南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

木下藤吉郎のプレゼンテーション

2006-02-05 18:45:50 | 戦国時代
この前、織田信長へのプレゼンテーションについて考える途中だったのですが、
ちょっと先行きが不安になってしまったので、その部下の木下藤吉郎氏のほう
に鞍替えしました。以下、インタビュー形式でお届けします。
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聞き手「本日は、木下藤吉郎さまをお招きし、プレゼンテーションに関しての
お話を伺いたいと思います。木下さんは、どうしてそんなにプレゼンテーション
が御上手なんでござりますか?」

木下「よくぞ聞いてくれた。実はそのことに関しては常々説明したいと思うとっ
たのじゃが、忙しくてなかなかその時間が取れんかった。聞き手としたら、あん
たのその最初の質問はいきなり直球なので、普通の人間だったら答えに窮する
ところじゃが、わしは違うから大丈夫じゃ」

そこに、下町娘がお茶を持って入ってくる。

木下「ありがとさん。わしは茶がすきじゃ。(下町娘に)後で電話番号教えてな」

聞き手「(咳払いをして)ところで、木下さん、清洲城の三日普請や、墨俣の一夜
城の時もそうでしたが、この間の稲葉山城攻略のときにも三日で城を落としてみせ
ると宣言なさいましたよね。あれは見事なプレゼンテーションだと思うのですが」

木下「よう覚えておいてくれましたな。あの稲葉山城のときは、三日と言ったのに
三日たっても城が落ちなんだでのう、あん時は立つ瀬がなかったぞ。竹中半兵衛殿
がもっと早うあの抜け道のことを言ってくれておったらと悔やまれる」

聞き手「あの時、御屋形様の前で、三本の指を示し、ちょっと遅らせて[三日で]
とおっしゃいましたよね。あの技はプレゼンテーションの時のボディランゲージ
におけるポイントなのですが、それを見事に使われておりました」

木下「ボデーなんたらかどうか知らんが、わしゃーとくに理論的にやっとるわけ
じゃなく、本能的にやっとるだけだよ。御屋形様がああいうお人じゃからのう、
もたもたしておってはだめなのじゃ。まず何でもいいから、一瞬でメッセージを
伝えなければいかん」

聞き手「なるほど。だから、三日でとか、一夜にして、というインパクトの
ある言葉を使われるのですね。木下さんは、三とか一とか少ない数を効果的に
使われますが」

木下「猿は3より上の数は数えられん(笑い)というのは冗談じゃが、数は
一日とか三日と言い切ってしまったほうが、印象が強い。二日とか、四日とい
うのはなんだか弱い」

聞き手「なるほど、プレゼンテーションの世界でも、3というのは重要な数で
すね。一枚のスライドで表現するのは3つくらいのポイントに絞れとよく言わ
れます。また最終的には言いたいことは一言で言えないといけないとか」

木下「そうそう、言いたいことは一言でまとめられないといけない。三日で
稲葉山城を落とすと宣言したときも、本当は、細かいところまで算段ができて
おったわけじゃなかったんだが、あの時は弾みで三日でと言ってしまったわけ
じゃな」

聞き手「仕事の世界で、とにかくがんばります、とか言ったりするんですが、
また政治家なども、善処しますとか言ったりするんですが、いつまでにそれを
達成するのかということを明言しないので、本当にやる気があるのかどうかは
わからないし、結局なかなか進展しない。スケジュールを最初に宣言してしまう
というのは、現代の日本のビジネスマンにはなかなかできないことですよね」

木下「わたしががんばってやります、というだけでは、何の具体性もない。
三日でというふうにスケジュールを提示することによって、プロジェクトが
具体性を持つ。具体性がないと、物事は進みゃーせんぞなもし」

聞き手「プレゼンテーションでは、結論を先に言うべきか、最後に結論を持って
くるべきかという議論がありますが、木下さんは前者のほうですよね」

木下「そうそう、わしゃあんまり理屈をこねくりまわして最後に結論に持って
くるという悠長なのは嫌いじゃ。御屋形様もそれは嫌いじゃ」

聞き手「御屋形様は、木下さんのそういうところも気にいられていらっしゃる」

木下「うん、ここだけの話だけど、御屋形様は、気が短くて、結論もはっきりと
おっしゃらない。かかれー、とか励めとかはよく言われるが、ちょっと言葉足ら
ずなところがある。しかし拙者の場合は、きちんと理由を言い添える。
だから御屋形様は拙者のそういう部分を高く買っておられる」

聞き手「そうだったんですか。また、木下さんは、名字を羽柴に、お城の今浜
を長浜にCI変更されることになるんですよね?」

木下「あんた何でそんなことまで知っとるの?まあええけど、丹羽長秀さんと、
柴田勝家さんのお二人のお名前を一字づつちょうだいしようと思っとる。名前
自体がすごいプレゼンテーションになるんじゃ。また長浜の地名は、御屋形様
のお名前から一字ちょうだいしようと思っている」

聞き手「すばらしいプレゼンテーションですね。それを見ただけで、織田家へ
の忠誠心が強烈にアピールできている。くどくどと説明するより、メッセージ
が強烈に伝わってきます」

木下「プレゼンテーションとは、まあそういうもんじゃ」

聞き手「プレゼンテーションというのは、パワーポイントの技術論や話術とか
が重要だと思われがちなのですが、本日は木下さんにもっと重要なものがある
と教わったような気がします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうござ
いました」

木下「これからNHKの大河にのう、出んといかんので、このへんで失礼する。
えーと、さっきのあのお茶をもってきたおなごは?」

聞き手「木下さん、早くしないと遅れてしまいます」

木下藤吉郎氏はあわてて去っていくのでありました。

2 コメント

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信長に限らず、老人は・・・。 (へいたらう)
2006-02-06 16:09:23
話を全部聞きません(笑)。

うちの親父もそうでした。

最初から、順を追って話をしていたら、3割くらい聞いところで、後は勝手に推測して、ギャーギャー怒鳴り出してました・・・。
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みんな結構せっかちですね (南の国の会社社長)
2006-02-07 01:28:15
うちの会社の先輩にも、ちょっとだけしか話していないのに、「わかる、わかる、そうなんだよね」とすぐ言ってくる人がいました。そして彼がわかっている事は、いつも私が言おうとしていることとはかなりずれているのでした。こういう人には最初にポイントを示すに限りますね。
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