南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

アバターは中国で孔子とも戦っていた

2010-03-28 00:01:40 | Weblog

米ネット検索最大手グーグル(Google)は3月22日、中国本土
でのネット検索サービスを停止を発表。インターネットのドメイン登録
を扱う米ゴーダディー・ドットコム(GoDaddy.com)も3月24日、
中国のドメイン「.cn」の登録を停止すると発表しました。ますます
厳しくなる中国の検閲に対する抗議のためだと言われています。

今回の中国の毒餃子犯人逮捕の事件も、中国ではマスコミでは政府
公認の情報しか報道されないことになっていますので、中国国民には
この真相があまり知られないままになるのでしょう。日本の冷凍餃子
被害者の皆さんには、何とも歯がゆい事態だと思います。

朝日新聞の3月25日の記事に、中国、18分野の報道禁止という
のがありました。食品安全問題・事件、新疆ウイグル騒乱、
チベット騒乱、貧富の格差、官僚の腐敗、大学生の就職難などを含む
18の項目に関して、マスコミ各社に対して、報道や独自取材を禁じる
通達を出していたのだそうです。とんでもない国です。

こんなことをブログで書いたりすると、中国からアクセス禁止になる
危険もあるのですが、ちょっと何か嫌ですね。香港は、中国の一部に
なっていますが、マスコミはまだ報道の自由を保っていて、Google
も活動を継続しています。

今月、香港で、映画『孔子』のDVDが発売されたので、早速購入して
見ようとしたのですが、何度見ようとしても、途中で眠ってしまい、
全然見れなかったのですが、やっと今日、何とか見終えることができ
ました。批判を覚悟で言えば、『アバター』と比較するのも恥ずかしい
レベルの作品です。

孔子を香港のトップ俳優のチョウ・ユンファが演じ、テーマ曲を
フェイ・ウォンが歌っているのですが、映画としての展開が退屈
だし、へりくだって、お辞儀ばかりしている爺さんの話は
ちょっとうんざりします。孔子自体の人生がもともと挫折ばかり
でぱっとしないのですが、もうちょっとうまい映画作りはできな
かったのかなと、残念でなりません。

孔子は、江戸時代とかに人気がありましたが、幕藩体制への恭順を
徹底するために都合のよい思想でした。今、いろんな問題を抱える
中国も、国民に余計な文句を言わせずに、大人しく従わせないと
いけないので、孔子を国策的に持ってこようとしたのでしょう。

また、中国共産党は、かつての文化大革命で、過去の歴史的遺産を
すべて消去してしまったので、歴史の厚みがないというハンディが
あります。日本人のほうがよほど中国の古代の歴史のことに詳しい
のですが、本家の中国のほうは、あわててそれを修復しようと焦っ
ているという感じもします。

中国共産党の意図としては、中国が世界に誇る孔子を担ぎだして、
中国国民全員に政府への恭順を徹底させ、中国の歴史文化への
興味を促進させるということだったのだと思うのですが、残念なが
らこの野望はもろくも崩れ去ったという感じです。

この映画に課せられたもう一つのミッションは、すでに中国でも
話題になっていた『アバター』の人気を食い止めることでした。
結果を先に言えば、こちらの計画も失敗に終わりました。
『アバター』の上映を縮小して、『孔子』を大々的に宣伝して、
なかば強制的に見させようとしたのですが、惨敗でした。

中国のマスコミは、『孔子』の映画が大ヒットと騒ぎ立てました
が、これは日本が太平洋戦争末期の時に、大本営発表で日本軍が
華々しい戦果を上げていると報道を続けたのと同じことです。
実際は、閑散とした映画館、無理矢理連れてこられて映画の途中
で眠ってしまった子供達などの現実があったのだと推測されます。

先日、日本に帰った時に、『アバター』を見ました。ストーリー
はシンプルでしたが、3Dということもあって、映画としての
インパクトはすごいし、見せ方が実に面白い。またテーマも結構
奥が深い。単純な私は、この映画で感動してしまいました。

それにひきかえ、『孔子』は、いい点を探すほうが難しい作品です。
あら探しは無尽蔵にできるのですが、それをするのも大人げないか
なと思って遠慮したくなってしまいます。孔子の人生は、あても
ない放浪の連続で、正直面白みがないです。こういうのを無理矢理
見せられる子供たちは、おそらく歴史嫌いになること請け合いです。

私は古代中国の春秋戦国時代の歴史は、宮城谷昌光さんの小説
などが好きだったこともあって、とても興味を持っていたのですが、
この映画を見た後は興味がちょっと薄れてしまった感があります。

『アバター』を中国国民は大歓迎をしたようですが、中国政府は、
この映画が人気が出るのを嫌がっていました。それは内容が政府に
とって都合が悪い事がいっぱいあるからです。本当はこの映画自体
も報道規制したいところだと思います。

アメリカ軍が「パンドラ」を侵略しようとして、侵攻してくるのは、
近くはベトナム戦争とか、イラク侵攻を連想させますが、アメリカ
インディアンを駆逐していった西部開拓時代の歴史を想像させます。
自然破壊をする人間の傲慢さへの警鐘といったテーマも感じられます。
『もののけ姫』や『エヴァンゲリオン』などの雰囲気も感じられま
すし、『地獄の黙示録』などの戦争の狂気も感じられます。

しかしこれを中国政府の視点で見ると、じつにやばい。パンドラへ
の侵攻などは、新疆ウイグル騒乱、チベット問題を連想させます。
ナヴィたちの主張を容認することは、中国が抱える少数民族問題や
チベット問題の火に油を注ぐことになってしまいます。この映画の
原住民ナヴィたちのように、中国の少数民族や、学生や、農民や、
政府に不満を持っている人々が、政府に対して行動を起してきたら
大変な事態になります。天安門事件の再来です。というか、中国の
数千年の歴史の中で繰り返されてきた革命の再来です。

こういう事態を未然に防ぐためには、『アバター』のような有害な
映画は、あまり中国国民に見てもらっては困ります。見るんだった
ら無難な『孔子』です。でもこういう思想統制というか、意識
コントロールはなかなかうまくいかないんですよね。

Googleやマスコミへの検閲や報道統制は、ある意味で、『アバター』
の中で、ナヴィの森に侵攻してくる軍隊を連想させます。Googleは
勇気をもって撤退をしたのですが、ちょっと中国の今後が心配では
あります。中国側は、Googleのほうが侵略者だと主張するのだと
思いますが。

『アバター』がアカデミー賞で『ハート・ロッカー』に負けたことで、
中国国民は残念がっていますが、政府関係者は、それみたことか、
やっぱりあの映画は見るに値しないうすっぺらい映画なんだぞーと
言いながら、胸をなでおろしていることでありましょう。

こんなこと書いて大丈夫かなあ?

よろしければ、こちらもついでによろしくお願いします。

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