シンガポールにいたときにはエスカレーターに乗る時は、左側に立ち
急ぐ人が右側を追い越していたんですが、これは東京と同じなので、
これが世界標準かと思っていたのですが、香港に来たらこれが逆。
右側に立ち、左側を急ぐ人が歩いて行きます。香港やシンガポールは
エスカレーターの速度が日本よりもかなり速いのですが、それでも
せっかちな人々は、立ち止まることをよしとしません。
シンガポールのエスカレーターです。これはオーチャードのIONです。
あまり人がいませんが、左手で左側のベルトにつかまっている人が
見えます。
そして、こちらは香港の地下鉄のエスカレーター。
ワンチャイ駅のエスカレーターですが、右端に立って、右手で
ベルトをつかんでいる人が多く見えます。
こちらも香港。コーズウェイベイのタイムズ・スクエアのエスカ
レーターです。
ここでも右側に立っている人が多いです。
こちらは香港のセントラルからミッドレベルに通じるヒルサイド
エスカレーター。エスカレーターというよりも動く歩道に近いです。
この写真ではよく見えませんが、ここでも基本は右側に立ちます。
大阪は香港と同じで、右側に立ちます。大阪人も相当せっかちですが、
香港と大阪からの類推から、せっかちなエリアは右に立つという法則
があるのかと勝手に思っていました。しかし、いろいろ調べていくと
エスカレーターに立つのが右か左かは、せっかち度とは関係がないと
いうことがわかってきました。
片側空けの現象は、交通量の多い都会で顕著に見られる傾向です。
それほど混み合わない所とか、それほど急ぐ必要のない場所では、
片側空けはあまり必要性がありません。日本国内は、左に立つのは、
北海道、関東、長野、岡山、香川、福岡など、右に立つのは、関西
と仙台ということのようです。(出典:ウィキペディア)
新大阪から東京まで新幹線の駅で、エスカレーターの右左を調べた
レポートはこちらに出ています。
デイリーポータルZ:エスカレーター右側に立つのか左側に立つのか
こちらのサイトにも日本各地の動向が出ていて面白いです。
ウィふり調査団:エスカレーターどっちをあける?
このように日本国内に右派と左派の地域が混在している状況は
まるでその昔、各藩が西軍か東軍かどちらかについて戦ったあの
関ヶ原の合戦の状況を彷彿とさせます。東京は日本の首都でもあり
人口も多いので、左立ち派が正統であると主張するのでしょう。
しかし、世界の趨勢を見ると、東京の立場は絶対優位とも言えなく
なります。シンガポールは東京と同じ方式であると書きましたが、
他にこの方式の国は、オーストラリアとニュージーランド。一方、
ロンドン、ニューヨーク、ワシントンDC、パリ、ソウル、モスクワ
などのメジャーな都市はみな右立ち派なのです。世界的な視点で
みるとどうやら右立ち派がグローバルスタンダードのよう。東京や
シンガポールは少数派のローカルな方式ということになりそうです。
どちらが正しいとか、合理的というのはないのでしょうが、日本の
ように同じ国内に右と左が混ざっていると、出張や旅行に行ったとき
とか混乱してしまいます。東京から大阪に行った人が、無意識に左側
に立っていたりすると顰蹙を買ってしまいます。悪気はないのですが、
余計な諍いが生じてしまいます。
香港のエスカレータでも、ラッシュ時に左側に立っている人がいます。
歩いて登ろうとしている人たちが動けなくなるので、大顰蹙です。
でも、当の本人はまったく気付いていない様子。こういうルールが
存在するということすら知らない大陸の人とか、外国人とかいろいろ
いるのでこれは仕方のないことなのかもしれません。これは法律で
決まっているわけではなく、マナーの範疇のことなのでなかなか全員
に徹底させることはできません。絶対に従わない鈍感力の優れた人も
かなりいるのだと思います。
国際的に右か左か統一して周知徹底させればよいじゃないかと思って
いたら、最近、エスカレーターは歩いて登ってはいけないということ
をマナーとして普及させようとしている動きもあるのを知りました。
日本エレベーター協会では、安全の面からいっても、エスカレーター
のハードウェアの荷重が片側だけにかかるという問題からいっても、
歩行禁止をマナーとして定着しようとしているらしいのです。しかし
こういうのが出てくるとこれまたさらに混乱してしまいますね。
名古屋の地下鉄では、この歩行禁止のマナーが定着しつつあるとの
噂もききました。そうなると、右空け、左空けの議論そのものが
ふっとんでしまうという事態になってしまいます。このマナー、
世界的に理解を得られればよいのですが、事情を知らない外国人
が名古屋の地下鉄のエスカレーターに乗ったら、「コイツラハ
人ガ急イデデルノニ道ヲアケテクレズ、マナー知ラズデス!」と
怒り出してしまうかもしれません。こういう細かい部分で文化の
摩擦は生じるものです。
ところで「エスカレーター」という言葉(正しくは日本のJIS規格では
「エスカレータ」と表記するようなのですが)、これはアメリカの
オーチス社(OTIS)の登録商標であり、商品名だったというのを
ご存知でしたか?私もさっき知りましたが、今はこの会社も商標権を
放棄しており、エスカレーターという言葉は一般名称として使われて
います。このオーチス社という会社は、世界最大のエレベーター
メーカー。今開催されている上海エキスポにも169のエスカレーター
を納入し、上海エキスポのエスカレーターの最大の納入業者となった
とアメリカ本社の記事に出ていました。
世界最初のエスカレーターは、1900年のパリ万博の時のもの。
これは相当話題になったようです。こちらの下の画像がそれです。
日本は明治33年のことでございました。オーチス社がエスカレーター
を商標登録するのもこの年の5月29日のことでございます。
ところでこのオーチス社のホームページを見ていたら、
エスカレーターの利用に関する注意のページがありました。
こちらです。英語ですが。ここに
"On moving walkways, stationary passengers should stay
to the right and let those walking pass on the left."
(停まっている歩行者は、右側に寄って立ち、歩いて来る人には
その左側を追い越させるべし)と書いてあるではありませんか!
これはアメリカのローカル・ルールということなのか、それとも
メーカーが世界に推奨しているルールということなのか不明ですが、
この文章は、右側立ちが世界のグローバルスタンダードであると
いうことを示す有力な証拠になりますね。
このメーカーに右側立ちの根拠を聞いてみたい気がします。
何か深い理由がありそうな...
よろしければ、こちらもついでによろしくお願いします。
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