SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
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神話の世界へ・・・

2008年08月03日 22時50分24秒 | 器楽・室内楽関連
★エトワールの夜~グザヴィエ・ドゥ・メストレ・プレイズ・ドビュッシー
                  (演奏:グザヴィエ・ドゥ・メストレ(hp)、ディアナ・タムラウ(S)、
                         ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団員)
1.ベルガマスク組曲
2.夢
3.ロマンティックなワルツ
4.エトワールの夜(星の輝く夜)
5.リラ
6.麦の花
7.月の光
8.マンドリン
9.美しき夕べ
10.まぼろし
11.2つのアラベスク
12.『前奏曲集』より ~ デルフォイの舞姫、帆、亜麻色の髪の乙女
13.『ハープと弦楽のための舞曲』 ~ 神聖な踊り、世俗の踊り
                  (2008年録音)

今、ユング(について)の本を読んでいる。
そんなときにこのディスクに出会ったのも、考えてみれば不思議な巡り会わせと言えるかもしれない。

彼の夢解釈にはフロイトと異なり「予知夢」的な側面が感じられるし、彼の考えによれば無意識の中には神話や昔話に象徴されるような、集合的無意識の元型があるとのことだから・・・そんな感覚がドンズバではまりそうな、こんな演奏が現われたので面食らってしまった。

逆に言えば、そんな本を読んでいたから、この演奏の感想がそっちに引っぱられただけなのかもしれないけどね。。。


実は、このディスクに食指が動いたのはレコ芸の特選盤になっていたから・・・。
私はハープのソロのディスクは、それこそ後段に紹介するマリア・グラーフの一枚を所有しているだけである。

もちろんモーツァルトのフルートとハープのためのコンチェルトなどは、数種のディスクを持っているが、ソロといえばグラーフのディスクのほかに入手することになるとはあまり思っていなかった。

今月のレコ芸はなんと・・・ピアノ独奏のディスクが一枚も特選になっていない。
別に特選盤を狙って入手しているわけではないが、御二人の月評子には(以前ほどではないにせよ)全幅の信頼をおいているので、いきおい特選盤に目が行ってしまうことは白状しておかねばなるまい。
でも、最近買うのはほとんど輸入盤なので・・・。

要するに、外盤も含めてピアノにこれはというものがなかったので、思わず血迷ってしまった・・・というわけ。
でも、これがまた大当たりだった。
ピアノと違って、アタックがきつくないからかけ流しておくのも含めれば、もう何度聴いたかわからないほどヘヴィーにかかっているのに飽くことがない。


とにかくドビュッシーの作品に、古代・神話を連想されるものが多くあることは知っていたが、こんなにもハープとの相性がいいとは思わなかった。
そしてハープで爪弾かれることが、また清廉なソプラノの背景に回ることが、幻想的な弦楽伴奏にのって神聖な舞曲のソロをとることが、東洋の島国の私の原初的な無意識にもはっきりとその本質を感じさせられるような効果を担保しているとは思いもよらなかった。

もちろんフリーメイスンとのかかわりなど作曲者ドビュッシーの、何かと取りざたされる機会が少なくない、どことなく神秘的な心の内奥の響を模していることもあろうが、演奏者の作曲者の心の内奥にある古代・神話的世界への共感に注目せずにはおれない。
また、それをこれほどまでに鮮やかに現実のハープの音に代えることができるテクニックについても称賛されよう。

まぁ、ウィーンフィルのハーピストなんだそうだから、それぐらいできる人であって当たり前だろうが、それぐらいできることはちゃんと評価してあげないとね。。。

オルフェウスって、きっとメストレのような人(神様?)だったのだろう。
ジャケット写真を見たときに、人間とは思えないほど指が長いように思われることも含めて・・・。


★マリア・グラーフ・リサイタル
                  (演奏:マリア・グラーフ)

1.キャプレ:2つのディヴェルティスマン
2.フォーレ:塔の中の王妃
3.フォーレ:即興曲 作品86
4.ルーセル:即興曲 作品21
5.タイユフェール:ハープのためのソナタ
6.ドビュッシー:2つのアラベスク
7.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
8.トゥルニエ:演奏会用練習曲「朝に」
                  (1990年録音)

メストレが如何にイケメンっぽいといえども、グラーフの目もとに如何にわずかにシワがよっていようとも、ジャケットの好感度はだんぜんグラーフの勝ちである・・・。

しかし、被っている2つのアラベスクの演奏はハープの音の余韻の捉え方なども総合して、メストレのほうが私の好みにあっているかもしれない。

このグラーフのディスクは永く私の手許にあり、かつては本当によく聴いた。
ハープのディスクはこれさえあれば・・・とも思っていた。

フォーレの塔の中の王妃などは、始めから私の心を捉えるだけの力を持った楽曲だったし、同じくフォーレの即興曲はさすがハープのためにかかれた曲だけあって、華やかにして慎ましさも感じさせる出来映えとなっている。

これにはキャサリン・ストットが作曲者がピアノ用に編曲した楽譜で演奏している名演奏もあるが、これを聴くといささか華やかに過ぎるのかもしれないと思ってしまう。

やっぱりハープには、それ独特の味わいがあるのだ・・・と強く感じた。

演奏に関して言えば、フォーレやタイユフェールの演奏の感動は、メストレのそれに決して遜色あるものではない。
この記事を書くに当たって聞きなおし、何年ぶりかで楽しませてもらった。

このディスクは発表当初は演奏内容もさることながら、むしろ好録音盤として好楽家の間に広まったようにも思える。
しかし、今の耳で聞くとやはり時代は流れているようだ。。。

音の表情、立体感、そこにある空気の気配といったものに差を感じる。
単に好みの問題ともいえようが、メストレのそれのほうがまろやかなのだ・・・。
そう考えると、実は演奏自体にはそれほどの差はないのかもしれない。

逆に・・・メストレのフォーレのハープ曲が聴ける日が楽しみ・・・である。

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