南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

飛行機の中で見たスラムドッグ・ミリオネア

2009-05-11 00:24:43 | インド
先日、ニューヨークに出張に行った時、飛行機に乗っている時間
が片道でもたっぷりと半日以上あったので、行きも帰りも『スラ
ムドッグ・ミリオネア』を見ました。イギリス人の監督の作品な
のですが、舞台はすべてインド、出演者もほとんんどインド人。
一見インド映画という雰囲気なのですが、実はイギリス映画なの
ですね。昨年から今年にかけてメジャーな映画賞を総なめした
作品だけに、さすがよくできた映画で、機内で二回も見てしまい
ました。

しかしこの映画、細かいところは知らなくても十分楽しめるの
ですが、いろいろ知っているとさらに楽しめるというところが
あります。私はこの監督の作品はデカプリオの『ザ・ビーチ』
しか見たことないのですが、インドのムンバイは何度か行った
ことがあるので、偶然知っていることがいろいろ出てきて非常
に面白かったです。

10年くらい前に『恋に落ちたシェイクスピア』がアカデミー賞
を受賞しましたが、この映画も、シェイクスピアの『ロミオと
ジュリエット』や『十二夜』などを知っているとさらに面白い
のですが、私は英文学をやっていたし、偶然にこの映画に出て
くるお芝居を大学時代に実際に上演し、役者として演じたこと
があったので、とても楽しめたということがありました。

この『スラムドッグ・ミリオネア』もそうです。(以下ネタバ
レ注意)何か解説したいことがいっぱいです。

まず、クイズ・ミリオネア。日本ではみのもんたさんが司会を
している番組が同じみなので、日本の番組かと思ってしまいが
ちなのですが、もともとはイギリスのクイズ番組。この番組の
フォーマットが日本を含めて世界各国にフランチャイズされて
いて、世界100カ国以上で放映されているというスーパー・ク
イズ番組です。世界各国で「ファイナルアンサー」とかやって
いるわけなのです。ですのでこの映画が上映される国のほとん
どでこのクイズ番組が放映されているので、世界中の観客がこ
のクイズ番組の設定を無理なく受け入れられることは、この
映画の大きなメリットです。

この映画のテーマが、このクイズの四択の形式を借りて、
「Destiniy」として提示されるのは見事ですね。

インドでこの「クイズ・ミリオネア」(Who wants to be a
millionaire?)がスタートしたのは2000年。初代の司会者は
インドのトップスターのアミタブ・バチャンでした。この
番組はスターPlusというケーブルチャンネルで放映されてい
て、この番組がきっかけでインドのケーブルチャンネル契約
世帯数が一気に伸びたと言われています。インドでは国民的
な番組となっていました。

アミタブ・バチャンは最初のエピソードにも登場してくる
俳優です。「ザンジール」という映画で主役を演じたのは誰
という質問ですが、これはインド人だったら誰でも知ってい
る簡単な問題じゃないかとも思いました。「ザンジール」は
見たことはないですが、アミタブ・バチャンが主演というの
は私でも知っていました。インドでアミタブ・バチャンの生
の講演も聞いたことがあります。

しかしジャマール少年が苦労して手にいれたアミタブ・バチ
ャンのサインを兄のサリームが誰かに売ってしまいますが、
この時に渡されるのがコインというのがあまりにも悲しい。
あれが5ルピーだったにしても日本円に換算すると10円くら
いなので、ジャマール君の苦労も報われないですよね。まあ
それがスラムの現実なのかもしれませんが。

あと、インドはクリケットが国民的スポーツで、クリケット
選手のサチン・ティンドルカルは国民的な英雄なんですね。

そして、タジマハール。数年前に一度行ったことがあります
が、付近にジャマールのような少年の物売りがいっぱいいま
した。私がクジャクの羽根でできた扇子にちょっとだけ興味
を示したら、その子は死に物狂いでつきまとってきたので
追い払って逃げたのですが、何か可愛そうなことをしてしま
いました。

ムンバイのビクトリア・ターミナルの鉄道駅、パニプリ、
スラム、コールセンター、チャイ、三銃士、コルト・リボル
バーなどそれぞれに濃厚なアイテムがちりばめられていて
目眩がするほど魅力的です。

あと、一つ、個人的に着目しているのは、この映画の中に
シェイクスピアの要素があるということです。勝手な思い
込みかもしれないのですが、別れ別れになっていたジャマー
ルとラティカが奇跡的に再会するところは、シェイクスピア
のいくつかの喜劇で奇跡的な再会がテーマになっているのと
何か関係がありそうな気がしてなりません。最後の鉄道駅で
の再会、そして踊りは、まるでシェイクスピア喜劇のエンデ
ィングを見ているような気がしました。

このイギリス人の監督、ロイヤルシェイクスピア劇場で何本
か演出をしたこともあるようだし、ジャマール役のデヴ・
パテルもロンドンで学生時代にでシェイクスピアの『十二夜』
でアンドリュー役をやったようなのです。何か考えすぎかも
しれませんが。