロマンス~ピアノ協奏曲第1番より (ショパン/バックハウス編曲)
7.夜想曲~“モクセイソウ”より (ホフマン)
8.ハンガリアン・ラプソディ第2番 (リスト/ホロヴィッツ編曲)
9.白鳥 (サン=サーンス/ゴドフスキー編曲)
                  (2002年録音)

ずっと気になっていたディスクなんですが、ライヴ録音だと勘違いして手を出さずにいたのを、チョッと前そうでないと判ったとたんに欲しくなって買ってしまいました。(^^;)

欲しかった理由は概ね3つ・・・。

まず、作曲もモノするらしい江口玲というピアニストについてですが、高橋多佳子さんが先般リサイタルで弾いた「ラプソディー・イン・ブルー”のピアノ編曲版を出版している人物であります。
もとより、多佳子さんはその譜面に自身で手を入れていて、更に難しくして弾いているところもあるようですし(書込みのある譜面を見せてもらっちゃったもんね・・・だからどうなってるのかは判りませんでしたが)、そのとおりすべてを忠実に弾いてるわけじゃないようですが・・・。

でも、何種類もの譜面を見比べて「これだ!」と選んだのが江口版ということは、私にとっては凄いことであります。(^^;)

もとより江口玲というピアニストは、レコ芸でも独奏者、伴奏者として度々登場し好評価を受けていることは承知していましたし・・・。


第2の理由は、やはりここで使用されている楽器がホロヴィッツが大絶賛したというピアノである・・・ということ。

タカギクラヴィアという会社が所有する“スタインウェイ・ニューヨーク・モデル-D”、その社長によるプロダクションによりこのディスクは生み出されているのですが、コンセプトを知ったときに素晴らしい仕事だと思いました。
もちろん、音を聴いた後もその感想は変わることはありませんでした。(^^;)

プロデューサー、演奏者ともにこのディスクへの思いの丈をライナーにしたためていてそれはそれで感動的でありましたが、私にとっては、やはり音楽を聴いたときの気づきのほうが大きかったですね。(^^)/
それは、このお2人にとっても望ましいリアクションであると思ってよいでしょう。

そして、タイトルの「ホロヴィッツの音?」ですが、このディスクって曲ごとにマイク・セッティングをいじってないかなぁ~。
少なくとも、“愛の喜び”だけが艶消しのような気がして、ちょっと感じが違うんだよねぇ~・・・と気にしだすと、全部違うような気もしてきてしまいました。

とにかく、やはり現代のピアノと音がちがうんです。
現代のピアノのほうがスコーンと抜ける音がする・・・スタインウェイですから金属的な芯をきちんと捉えた野球に喩えれば「いい当たり」の音がするんです。そして、ペダルを踏むとどうしようもなく音が豊かに共鳴する・・・そんな感じがします。

対してここでのスタインウェイは、脱力して弾くとスコーンと抜けるけど現代ピアノのそれほどじゃない。
また、音色そのものに不純物がいっぱいまじっているけど、それが2級酒独特の旨味みたいななんともいえない味わいになっています。

そして、“ハンガリアン・ラプソディ”でのバスの音、ラッサン、フリスカいずれもで「ホロヴィッツの音」が聴かれました・・・と私は思います。
と思ったら、ホロヴィッツ編曲のヴァージョンだったのね。(^^;)

とはいえ、この音は私がホロヴィッツの演奏で音色的に最も印象に残っているフレーズ・・・ショパンの変ロ短調ソナタ・第1楽章のイントロが終わって第1主題が入る前の左手バスが“グヮァ~~ン”と梵鐘を共鳴する以上の力でひっぱたいた時に歪んだような音色・・・に酷似しています。

センテンス長いけど、わかりました?(^^;)

というわけで、ホロヴィッツのセンスは真似できないだろうけど、音だけならピアノの要素も結構あったのね・・・ということが判りました。


第3にして最後の要因は、この魅力的なプログラムです。
“クライスラー/ラフマニノフ”の2曲、冒頭からかの時代を髣髴させてくれる素晴らしい演奏。
“ロマンス”というショパンの第1番のコンチェルトのバックハウスによる編曲なんて、タメイキものでした。バックハウスのイメージが変わりましたね。
独墺系音楽系のいかついオジサン・ピアニストというだけではなかったようで・・・。(^^;)

そして“白鳥”・・・。
サン=サーンスの白鳥をゴドフスキが半音階を多用して多声部編曲をしたかのような、妙味ある音遣いがたまらない楽曲です。
江口さんはやや生真面目に弾かれていますが、だからこそ醸し出される美しさはたしかにある・・・。
このディスクにもその作品がある・・・ということはピアニストの巨匠のひとりと認識されている・・・チェルカスキーが最後の来日時にアンコールで弾いた曲目。。。
テレビでそれを見て、それからずっとディスクを探し続けた曲であります。
こうしていつでもディスクで聴けると思うと嬉しいですね。


ただ、江口さんの演奏はこの白鳥のみならず、全ての楽曲がピアノの持っている雰囲気をスポイルすることなく表現しえています。
この点からも、原題「LEGENDS OF THE MAESTROS ~ Piano Music from the Carnegie Hall's Golden Years」に恥ずるところのない素晴らしいディスクだということができると思います。

この世には、既にホロヴィッツその人はいないかもしれませんが、ホロヴィッツのように楽しませてくれるアーティスト(&プロダクション)はちゃんと存在している、そんなことを感じさせてくれたディスクでありました。(^^)v

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
オッパピー。。。。。 (Unknown)
2007-09-18 22:07:28
nn--- ガーシュインのも一応あるのよー
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2通りの (クラウディオ アラウ)
2007-09-19 19:25:51
解釈ができちゃうので、双方お答えします。
それでも外してたらごめんなさい。(^^;)

1.江口版だけでなくてガーシュインの元の版があるという意味だとすると・・・。
  
  作曲者の版は当然に聴きたいと思います。
  たしかにオーケストレーションは他人に委ねたけどピアノのところは自身の作だと聞いてますから。

2.江口玲さんにガーシュインを演奏したディスクがあるという意味だとすると・・・。

  あることは知っていますが、未聴です。
  時間的な問題等あって、聴くことができるかは不明です。(^^;)

  江口さんには他にも秀逸な伴奏のCDがありますよね。若干もっています。
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外すわけないじゃん、クラウディオ アラウだもん (Unknown)
2007-09-19 21:31:31
1.                      中古でget、自演ロール 
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なるほどぉ~。 (クラウディオ アラウ)
2007-09-19 22:27:46
いろいろあるんですね。
いつか聴いてみたいなぁ~。。。
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将来の卵 (eyes_1975)
2007-09-21 22:02:41
記事が関連していたので、トラックバックを2つ送りました。
クラウディオ アラウさんは必要ないかと思いますが、チェルカスキーは同時期のホロヴィッツに比べるとなじみの薄いピアニストなので、SJesuterのバックステージの常連さんに知っていただきたいです。ゴドフスキーは魅せてくれますね。
勿論、私が持っているチェルカスキーのアルバムに「白鳥」が収録されていて、逸品です。
江口さんは日本人で編曲版をこなすピアニストであること間違いありませんね。
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チェルカスキーは (クラウディオ アラウ)
2007-09-22 09:42:21
最晩年に老齢であるのに超達者なピアニストとして一瞬珍重され、ほどなく亡くなったというイメージがあります。

本来はもっと重要視されるべきピアニストでありましょうが、アラウとはあまり芸術面では折り合ってなかったようですね。

バッハとかの旋律線ではなく内声を浮き立たせるのを、チェルカスキー一派が発見したように言われている・・・アラウはそういって否定的な見解を示しています。

ゴドフスキの編曲などを見ていると、アラウには何が気に食わなかったのかが垣間見えてくるような気もします。

これについては、また私も何かの機会に述べたいと思います。(^^;)
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