南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

香港の日本産たまごとヴェブレン効果

2009-10-26 00:57:32 | HONG KONG
先日、NHKのテレビを見ていたら、『出社が楽しい経済学』という
番組をやっていて、そこで第三回『ヴェブレン効果』というテーマ
を放送していました。この番組、一見お笑い系の番組なんですが、
実に面白い。それに経済の本質が実にわかりやすく解説されている。
ということで最近注目している番組なんですが、この『ヴェブレン
効果』というのは、一言で言えば、値段が高いほどよく売れるとい
う理論なのですね。

今の世の中、苦しい家計を切り詰めるために一円でも安くないと
売れないというのが常識なのですが、実はその逆で、高いほうが
売れるという現象があるのです。それが『ヴェブレン効果』という
やつなんであります。ブランドもののファッションアイテムや、
メルセデスベンツやBMWなどの高級車などは、優越感を満たすため
に、むしろ値段が高いことをよしとするジャンルです。

消費者の見栄という要素を加味した現象なんですが、香港の日本産
たまごの流通を見ていると、これも『ヴェブレン効果』なんでは
ないかと思って、香港のスーパーをチェックしてきました。
いちおうスーパー店内での撮影は一般的に禁止されているので、
皆さん真似をしないようお願いします。

たまごの価格は、日本では非常に安く、激安のたまごがスーパーの
目玉商品になったりするのですが(客寄せように赤字で価格設定を
していることも多いようです)、香港における日本産のたまごは
かなり高価格です。

今年の3月のニュース報道によると、富山にある仁光園という
養鶏所が、今年の初旬から香港への鶏卵の輸出を始めたという
ことです。養鶏場の衛生、産卵の環境管理を徹底し、サルモネラ菌
を除去する技術で昨夏、農場版の危険度分析による衛生管理
(HACCP)の国際認証を日本で初めて取得したんだとか。

「安心・安全な卵」を前面に打ち出し、第1便は187ケース
(約1万3000個)を出荷。まず百貨店に照準を合わせ、炊きたての
ご飯に生卵をかけるなどの食べ方を提案したのだそうです。
上の写真の左に見えているのが仁光園の商品なのですが、価格は
6個で31.8ドル。日本円だと今日のレートで378円くらいです。
6個入りなので、一個あたりの値段は63円になります。日本では
かなり高い値段ですよね。

この仁光園のたまごは、富山から名古屋港に運ばれ、そこから冷蔵
コンテナ船で香港へ運ばれているんだそうです。輸送費がけっこう
かかりますから日本のように安くはできないんですね。自社の農場
(富山県小矢部市)から香港までの所要日数は約10日。たまごって
結構日持ちがするんですね。

この仁光園のたまごは、パッケージに「生食用」と書かれているん
ですが、他の日本産たまごも「生食」をアピールしているものも
あるのですが、そういうふうに書かれると、他の日本産たまごが
生食に向かないように見えてしまいます。これもまたマーケティン
グの差別化戦略です。

この仁光園のたまご、高そうに見えるのですが、茶色い殻の『地養
卵』のほうは6個入りで38ドルの値段でした。日本円で451円くら
いです。他の日本産のたまごはだいたい20ドル台のものが多いです。
博多卵というラベルのものは10数ドルなんですが、これが安いほう
です。

私たちはたまごに関しての情報が不足していますので、どのたまご
がおいしいのか、栄養があるのか、そして安全なのかの判断基準が
ありません。そういうときに浮上してくるのが『ヴェブレン効果』、
たまごで見栄をはることはないのですが、海外でおいしいたまごを
食べたいと思ったときに、なんとなく高いほうがいいのかなという
論理が働いてしまいます。もともとたまごはそんなに高いものでは
ないので、たまごレベルで贅沢気分が味わえるのならば、むしろ
かなり経済的ということができるのだと思います。

香港では、ちょっと前に中国からメラミン入りのたまごが入って
きており、中国のたまごへの不信感は残っています。そうなると
心理的に少しくらい高くても日本の安全なたまごを買いたいという
消費者真理は納得できます。実際、私は香港では日本産のたまご
以外は買おうとは思いませんが。と言って一番高いものを買うとは
限りません。

日本産のたまごは高いと思っていたのですが、今日、別のスーパー
に行ってみたらもっと高いたまごがあってびっくりしました。



この棚の上のほうにに並んでいる中身の見えないパッケージの
たまごなんですが、どこの国から来たものなのかわかりませんが、
オーガニックとかエコパックとか書いてあり、日本のものより
ワンランク高く40ドルから50数ドルします。中のたまごは
見えないのですが、こういうたまごを眺めていると日本のたまご
は全然安く見えてしまうのは不思議です。

しかし、香港は日本に近いために日本産のたまごが豊富です。
シンガポールにいたころは、日本産のたまごはあまり選択肢が
ありませんでした。日本食レストランでは、たまごかけご飯が
食べたくても、危険だからということで出してくれませんでした。
家ではときどき、日本産のたまごで、たまごかけご飯を食べて
いましたが。香港に日本からたまごがどんどん入ってくることは
大歓迎です。

消費者としては、日本のたまごは高くても30ドル台で留まって
くれているのは助かりますが、いずれものすごく高い価格設定の
たまごとか登場してくるのかも。『ヴェブレン効果』とは言っても
たまごの値段がどんどん高くなっていくのは駐在員としてはちょっ
と困りますが。