Mayumiの日々綴る暮らしと歴史の話

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◆突然歩けなくなった時、それは...... 餓鬼が憑く

2024-07-12 12:09:55 | Weblog

写真の説明はありません。
餓鬼は多く腹の膨れた姿で描かれる 『暁斎百図』  国立国会図書館蔵

柳沢淇園(1703~1758)が伊勢から伊賀へ山越えする時、一人の男と出会った。
その者が慌ただしく言うには、「私は大坂の者だが、どうやら道中で餓鬼に憑かれたようです。
飢えて一歩も進めず大変難渋しております。
何でもいい、食べ物をお持ちでしたらお恵み下さい」という。
柳沢は変なことを言うと思ったが、旅の途中で食物の蓄えもないので、
持ち合わせた刻み昆布を、「これで良かったら」と与えると、その男は喜んで直ぐに食べ始めた。

「餓鬼が憑くとは、いったいどういうことじゃ」と問うと、
「眼には見えませんが、この辺りに限らず、あっちこっちで乞食などが餓死した怨念が残っていて、
餓鬼となって通行の人に憑りつくのです。これに憑かれると猛烈な飢餓に襲われて、
体力がなくなり歩くこともできなくなります。私は度々経験しました」
とのこと。聞けばその人は薬売りで諸国を旅行する者であった。

世の中にこういう事象があるようだ。
後に播州国分寺(兵庫県)の僧侶に訊いたところ、
その僧も若い頃、伊予の国(愛媛県)でやはり餓鬼に憑かれたことがあったそうで、
これを防ぐ為、諸国行脚のおりには、食事の時に飯を少しづつ取っておいて、
紙などに包んで袂に入れておき、餓鬼に憑かれた時の用心をするのだ、という。
変なことがあるものである。
          
                      『雲萍雑誌(うんぴょうざっし』 巻三
     

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喜田貞吉(1871~1939)の『憑物』に拠ると、上の山路で飢餓状態になることを「ダリに逢う」といい、
明治二十七、八年頃までは、その為に食物を用意して旅行したという。
     

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                       江戸時代 怪奇事件ファイル

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菜根譚 前集192項

2024-07-12 12:01:29 | Weblog


胡瓜

受人之恩、雖深不報、怨則浅亦報之。
聞人之悪、雖隠不疑、善則顕亦疑之。
此刻之極、薄之尤也。宜切戒之。

人の恩を受けては、深しと雖も報ぜず、怨みは則ち浅きも亦之を報ず。
人の悪を聞きては、隠ると雖も疑わず。善はすなわち顕わるるも亦之を疑う。
此れ、刻の極、薄の尤なり、宜しく切に之を戒むべし。
 

「冷酷で薄情な人」
人から恩恵を受けた時は、どんなに深くても報いようとしないのに、
恨みに対しては、どんなに浅くても必ず仕返しをする。
また、人の悪事を聞いた時は、それがハッキリしたことでなくても疑わないのに、
善い行いは、それがハッキリしているのに疑って信じようとしない。
この様な遣り口は、人の心の冷酷さの極みであり、薄情の甚だしいものである。
だからよくよくそのことを戒めるようにしなさい。

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