8月の第1土曜日は、熊本市水前寺公園にある出水神社の薪能が催される日である。
今年はたまたま火の国祭りが一緒になって祭りに花を添えることになった。
台風の影響で夕方近くまで降っていた雨も「仕舞」が始まる頃には止んだ。
(水前寺公園内の古今伝授の間)
雨は上がったものの蒸し暑く、阿蘇の伏流水が湧きでる冷たい池の水との温度差で水面に靄がかかって何とも幻想的な雰囲気が漂っていた。
(仕舞:高砂・東北・鵜ノ段)
(舞囃子:六浦)
(和泉流:狂言「簸屑(ひくず)」
(火入之式)
そしていよいよ火入れの式が行われ、金春流の能「土蜘(つちぐも)」が始まった。
(病の床に伏している源�・光に薬を届ける胡蝶)
(胡蝶が帰った後、夜半に名も知れぬ僧形が現れ、蜘蛛の糸を振りかけるが、枕元にあった名刀(膝丸)で立ち向かう�・光)
血を流しながら逃げる、化生の者を警護の武者達が追いかけるところで中入りとなる。
後段は、葛城山に追い詰めた土蜘蛛の塚の前での武者と土蜘蛛の戦いとなるが、土蜘蛛の衣装の赤と蜘蛛の糸の白さが対照的で目を楽しませる。
舞台からはしがかりまで縦横に使って動作の大きい土蜘蛛は、能の中でも派手な演出で魅せる演目の一つだろう。
謡曲を始めたころに習ったのがこの「土蜘蛛」だったので感慨もひとしおだった。
薪能は古来芝の上で演じられ、そのため芝の湿り具合で実施するかしないかを決定するため、紙を5枚重ねてその上を足で踏み、紙の濡れ具合で湿り具合を確認していたという故事の説明があり、舞台の上で神職による儀式が行われたがなかなか興味が湧く話ではあった。
また出水神社は細川幽斎から14代とガラシャを加えた15柱を祀っているところからこの薪能も年に一度、神様を慰める行事として続けられてきたという。
「能」は、世界文化遺産にも登録されている世界に誇れる日本文化であり、誰もが気軽に触れ合えるものにする努力が続けられていることに敬意を表したい。

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