*諜報活動に関与するドイツの機関
2013年6月、イギリスの新聞「ガーディアン」に掲載された前代未聞のスクープ記事が世界を震撼させた。
アメリカの情報機関である国家安全保障局(NSA)が全世界のインターネットや電話回線を傍受していることが暴露されたのだ。告発したのは、元CIA職員でNSAに勤務していたエドワード・スノーデンだ。...
彼はアメリカ政府の極秘情報収集ツールを公開し、日本を含む38カ国の大使館やEU本部などで盗聴していたことなども暴露した。盗聴の事実を知ったドイツ政府は、「冷戦時代を思い起こさせる」と不快感をあらわにした。だが、そのドイツもNSAの諜報活動に無関係ではなかった。というよりも、そこには大きな接点があった。それをスノーデンは、NSAとBND(ドイツ連邦情報局)は「同じベッドで寝ている」と表現している。
つまり、NSAの盗聴活動に他ならぬBNDがかなり密接に関与しているというのである。
*前進を作ったのは元ナチス党員
現在、ドイツの中央情報機関として国外の情報を集め、組織対策やテロ対策を行っているBNDの前身は「ゲーレン機関」という。このゲーレン機関が設立されたのは、第二次世界大戦が終結した翌年の1946年、そして立ち上げたのはラインハルト・ゲーレンという元ナチスの一員である。
ゲーレンは、世界の軍事史上最高の組織と言われるドイツ参謀本部に所属する「東方外国軍課」という諜報機関の課長を務めた人物だ。だが、ドイツが敗戦するとゲーレンはソ連(現在のロシア)に拘束されることを恐れ、アメリカに亡命することを望んだ。アメリカにとっても、元ナチスの一員とはいえ、優秀でソ連に情報網を持つゲーレンを囲い込むことには大きな旨味があった。そこで、ソ連の情報と引き換えにアメリカはゲーレンを保護し、資金援助をして西ドイツにゲーレン機関を設立させらのだ。ただ、ゲーレンはアメリカに亡命するにあたって、手元にあったソ連の情報をアメリカ側に無条件に引き渡したわけではなかった。実は、東方外国軍課の秘密文書はアルプス山中に埋めて隠されていたのだ。これは、ゲーレン機関を立ち上げる際のアメリカ側との交渉に利用する為で、その思惑どおりゲーレンはアメリカと同等か、それ以上の条件で協定を結ぶことに成功した。
戦争には降伏しても尚、世界に名だたるドイツ参謀本部の強かさは健在だったのである。ゲーレン機関は、その後1955年にBNDと改名し、ソ連情報を中心に収集した。そして、その機密情報はCIAに引き渡されて来たのだ。
*アメリカの諜報機関との深い因縁
世界有数の情報機関であるBNDとCIAの緊密な関係は、戦後から現在に至るまで続いていた。更に、BNDはいつしかアメリカの大統領ですら接触することが出来ないという、アメリカ最高の諜報機関であるNSAとも深い関係を結んでいたということになる。而も、ドイツの「シュピーゲル」誌が報じたところによると、BNDからは2012年12月の1か月だけでNSAに約5憶件のアフガニスタン情報が渡っていたという。
戦後、欧米先進国やソ連は莫大な予算をかけて諜報活動を行って来たが、冷戦が終結すると各国の予算は大幅に縮小されるべきだという議論が出た。だが、実際にはそうはならなかった。而も、何故か各国とも2001年9月11日の前から諜報機関の予算は増え始めたのだ。
西側諸国の情報連携とテロリズムーーー。
そこには機密情報にアクセス出来る者にしか分からない秘密が隠されているのかも知れない。
*画像
ベルリンにあるBNDの建物
ゲーレン
BNDの設立についての交渉を記したCIAの文書
日付は1952年9月12日となっている
本当に恐ろしい地下組織 国が率いる秘密の組織